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 サービス開始からわずか11カ月で400万会員を獲得し、「初音ミク」や「ねこ鍋」など数々の人気コンテンツを生み出しているニワンゴの動画コミュニケーションサービス「ニコニコ動画」。こんなふうに一大ムーブメントを起こすサービスを自分の手で開発してみたいと思う人も多いだろう。

 ニコニコ動画はどのようにして生まれ、どういった点が成功の鍵を握ったのか。また、ニコニコ動画のようなサービスを開発する上で求められる人材像とはどんなものなのだろうか。ニワンゴ技術担当取締役の溝口浩二氏が11月17日に東京都内で開催された就職支援イベント「ミリオンタイムズスクウェア キャリアアップセミナー」の講演で明らかにした。

少人数の開発チームで試行錯誤を繰り返す

ニワンゴ技術担当取締役の溝口浩二氏 溝口氏は31歳。いわゆる「ナナロク」世代だ

 ニコニコ動画は、ドワンゴ代表取締役会長でニワンゴの代表取締役社長も務める川上量生氏と、ドワンゴ研究開発本部 研究開発部 技術支援セクションの戀塚昭彦氏の2人が中心となって開発された。ちなみに溝口氏は「一部でニコニコ動画の仕掛け人と言われるがそんなことはなく、作っているのを横で見ていた」そうだ。

 川上氏は「ユーザー代表兼プロデューサー」、戀塚氏は「達人レベルのプログラマー」という役割で、「この2人の黄金コンビが、すごい速さで開発していった」という。川上氏が「こんなことできる?」と言えば、戀塚氏が10分で実装する、といった具合だ。意思決定をする人とそれを形にする人、という少人数構成で、「極限まで効率化されたスピード開発」(溝口氏)をしていった。

 「ニコニコ動画のようにエンターテインメント性の高いサービスは試行錯誤が大事になる。作っては試すということを繰り返すためには、少人数構成のほうがいい」

 ただし、開発者からの目線だけでは、独りよがりなサービスになりかねない。「川上がユーザー代表として、第三者の視点やビジネス的な観点からサービスを見た」ことで、サービスとしてのバランスをとっていった。

 また、開発者自らがヘビーユーザーであった点も大きい。8月16日付けのニコニコ動画 開発者ブログで「(戀塚氏が)毎回、徹夜して斃れる直前にみんなに送られてくる彼からのメッセの内容は新機能ができたしらせでもなければ、バグがなおったわけでもなく、彼がニコニコ動画で見つけた面白い動画のURLなのです」と書かれているように、戀塚氏は常にニコニコ動画を使っている。それにより、問題点をいち早く見つけ出し、改善できるというわけだ。

 その後、サービスの拡充に伴ってニコニコ動画に携わる開発者も増えている。2ちゃんねるで募集したエンジニア2名もその一部だ。「コミュニケーションは難しいけど(笑)、腕はぴかイチ。将来、凄腕プログラマーになりうる人たちだ」と溝口氏は期待を寄せる。

 ただし、ここまでニコニコ動画が人気を集めるようになったのは、ニワンゴでも想定外だったようだ。「2ちゃんねる管理人の西村博之さんが参加してくれたり、2ちゃんねるの閉鎖騒動があったり、たまたま社内でYouTubeのようなサービスを開発していた人がいたりと、いろんなラッキーが重なった」

 「なぜこんなにうまく行ったかと聞かれて、一言で答えたいけど、結局は日々の努力だと思う。地道にやるしかなくて、後はラッキーが待っているだけ。ニコニコ動画の人気がこれから先もずっと続くかは分からないし、新サービスも当たるか分からないけど、とにかく良いものを作っていく」

面白いからがんばる“オタク性”

 溝口氏はニコニコ動画のようなサービスを開発する上で求められる人材像についても触れた。ドワンゴという会社がネットワークゲームのミドルウェア開発から始まり、着メロや着うた、ニコニコ動画へと注力事業を移している点を挙げ、「節操がないので(笑)、面白そうなことなら何でもやる人、面白くないものでも面白さを見つけてしまうような人がいい」と話す。

 「要はオタク。面白いからがんばっちゃう」

 感覚としては、ロールプレイングゲームで主人公のレベルを上げている状態に近いという。「新しいことを覚えるのも、成長するのも楽しい」

 また、自分が好きなことをやるだけではなく、「ハッカー的サービス精神」が必要とのことだ。「例えば不具合を見つけたらそれを教える。さらには自分でパッチまで作って送っちゃう。かなりおせっかいだけど(笑)、そういう姿勢があればすばらしい」

 溝口氏がドワンゴに参加した1998年当時、社員はまだ5名しかいない「怪しいベンチャーだった(笑)」という。現在は社員数が500名を超え、東京証券取引所第一部に上場する大手企業だが、「ニコニコ動画もベンチャー的に始めた」といい、その風土はまだ残っていると話す。

 「ベンチャーって、特に勢いがあるところは仕事が山ほど降ってくる。自分で能力を高められる人には、経験値稼ぎにもってこいの環境だ。大きい企業でも、ベンチャーの風土を残している企業はいっぱいある」

 溝口氏は「自分自身、9年前はひよっこプログラマーだったけど、仕事をやっていくうちにできることが増えてマネージャーになった」と振り返り、「株式公開して、それまでタメ口で喋っていた(川上)会長がお金持ちになったりするのを見られるのは面白い。ドワンゴに入って本当に良かったと思う」と話し、ベンチャー企業やベンチャー精神を持つ会社で経験を積むことでいち早く成長できると魅力を語った。