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 9月12日、東京有楽町の東京国際フォーラムにおいてパネルディスカッション「学生発ベンチャーと松田岩夫が語る−イノベート・ニッポン−」が開催された。これは、大学の研究と企業とをマッチングさせる「イノベーション・ジャパン2007」のイベントの1つであり、大学から始まったベンチャー企業の経営者と、前科学技術担当大臣の松田岩夫参議院議員が語るというもの。

 パネラーはCOCO・WA・DOCO代表取締役の半田正治氏(明治大学)、機能食品研究所代表取締役社長の梅田幸嗣氏(三重大学)、ブイキューブ代表取締役社長の間下直晃氏(慶應義塾大学)、データ復旧センター代表取締役社長の藤井健太郎氏(岡山理科大学)、イーラボ・エクスペリエンス代表取締役の島村博氏(三重大学)、ソフトイーサ代表取締役会長の登大遊氏(筑波大学)、そして司会進行はメディアスティック代表取締役社長の宮内淑子氏(筑波大学)。会場には学生の姿も多かった。

 COCO・WA・DOCOの半田氏は明治大学大学院政治経済学研究科卒。学生時代に明治大学の情報システム課でアルバイトする傍ら、自宅近くの商店街のシステム化をサポートする会社を立ち上げた。2004年にスタートした明治大学インキュベーションセンターの第一号としてCOCO・WA・DOCOを設立した。主たる事業はIP電話関係の開発、コンサルティングと、明治大学の教授が持っている知的財産をビジネスに結びつけるマネジメントだ。

 機能食品研究所の梅田氏は三重大学医学部大学院卒。2004年4月に三重県産業支援センターが実施した「みえビジネスプランコンペ」で最優秀賞を受賞したことを契機として創業した。三重大学医学部や大学病院、NPO法人みえ治験医療ネットと連携し、食品、化粧品、機能食品などのヒト試験を代行している。

 ブイキューブの間下氏は慶應義塾大学大学院理工学研究科卒。学部在学中からウェブサイトの制作や携帯電話のアプリケーション開発を手がけ、1998年に会社を設立。2002年には慶應義塾大学と資本提携し、技術移転を受けたを行った。現在はマルチプラットホーム、インストール不要で利用できるテレビ会議システムのサービス提供をメインとしている。

 データ復旧センターの藤井氏は岡山理科大学卒。学生時代の10代にて起業し、現在は壊れたハードディスクからのデータ復旧事業と、データ便事業を手がけている。政府への要望として、ベンチャー優遇税制、入札制度におけるベンチャー企業割合の設定などを訴えた。

 イーラボ・エクスペリエンスの島村氏は大阪市立東淀工業高校卒。メーカー勤務を経て2002年に起業、2003年には三重大学との共同研究を開始し、2004年、三重大学キャンパス・インキュベータ内に三重大オフィスを開設した。三重大学生物資源学部と共同でセンサー技術と食・農・環境を融合するプロジェクトを進めるほか、「世界連携型ユビキタス産業クラスター」を提唱。2007年1月には三重県にアラン・ケイ氏を招き、「グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ・シンポジウム」を開催した。

 ソフトイーサの登氏は筑波大学大学院1年生と、当日のパネラーとしては最年少。筑波大学1年の2003年に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)主催「未踏ソフトウェア創造事業未踏ユース部門」の支援を受けて無料のVPNソフト「SoftEther」を開発した。2004年に会社を設立し、SoftEther商用版をリリース。現在も筑波大学内に研究開発拠点、通信実験拠点を置いている。

 メディアスティックの宮内氏はテレビキャスター出身。筑波大学大学院教授の北川高嗣氏が開発した技術をベースに、暗号化したQRコード「MSコード」を開発し、携帯電話でセキュアにアクセスできるインターネット事業を行うメディアスティックを2000年に設立した。

 本来なら、各パネラーの自己紹介の後に、松田氏を含めて議論が展開される予定であった。だが、安倍首相辞任発表を受けて自民党臨時総務会が開かれることとなり、松田氏は急遽退席を余儀なくされた。退席にあたって松田氏は、「皆さんが挑戦している課題は、たいがいの国や地域で需要があるもの。もっとグローバルな展開を目指して欲しい」「官は政策で補強するが、民ももっと大学発ベンチャーを支援できるよう、大手企業のトップに声をかけて動いているところだ」と、イノベーションの促進に力を注いでいることを述べた。

起業家にとって「成功」とは

 後半は司会の宮内氏と各パネラーとの質疑応答で進められた。まず、「起業して良かったかどうか」という質問に対し、「大企業にいたが、大きな組織の中で歯車の役割をしていたのから、何でも好きなことができるようになった」(COCO・WA・DOCOの半田氏)、「自分でやりたいことを計画して実行でき、お客様の反応に一喜一憂できること」(機能食品研究所の梅田氏)、「自分たちがやっていることが、他人のビジネスや世の中を変えていけることがダイレクトに伝わってくることが面白い」(ブイキューブの間下氏)、「自分たちがやったことが評価されること、醍醐味がある」(データ復旧センターの藤井氏)「周りのことを気にせず、一番楽な気持ちでやりたいことができ、創りたいものを創ることができる」(ソフトイーサの登氏)と述べた。

 ベンチャー企業を目指す学生に対しては、「学生ベンチャーは世の中にないアイデアを出そうとするが、実際にお金を儲ける方法を知らない。何でもいいから社長になって、自分の名義で領収書を発行するところからやってみて欲しい」(COCO・WA・DOCOの半田氏)、「学生時代にビジネスに挑戦すれば、ノーリスクでやっていける。投資・融資を受けない、お金を先に払わない、正社員を雇わないという原則さえ守れば、最悪失敗してもゼロ以下にはならない」(ブイキューブの間下氏)とアドバイスした。

 途中、会場の参加者にマイクを回して発言を求めたところ、「学生なら親、社会人なら家族など回りの反対で企業を躊躇する人が多いのでは」「大手企業に就職しないと、優秀な人に出会えない」「企業に興味はあるけれど、怖い。どうやってお金を調達すればいいのか分からない」といった声が出た。

 最後に、「起業した自分にとって成功とはなんだ」という質問が投げかけられた。これに対してパネラーからは「分からなかったことを発見し、思ったことが実現した時が成功」(ソフトイーサの登氏)「いい会社があったよね、という評価を残したい」(イーラボ・エクスペリエンスの島村氏)、「社会や国にインパクトを残せるとか、みんなの役に立つサービスを提供できたという証明を残したい」(データ復旧センターの藤井氏)、「世の中に求められる存在になれれば、大きかろうが小さかろうが一つの成功」(ブイキューブの間下氏)、「ぼくに人生を掛けてくれている社員、うちを信じて仕事を出していただいたお客様が幸せになることを見て、一生を送れれば成功」(機能食品研究所の梅田氏)、「常にドキドキしていたい、常にそういう環境にいられれること」(COCO・WA・DOCOの半田氏)という思いが述べられた。

 宮内氏は「生物はDNAを残すことしかできない。人間はDNAだけでなく、文化とか思想、哲学といったものを次の世代に残すことができる。新しく起業し、自分達の文化を創って後世に伝えていくことが、産業の活性化や人の心を豊かにすることではないか」と締めくくった。