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 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2007年年度まで実施していたソフトウェア開発支援事業である「未踏ソフトウェア創造事業」。2007年に同事業に採択されたプロジェクトに「一億総放送局化を実現するノンレンダリング映像ソフト“回向”開発」というものがある。

 このプロジェクトの成果物として、いよいよ7月18日に「LoiLoScope」クローズドベータ版が発表される。

 LoiLoScopeは、新感覚のユーザーインターフェース(UI)を備えたWindows向けの動画の編集ソフトだ。 無限に広がる平面のインターフェースの上に動画や音楽、画像のファイルを取り込み、ドラッグアンドドロップでタイムラインにファイルを配置するだけでさまざまな動画を編集できるソフトウェアだ。動画にはエフェクト(特殊効果)を付けることもできる。

 無限平面のインターフェースは、スムーズに拡大縮小できるほか、「マグネット」という機能を利用することで複数の動画や音楽をひとまとめにして管理することもできる。さらに、編集した動画のYouTubeアップロード機能も備えている。まずはそのインターフェースについて、動画でご覧頂きたい。そのなめらかな挙動に驚くはずだ。

 このLoiLoScopeを開発するのは、兄でデザイナーの杉山竜太郎と、弟でプログラマーの杉山浩二氏の杉山兄弟を中心にしたベンチャー企業、LoiLoだ。同社は現在、慶應大学湘南藤沢キャンパスに併設されたインキュベーション施設「慶應藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)」にオフィスを構える。ここは独立行政法人中小企業基盤整備機構や慶應義塾大学のほか、神奈川県や藤沢市が協力する官民地域一体型のインキュベーション施設となる。

杉山竜太郎氏 LoiLo取締役の杉山竜太郎氏

 竜太郎氏は1990年代後半、当時セガに務めていた水口哲也氏(現キューエンタテインメント代表取締役CCO)と出会ったことをきっかけに、業務委託という形でユナイテッド・ゲーム・アーティスツやソニックチームなどでゲームアニメーションや映像エフェクト作成に携わっていた。

 また、その一方では「MICRON」という名義でVJユニットとして活動。ナムコ(現:バンダイナムコ)でプログラマーとして働いていた弟の浩二氏とともにビデオカメラと連動して、ライブ映像にリアルタイムにエフェクトをつけることができるVJソフト「回向(ecou)」を開発。クラブイベントやインスタレーションをはじめ、書道家の武田双雲氏とのコラボレーションイベントなど国内外で活躍していたのだという。

 竜太郎氏はゲーム業界に入ってからの約10年について、「最初はExcelやFileMakerでの雑務からはじまり、その後3Dの制作ソフト、動画のエフェクトツールなどを使い始めて、Wiiまでのゲームに携わってきた」とした上で「ゲームデザイナーとしての『果て』は見えつつあった」と振り返る。そんな竜太郎氏だったが、夫人が偶然募集を見つけた現在のオフィスに入居したことで大きな転機を迎える。

ecou LoiLoのルーツでもある、不世出のVJソフト「ecou」のデモ

 竜太郎氏は同オフィスのインキュベーションマネージャーの提案で、IPAの未踏事業に応募。2007年10月には見事スーパークリエーターに認定されることとなる。そしてそれをきっかけに浩二氏を代表取締役として迎え、LoiLoを設立した。「弟が作ったものを1人で売るのは申し訳ないという思いがあった。未踏事業に採択され資金も得て、初めて2人での開発ラインができるようになった」(竜太郎氏)

 もともと開発していたecouはいわゆるVJ向けのソフトだったが、市場規模やサポート体制の必要性などを考慮し、映像の制作・編集ソフトとして改めて提供するという方針に決まったのだという。「開発環境も古かったため、1から作り直そうという話になった。VJソフトという考え方を捨て、映像制作に何が足りないのかを考えた」(竜太郎氏)そして新たにLoiLoScopeと名称も変更し、前述のデモで紹介したソフトが生まれたのだという。

 今後は7月18日より無償のクローズドベータ版ソフトを配布するほか、8月中旬にはパブリックベータの提供も予定しており、将来的には機能を拡張した有償版の提供を目指す。当初はYouTubeなどの動画共有サービスへの投稿に積極的なユーザーをメインターゲットと想定しており、竜太郎氏は「動画共有サービスなどのウェブとローカルを結ぶハブとして、LoiLoScopeで『編集』という作業に踏み込んで欲しい」と期待を寄せる。

LoiLoのオフィス LoiLoのオフィス。左奥に座るのが代表取締役の杉山浩二氏

 最後に竜太郎氏に社名の由来を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

 「LoiLoは漆器を作る行程で、表面を炭や油で塗って輝かせる『蝋色(ろいろ)を塗る』というところからつけた。『japan』という英語は『漆』を意味するが、それを『Japan』とかけて、日本を包み込んで輝かせるツールを提供していきたいと思う」(竜太郎氏)