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 モバイルコンテンツの企画、制作から運営までを手がけ、2006年6月には携帯電話で撮影した動画を友人と共有できる「Moo」というサービスを開始したK sound design。2004年の創業から急成長をつづけ、2006年には独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がITベンチャーを支援するための制度「中小ITベンチャー支援事業」に採択された。

 代表取締役社長の小泉彌和氏は、大手モバイル会社のサイバードで5年間勤め、創業時から同社を支えてきたひとりである。まだ10人ほどの小さな会社だった頃から株式公開を目指し、いち早くモバイルコミュニティサイトの「@AJA(アット・アジャ)」を立ち上げ、1年間で20万人のユーザーを獲得した実績を持っている。

 さらに小泉氏は、モバイル業界初めてのコールセンターを立ち上げたほか、プロデューサーとして全キャリアに対応したさまざまなサービスの企画や開発、運用を手がけてきた。そして2004年、サイバードを退社する。

 「サイバードが上場し、六本木に本社を移して“ヒルズ族”と呼ばれるようになったとき、自分の役割は終えたと感じました。次に新しく燃えられることは何かを考えていくうち、新しい産業を地元で拡大すること、それが自分の使命だと確信したのです」

 多くのベンチャー企業は、地方で起業し、成長と共に東京に進出する。しかし、K sound designは小泉氏の地元である宮城県仙台市に本社を構え、地域の活性化を目指す。

小泉彌和氏

 「地元に本社を置き、高収益を上げて税金を払うことで地元貢献していきたい。仕事の進みやすさだけで東京に本社を移すというのでは、仙台に戻って起業した意味がないのです。サイバードに勤めていたときに外注先だった弟の会社に合流する形で新しい会社をスタートさせました」

 起業してからは、サイバード時代の元上司から受託したコンサルタント契約が大きな実績になった。さらにソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのモバイルコンテンツ事業である「ソニー・ピクチャーズ モバイル」の立ち上げに参加し、現在も東京のソニー・ピクチャーズ本社オフィスにはK sound designの社員5名が常駐している。

 設立当初は仙台と東京にオフィスを構えていたが、仙台に本社を置くことでデメリットも発生した。東京と仙台との仕事のスピードがあわず、業務に混乱が生じたのだ。仙台はじっくり仕事を進めていくのに対し、東京はビジネススピードが速い。そのギャップを解決すべく、東京オフィスを閉鎖して全社員を仙台に集合させ、気持ちをひとつにしていった。現在は東京六本木にオフィスを構えているが、インターンの大学生が1人住み込みで働いているだけだ。

 「地方に本社を置く以上、こういったコミュニケーションギャップは解決しなければならない問題です。しかし、問題があるから東京に移転するのではない。日々心がけているのは、東京にいるお客様と仙台の拠点の間を行ったりきたりしながら、両者の橋渡しをすることです。技術者のリーダーを東京に出張させて顧客のニーズをつかませたり、東京で仕事をすることはどういうことかを肌で感じてもらったりして意識改革をしています」

 こうしてスタートを切ったK sound designの初年度売上高は3000万円に達し、2年目には年率300%増となった。「2年目の売り上げは9200万円に上り、初の黒字達成となりました。しかし、ここからさらに成長していくには、新たな目標を掲げていく必要があります。これまで受託制作をやってきましたが、それだけでは高収益につながらない。これまでの経験で自社サービスを始めるだけの地力が備わってきました。そこで自社で企画を考え、開始したのがMooでした」

 Mooの企画段階でIPAの中小ITベンチャー支援事業に応募し、採択された。企画内容は、小泉氏が以前から携帯電話の使われ方に疑問を感じ、解決策を考えていく過程で誕生したものだった。

 「これまでモバイル業界に8年間身を置いてきて、携帯電話のネットサービスがPC向けの縮小版のようになっていることを切なく思っていました。携帯電話が持つ独自の良さを生かしたサービスができないか。そこで思いついたのが、携帯電話で撮影した動画を楽しむことでした」

 携帯電話のビデオ機能はまだまだ画質も使い勝手も良いとは言えない。しかし、メリットは場所を選ばず、気軽に使えるところ。そこに着目し、小泉氏は友達同士で気軽に動画を共有できるサービスを発案した。サービススタート時は完全招待制というクローズドの場を提供。会員が動画をアップロードすると、お互いにリンクしている会員にメールで知らせが届き、閲覧できるというシステムだ。動画にコメントを付けられるなど、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の要素を含んでいる。10月には招待制を廃止し、ユーザー数は一気に5倍となったという。

 「コンテンツを核としたコミュニティでは、似た好みを持つ人が集まります。こういったサイトは広告価値が高い。また、物販もしやすい環境です。今後は数十秒くらいで観られる動画の販売を考えています。好みが同じ友人同士で推薦しあったり、簡単に購入できたりするというシステムを構築していく予定です。これを来年、再来年の主幹事業に育てていきたいと考えています」

 宮城県では現在、県内のIT企業を支援する「みやぎe-ブランド確立支援事業」を行っている。K sound designはここでも支援を受け、10月13日には無料のモバイルゲームサイト「ゲームセンター輝」をオープンした。このサイトはK sound designのフラッシュ技術を示すためのショーケースとして位置付けられており、ここで使った技術を外販していく考えだ。

 「これはMooも同じで、モバイルSNSを始めたい会社にシステムをOEM提供していきたいと考えています」

 モバイルはインターネットにつながるためのツールでなく、現実で人とつながるツールだというのが小泉氏の持論。「モバイルがあればいつもとは違う楽しみ方ができる、モバイルが生活を変える--そんなサービスをこれからも提供していきたい」と小泉氏は熱く語る。仙台から全国に向けて、行政と共に「モバイルがあると楽しく歩ける町」を提供していくことが新たな挑戦だ。

K sound design 小泉氏(中央)と取締役の原亮氏(右)は小学校時代の同級生。大学を休学してインターンで参加している鈴木康之氏(左)は、宮城県から上京して1人で六本木オフィスに常駐している