2007年3月23日 23時16分
島田昇(編集部)
首都圏情報ベンチャーフォーラム(事務局・財団法人デジタルコンテンツ協会)と経済産業省および総務省は3月22日、都内で次世代を担うベンチャーに関するセミナー「BEAT Forum 2007-Spring-」を開催した。「技術」「人材」「海外」をテーマに選び、各方面から著名人を招き議論。今後のベンチャー市場活性化における条件を探った。
主題は「次代を担うベンチャーの条件とは?〜技術×人材×海外」。ベンチャー市場の活性化支援を目的とする団体「Venture BEAT Project」が中心となり、3つのテーマごとにパネルディスカッションを企画した。
「技術」「人材」「海外」をテーマとして選んだのは、テクノロジー系分野においてベンチャー企業が継続的な成長を遂げるには、現時点でこの3つが欠かせない重点事項であると考えられるためだ。
技術を軸に起業するテクノロジー系ベンチャーにおいては、技術としてはいい技術であっても、それが商売に結び付かなければ意味がない。また、いかに優秀な人材を確保し続けるのかという問題も、すべての企業にとって恒久的なテーマだ。さらに、「そこそこ稼げて居心地のいい国内市場」(経済同友会代表幹事の北城絡太郎氏)から海外市場に目を向けることも、グローバル化が進む経済圏で国内企業が優位に立つという観点から考えると、次世代の一端を担うベンチャーにとって忘れてはならないテーマとなる。
技術のセッションではミドルウェアの開発・販売を行うコミュニティーエンジンのCEOである中嶋謙互氏、アニメ制作支援ツール事業などを展開するセルシス社長の野崎慎也氏、ケータイ向けミドルウェアを開発するモルフォ社長の平賀督基氏を招き、「テクノロジーベンチャーの経営戦略を極める」をテーマに議論した。モデレーターは三菱UFJリサーチ&コンサルティングで情報・産業研究部の渡辺洋行氏が務めた。
コミュニティーエンジンは中嶋氏が国内でいち早くオンラインゲームの制作を手がけてきた関係上、黎明期の国内オンラインゲームに携わる人たちの間で有名な存在だった。その経験と知名度を生かし、大手ゲームメーカーの支持を得たことが、企業成長の原点となった。
セルシスは画像制作ソフトの技術で「人のやっていることはやらない」という考え方を軸に、アニメーション制作現場のIT化支援ソフトを提案。現場の声を地道に拾いながら、国内のアニメ制作支援ツールで90%程度のシェアを持つ規模へと成長した。
モルフォは大学発ベンチャーとして、技術に強い平賀氏と経営に長けた共同経営者で構成される経営陣だったことや、ベンチャーキャピタルおよび大学の支援を受けられたことなどを要因に成長してきた。その過程で重要だったのは、核となる技術力を信じる一方、需要との接点で生まれるサービスを的確に絞り込めたことだった。
人材のセッションではネットメディア事業のECナビCEOである宇佐美進典氏、携帯電話向けコミュニティーが急成長しているディー・エヌ・エー(DeNA)COO次世代戦略室長の川田尚吾氏、ネットマーケティング支援のセプテーニ社長の佐藤光紀氏を招き、「成長を目指すベンチャーの人材戦略を極める」と題してパネルディスカッションをした。モデレーターはグロービス・マネジメント・バンク代表の岡島悦子氏が務めた。
企業規模とポリシーにより、各社の人材戦略は異なる。例えば、DeNAは創業メンバーを知人で固めて社内ですべてのサービスにかかわる人材を確保するポリシーで採用を進めてきたのに対し、セプテーニは当初から新卒を積極的に採用する方針に立って人材育成とともにサービスも変化させていく戦略をとっている。
人材の問題について佐藤氏は愛読書の中から「(バスに乗るとき)行き先を決めるよりも誰と乗るかが重要」という言葉を引用し、採用される側においても「thinkよりfeel」の方が重要との考えを披露した。
今後の課題については、各社から「(社内で得意としない分野における)優秀な人材をいかに集めるか」、「組織として次のステージに成長する段階の難しさ」──などが挙げられた。
最後に海外をテーマにしたセッションでは、サイボウズ社長の青野慶久氏、日本アイ・ビー・エム会長で経済同友会代表幹事の北城絡太郎氏、ネットエイジグループ代表でネットエイジキャピタルパートナーズ社長の小池聡氏、携帯電話向け閲覧ソフトなどを開発するjig.jp社長兼CEOの福野泰介氏が登壇。モデレーターはIBM Venture Capital Groupベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当の勝屋久氏が務めた。
議論では終始、当時は「技術立国日本」と言われた国内企業の今後に対する危機感が叫ばれ続けた。
小池氏は、ネットバブル崩壊を乗り越えてきたことなどで、現状における国内ベンチャーの実力に一定の評価を下すものの、「中国やインド、ベトナムに比べると甘い」と指摘。北城氏は海外勢の躍進と国内企業の差について、教育にまでさかのぼらなければ解決できない要因があるとした。また、ベンチャー企業が起業しづらい日本の税制問題についても言及。さらには現時点で国内市場がそこそこ稼げる状況にあることも、「米国で成功しているからそれを真似すれば日本でも稼げる」など最初から海外展開を視野に入れていないベンチャーが育つ要因の1つでもあると指摘した。
米国進出を経験した青野氏も、教育面に国内企業の海外進出がかなわない原因があるとし、さらに議論を掘り下げ、技術者不足の問題を取り挙げた。福野氏はこれについて「日本は技術力はある。英語ができないことが要因」と反論。今活躍する国内ベンチャーを代表して両氏は、海外で活躍できるベンチャーを育てるための教育として、「今後は読み書き、英語、プログラミングは必須」との意見で一致した。
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