2007年8月3日 18時37分
藤本京子(編集部)
世界中の起業家やベンチャーキャピタル(VC)事情に精通し、ベンチャー市場にフォーカスしたイベントを数多く開催している米Red Herringが、7月23日と24日の2日間、同社にとって日本初となる起業家のためのカンファレンス「Red Herring Japan 2007」を開催した。同社が今日本でこのイベントを開催する背景には何があるのか。イベント主催者であるRed Herring 会長のAlex Vieux氏に、今回のイベント開催の背景について、そして日本のベンチャー企業の課題について聞いた。
日本のベンチャー事情の課題を語るRed HerringのAlex Vieux氏アメリカと違って、日本にはまだベンチャー企業が育つカルチャーがありません。つまり、日本の起業家は孤独だと思うのです。アメリカには起業家カルチャーがすでにできあがっているので、理解者も多い。ベンチャー企業が抱える問題は世界各国共通ですが、こうした情報を共有できる場が日本にはあまりありません。情報共有の場を設けるためにも、こうしたイベントの必要性を感じました。
資金調達や人材確保が困難なこと、そしてベンチャー企業に対して顧客が懐疑的になりがちなことなどです。また、アイデアはあってもそれを完全に製品化できないことも多い。だから多くのベンチャー企業は2年と続かないのです。これは万国共通です。
日本は、モバイル分野やマンガ文化などで世界のリーダー的存在となっています。つまり、日本人はリーダーになる資質を持っているのです。また、日本は教育レベルも非常に高い。アメリカでは読み書きができない人が2000万人もいて、PCを与えられても文字がタイプできない人がいる一方、日本は識字率もほぼ100%でPCを使いこなせる術を持っています。つまり、日本人に必要なのは自信を持つことなのです。
あります。まずひとつは、単一民族国家であるため、多言語環境に免疫がないことです。私は、英語学習をもっと早い時期に始めるべきだと感じています。ただし、英語力よりも問題なのは、日本人は自意識過剰でシャイなため、あまり英語を話したがらないことです。外国人には、間違いだらけの英語でも、強いアクセントがある英語でも、気にせずに話す人が数多くいます。私だってその1人です。
また、起業家を育成するための土壌がないことも問題ですね。起業家育成プログラムなどがあればいいんですが。
日本に比べると、アメリカはもちろんですが、インドやイスラエル、中国などはVCの数が圧倒的に多いですね。現在アメリカには約8000のVCがいますが、日本では200程度ではないでしょうか。人口が日本の4分の1程度のカナダでさえ、約500のVCがいるのです。ファンドの額も日本は小さいのが現状です。
これは深刻な問題です。VCが少ないと、ベンチャー企業に資金が回らない。資金がなければ、起業する人も少なくなる。起業家が少なければ、プロジェクトの数も減る。プロジェクトが少ないと、イノベーションができない。イノベーションができないとなれば、大企業に行くしかない。これらはすべてつながっているのです。
起業家としての経験と、多くのコネクションが必要です。VCは、ベンチャー企業のリクルーティングや営業も支援しなくてはいけませんからね。また、VCはいいコーチでなくてはなりません。
ベンチャーファンドに対する税制優遇処置を設けるなど、何らかのインセンティブが必要でしょうね。日本では、なぜか優遇処置は大企業に有利に働いています。もっとベンチャー企業が恩恵を受けるような税制を設けるべきだと思います。ベンチャー企業こそ、将来を作る人たちなのですから。
日本の起業家は、とてもよく働き、規律正しく真面目な人たちです。これはとても貴重です。今後は、ベンチャー企業家こそ日本の将来を担う人たちなのだということをもっと一般の日本人にも理解してもらいたいですね。次世代の経済発展は、大企業ではなくベンチャー企業から起こるのです。
起業することを恐れてはいけません。東京大学のような有名大学の出身であっても、進んでベンチャー企業に入ってほしいと思います。一度失敗したとしても、有名大学を出ていれば次の職はすぐに見つかるでしょう。だから、リスクを取ることを恐れないでほしい。独立心を養い、自分で考える力をつけてほしいと思います。
起業家は、形式にこだわっていてはいけないのです。人生は教科書通りに進むものではありません。教科書も大切ですが、そこからヒントを得て分析し、教科書にはない課題にも立ち向かっていかなくてはならないのです。
それから、起業するのに年齢は関係ないということもアドバイスしたいと思います。起業家というと若者をイメージしがちですが、実はアメリカでIPOする企業の経営者の半数近くは50歳以上なんですよ。日本でも、イー・アクセス CEOの千本倖生氏が同社を創業したのは57歳でした。それでもNTTに立ち向かい、社会を変えようとしています。
千本氏については、もうひとつ日本であまり見かけない例を実践した人物といえます。それは、長年大企業に勤め、そこで学んだ経験をベンチャー企業に生かそうとしている点です。アメリカではこのようなタイプの起業家がどんどん出てきています。YahooやSun Microsystems、Appleなどで10年以上勤務した人が、新しく会社を創業していますから。
エンジニアにしてもそうです。シリコンバレーのベンチャー企業に勤めるエンジニアの多くは、過去に大企業に勤めていた人たちです。こうしたエンジニアは、IBMのような巨大な企業から小さなベンチャー企業に転職し、自由に仕事をしています。自由がなければイノベーションも生まれません。
すぐに日本のベンチャー事情を変えることは難しいと思いますが、これから徐々に変わっていってほしいと思います。Red Herringも、そのために支援を続けていきたいと思います。
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