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 ナレッジマネジメントソリューションのリーディングカンパニーとして、9月19日にマザーズ上場を果たしたリアルコム。上場という一つの節目を迎え、代表取締役社長兼CEOの谷本肇氏が、改めてこれまでの同社の歩みと現状、今後の展望について語った。

米国の真似では意味がない

――御社の創立は2000年4月。起業以前はどのような仕事に携わっていたのですか。

谷本氏:起業直前までの6年間はシリコンバレーに住み、アメリカのベンチャー企業と日本の大企業の研究開発提携、販売提携等のコンサルティングを行っていました。要するに、アメリカの有望なベンチャーを発掘し、日本企業に紹介する橋渡し役ですが、成功報酬ベースの仕事なので、いかにベンチャー企業の将来性を見抜くかが勝負の分かれ目でした。

――起業を決意したいきさつは。

谷本氏:ベンチャー企業の有望性を検討するといっても、どの企業も技術やビジネスモデルは常に先端のものなので、当然それだけでは判断できません。やはり最も重要な判断材料となるのは、バックに付いているベンチャーキャピタルの質。さらにいえば、時代を作っている優秀なベンチャーキャピタリストなど、信用できる人から紹介された企業であることです。

 結局、人づてが一番早く、かつ確実なんですね。この「重要なことは人に聞かなければわからない」という実感こそが、起業のモチベーションの一つになりました。

――起業理由はほかにもありますか?

谷本氏:シリコンバレー流のワークスタイルを自らの会社で実現したい、という欲求ですね。よくハリウッド・スタイルとも呼ばれますが、ハリウッドでは、カメラマン・脚本家・プロデューサー・俳優など、普段は別々の組織に属している人たちが、映画というプロジェクトの立ち上がりと同時に有機的に集合し、また解散していきます。同じようなワークスタイルがシリコンバレーでも起きていて、例えば異業種交流会やパーティーで盛り上がり、それが世界を変えるようなビジネスに発展する、というダイナミズムを持っている。

 企業内および企業間、場合によってはコンシューマーも含め、人と人とが組織の壁を越えて有機的につながっていくことこそ、今後の組織のあり方だと痛感し、それをITの世界で実現したいと思ったんです。

――それが、設立と同時に御社の手がけたC2CのQ&Aサイト「Kスクエア」(2004年4月閉鎖)につながるわけですね。

谷本氏:そうです。「Kスクエア」は、イメージとしては有料版の「OKWave」、構造的には「はてな」に近いもので、換金性のあるポイント、いわゆるコミュニティ通貨を導入し、回答者にポイントを支払うシステムでした。

 「Kスクエア」のスタートは、「はてな」が立ち上がる1年以上前、2000年5月でしたが、当時はまだ常時接続の環境が整っておらず、また情報の有料配信に対するユーザーの意識も低く、ビジネスモデルとしては少し早過ぎるものでした。

――日本で起業した理由は。

谷本氏:どこで始めてもいずれグローバライズする、と思っていましたから、日米どちらで創業するかについては、東京か大阪か、ぐらいの違いにしか感じていませんでした。ただ、2000年といえば、ちょうどビットバレーと東証マザーズができた年です。その流れに乗り、かつ自分も何か貢献したい、という思いから日本を選んだんです。

 それに、どこで立ち上げるかは、基本的に事業モデルによって決まってくるもので、むしろ重要なのは、どの市場を対象にするかだと思います。これは自分自身気を付けていることですが、今の一般的な日本のITベンチャーは、アメリカでやっているものをマネする、あるいは改善する、という考え方を持っています。そういう企業がアメリカに行っても意味がないでしょうし、まず日本で成功を収めて、次のステップがアメリカ、という考え方では、うまくいかないと思いますよ。

目指すは一貫して知識の共有

――御社は「Kスクエア」というC2Cサービスに始まり、その4年後には企業向け製品に特化しています。業態が変化したのはなぜですか。

谷本氏:創立当初から、「Kスクエア」立ち上げ後2年を目処に、企業向けにも事業展開していこうと考えていました。「Kスクエア」は結局閉鎖したものの、弊社にとっては非常に大きな成果をもたらしてくれました。

 というのも、立ち上げから1カ月半ほど経ったころから、「このシステムをウチの会社で使いたい」という問い合わせが多く寄せられるようになり、企業向けのビジネスへと発展したからです。

 当時の社員数は30〜40人で、B2BとC2Cを両立するのは人員的にも資金的にも難しく、選択と集中を迫られていました。その上、「Kスクエア」自体が陳腐化し始め、マーケティングやサイトへの投資も必要でした。

 C2Cに使う資金を、企業向けの製品開発に投下した方が効率的だと判断し、企業向けに一本化した感じです。ただ、C2Cに関しても、より新しいサービスを引っ提げて戻ってきたい、という気持ちはあります。

――核となっている「知識の共有」というコンセプトは一貫しているわけですね。

谷本氏:その通りです。弊社はP2Pの会社ですが、この場合のP2Pとは、"Peer to Peer"ではなく、"Person to Person"という意味です。人と人とを繋ぐことこそが我が社のドメインなんです。B2B、B2C、C2C、E2E(Employ to Employ)、いずれの形であっても、人と人とを繋ぎ、情報を共有する、という意味においては全く同じことをやっているつもりです。

――その後のビジネスの進展について教えて下さい。

谷本氏:2003年10月に、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)の基幹システムを作るという、当時の弊社からすれば非常に大きなプロジェクトを手がけたことが、弊社にとって大きな転換点でした。銀行というシステムダウンが許されないミッションクリティカルなシステムの構築という高いハードルを、必死になって乗り越えたことで、営業的・技術的な飛躍がありましたね。

 その後、弊社製品の採用企業がどんどん増えていき、それまで"nice to have"だったものが、"must"の製品として使って頂けるようになりました。IBMとの協業により、同社とパイプができたのも大きかったです。

――現在、御社製品の採用企業は国内170社ほど。この数字は今後も伸びていくのでしょうか。

谷本氏:弊社の戦略の対象となる、エンタープライズコンテンツマネジメント意識の高い、社員数1000名以上の大企業は、国内に1900社ほどあります。つまり、弊社の製品はまだそのうちの9%にしか浸透していないわけです。残り1730社を、主力製品である「KnowledgeMarket」と「HAKONE」で深堀りしていき、最終的には全体の5〜6割に対し、何らかの形で弊社が関わっていきたいと考えています。

 もちろんそれには5〜7年はかかると思います。核となるサービスはある程度完成されているので、徐々に投資モードから回収フェーズに入ってきている状況ではありますが、現状に安穏とするつもりはなく、利益を再投資してグローバライゼーションを試みたり、新たな製品を開発していくことになると思います。

――海外進出に関しての現状と、今後の方針は。

谷本氏:すでにIBMとの協業や、アメリカでの販売・開発を行う100%子会社リアルコムテクノロジーの設立、さらにはGoogleやEMCといったグローバルベンターとの協業など、ある程度のステップは踏んでいますが、すべてはまだこれからです。

 現製品をそのままローカライズするのではなく、これまでの製品の良かった部分を取り込んだグローバル向けの製品を、2008年末から2009年にかけて本格的にリリースする予定です。そのときには、より多拠点化も進み、弊社自体も外国人採用により多国籍化しているでしょう。

 加えて、これは創業時には意識しなかったことですが、リアルコムは、人脈や組織など、グローバル展開に不可欠な要素をしっかり持った会社だと自負しています。もちろん、現時点での最大の強み、国内リーディングカンパニーという実績を活かし、日本での足場をさらに固めておく必要もあります。