2007年10月11日 14時50分
佐俣アンリ、文:田中誠
日本の次世代を担うベンチャー企業。中でも、起業精神旺盛な学生を多数輩出することは、日本にとって目下、重要な課題の1つであると言える。
「ネットバブル崩壊」「ライブドアショック」を経て、学生の起業意識は薄まってきているようにも映る。新卒採用は売り手市場となり、学生の根強い大企業志向もこれに拍車をかける。
こうした中、今現在の学生起業家たちは何を思い、何を目標として起業に臨んでいるのか――。IT業界を軸に日本のベンチャー業界を研究する佐俣アンリ氏(慶應義塾大学5年生)が、同じ学生の立場から学生起業家たちの本音に迫る。
佐俣氏:佐俣アンリと申します。僕は頑張っている人が好きで、今はその応援がメインになってます。とくに学生起業家が好きで、そういう人たちを繋げたりすることをしています。
慶應義塾大学5年生の佐俣アンリ氏
ではまず、自己紹介を兼ねてみんながどんな会社をやっているのか、というあたりから聞きたいと思います。
伊藤氏:BeGood Japanの伊藤です。ウチは東京都主催のビジネスコンテストで優勝させて頂いて、そこから東京都の支援を受けてできた会社です。事業内容は簡単に言えば不動産です。ただ、普通の一般賃貸ではなく、ルームシェア、ハウスシェアに特化した住み方を提案させて頂いてます。
BeGood Japan代表取締役CEOの伊藤吾多氏
日本では一般に「ジェイリート」と呼ばれているような投資用物件が増えていると思いますが、それはほとんど投資効率がいいワンルームなんですね。逆にファミリー向け物件は投資効率が良くないので、困っているオーナーさんが多いんです。そこでオーナーさん側にはその物件をルームシェアという形で貸していきましょうという提案をしています。
一方、学生さん側はルームシェアをしたいと思っても直接交渉ではなかなかオーナーさんがOKをしてくれないものなので、そこを当社が管理代行、契約代行をしていこうというわけです。それによってオーナーさん、管理会社さんにもメリットを与えていき、ルームシェアを普及させていこうという会社です。
他にも家具のリースやルームメイトのマッチングサービスなどもやっていきたいとは思っています。
今現在、提携している会社としては、住友林業さん、大和ハウスさん、それから、スカイコートさんというワンルームに強い会社があるんですが、そことも提携しています。今は首都圏で3000件くらいの物件は紹介できますね。
西嶋氏:モバキッズの西嶋です。モバイルのシステム開発やサイト制作などをやっています。会社は2007年の4月に私と取締役で立ち上げて、私がマネージメントや営業、取締役が技術統括をやっています。取締役の下に学生のエンジニアやデザイナーが7〜8人いる状態ですね。
モバキッズ代表取締役の西嶋悠加乃氏
私はもともと何で起業するかというより、起業したいという想いが先にあったんです。
私の地元は千葉県の木更津市なのですが、1999年から2003年の間、地価の下落率が関東圏で一番でした。バブルの頃にアクアラインが開通して地価が跳ね上がったものの、バブルが崩壊して駅前のショッピングセンターなどが全部つぶれてしまって、テレビなどでも“死んだ町”と紹介されたくらいの町なんです。
そんな状態を子供ながらに見ていて、寂しいと思いながらも自分が将来、何かの形で日本を元気にしたいと感じていました。その手段として起業というものがあったんです。会社自体が世の中に価値を創造していく、社会貢献の一番大きな形のような気がしていました。
オーシャナイズ取締役の太田英基氏
太田氏:オーシャナイズの太田です。「タダコピ」というサービスを運営していて、大学の中にコピー機を設置し、コピー用紙の裏面に企業さまの広告を掲載するというものです。最初は2人で始めて、起業した時は5人、現在は15名くらいの会社になっています。
喜洋洋氏:ランゲートの喜洋洋です。僕たちの会社は「IT×国際」がテーマで、積極的に世界に出ていこうということを目標にしています。
ランゲート代表取締役の喜洋洋氏
僕は中国人で4歳の時から日本に住んでいるんですが、あまり中国語がしゃべれなかったので、大学の時に1年間休学して上海に留学したんです。上海はすごく活気があって、その時に新しい世界へ出ていく面白さを感じました。
帰国すると日本でも学生のベンチャーなどが活発になっていて、いろいろな集まりに参加していくうちに起業したいと思うようになり、2007年の6月に会社を設立しました。一緒にやっている取締役は大学を3カ月で辞めてカナダを自転車で横断するなどして世界一周をしてきた男で、僕も彼も海外志向なのでこれからどんどん世界へ出ていこうと思ってます。
具体的なサービスは相互添削型のSNSというもので、たとえば英語を勉強中の日本人が英語で日記を書き、日本語を勉強中のアメリカ人が日本語で日記を書き、それをお互いがネイティブの感覚で直してあげる、というものですね。日本語、英語だけでなく、いろんな言語でやっているんですが、かなり集客力はあるサービスだと思ってます。
佐俣:今、西嶋さんや洋洋さんからは起業したいと思った経緯などの話が出ましたが、伊藤君の場合はどうですか?
伊藤:僕も大学に入ってから留学したんですが、現地でルームシェアをしていたんです。その時、アメリカ人と自分たちの家族の話などをするうちに、自分は愛情を注がれて恵まれた環境に育ったんだな、ということを改めて感じました。それを感じられたのはルームシェアをしていたからなんですよね。
今、日本ではうわべだけの関係って多いと思うんですが、昔は長屋みたいなところに住んで悩みや夢をもっと話していたと思うんです。単なる友達というより仲間みたいな関係ですよね。
そういう文化を今の日本でも広めたいと思ったんです。でも実際、それを日本でやろうとしたらできないんですよね。契約等の問題もあって不動産屋さんはうるさいし…。じゃあ、自分で始めちゃおうと思いました。
もともと僕は恵まれない子供のための基金を作りたいと思っていたんですが、今は寄付をしてもそれが何に使われたのか分からないことが多いですよね。
でも、その使用明細が送られてきたりしたら、みんな積極的に寄付してくれると思うんです。そういう透明な基金を作るためには10億円くらい欲しいと考えた時、サラリーマンではムリだろう、起業して、しかもIPOするくらいの会社を作らないとムリだろう、と思ったんです。そんなことを掘り下げながら考えていって、今の会社を起業するに至りました。
佐俣:太田君の場合はどうでしたか?
太田:僕は高校3年くらいの時に起業を意識し始めたんですが、大学に入って少し経つと、自分は何をしに東京へ来たんだろうという気持ちになってしまったんです。「東京に行けばさまざまなことが変わる!」と東京の大学生活に過剰な幻想を抱いていたりもしたので…。
でも、こんなことでは親に申し訳ないと思うようになったんですね。それで親に誇れるようなことをしようと思ったのが具体的に動こうと思ったキッカケです。
その後、いろんな活動をして視野を広げたり、経験を積んだりしていたんですが、最初は起業が目的となってしまっていて、そこに理由はなかったんですね。でも、大学2年の夏にある人からなぜ起業なのかを深く突っ込まれた時に、何も考えてないことに気が付いたんです。
それからいろいろ考えるようになって、自分はやりたいことがたくさんあるのでそれを全部成し遂げるためにはやはり自分で組織を持つのが一番だろうと思いました。それが起業に至った理由です。
佐俣:聞いてみると意外と昔から起業する意識があったみたいですが、一般的に若者の起業意識が高まったのはホリエモンが出てきたあたりですよね。あれはみんなにとって影響はないのかな?
太田:僕は一切ないですね。そういう人もいるんだ、というくらいで。たぶん、僕らの世代はあまり関係ないんじゃないですかね。僕らの1つ2つくらい下の世代は影響を受けているかもしれませんけど。
伊藤:僕は高校生くらいの時はまだ起業の意識もなかったなあ。
佐俣:確か洋洋さんは、ドリコムの内藤さんの影響が大きいんですよね。そう考えるとやっぱりライブドアの次の世代ですか。
喜洋洋:そうですね。ドリコムのビジネスコンテストに参加した時に内藤社長が講義をしてくれたんですが、アイディアの出し方、戦略、ファイナンスなど、すべてがスーッと自分の中に入ってきたんです。
ですから今のビジネスもその時の講義のエッセンスをベースに考えてますね。同じ大学(京都大学)ですし、かなり影響を受けたというか、目標になってます。
佐俣:起業しようと思ってから実際に起業するまでの期間ってどれくらいですか?
喜洋洋:1年半くらいですかね。
佐俣:すごく興味があるのは、結果的に起業のキッカケになったものは何なのかということなんです。ビジネスコンテストがひとつのエンジンになるのは間違いないですよね?
太田:たぶん、そこで得られるリソースというのはほとんどなくて、得られるのは自信だと思います。いろんな人に評価されて、認められて、みんながイケるよ、と言ってくれるからそのまま突っ走れるみたいな…。
佐俣:そうそう。勝ってしまった波と、手元に来るある程度のお金…。そういう意味でのビジコン効果というのは確かにあるよね。
西嶋:確かに起業したいという学生は多いわりに、実際に学生のうちから起業する人は少なくて、そこを後押しするのがビジコンという側面はあるでしょうね。
佐俣:そこで聞きたいんですが、起業に対してリスクを感じますか?
太田:我々の場合はリスクはないと思います。もちろん、まったくリスクがないことはないですが、社会人の人が会社を辞めて起業することに比べたら、学生のうちに起業して、もし失敗してもまた新卒で就活できるという状況はリスクが少ないと思います。
佐俣:でも、太田君の会社は新卒を取ってますよね?
太田:ウチの場合はもう、そのフェイズは越えてますね。
佐俣:そこが境目だよね。社員を取るということは、もうリスクというより責任の問題になってくるから。伊藤君はリスクを感じる?
伊藤:一般社員をやったことがないので、そこだけが不安ですね。リスクがどうかはまだ分からないですが、社会経験がない若造であることは間違いないので。
太田:確かに組織を知らないというリスクはあると思うし、実際、それは感じてます。たとえば経理業務などのバックオフィス側の管理業務をどう回していくのかなどが分からなかったりして…。もちろん、自分たちでクリエイティブしていけばいいんですが、やっぱり効率は良くないですしね。
佐俣:洋洋さんはリスクを感じてますか?
喜洋洋:今は感じないですね。社会人になってから起業しても、結局は1からの勉強になると思います。それだったら早めに始めた方がいいですよね。最初はもがくことになると思いますが、3年後に始める人よりは僕たちの方が3年分経験は積めていると思います。
後編につづく
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