2007年2月6日 10時56分
永井美智子(編集部)
経済成長を続ける中国市場。これはもちろん、ネット業界も例外ではない。日本への参入を表明した中国最大手の検索サービス企業である百度(バイドゥ)をはじめとして、多くの企業が急成長を続けている。そしてこの高い成長率が、海外のベンチャーキャピタル(VC)の資本を引きつける。
VCの目に中国市場の現状はどう映っているのか、そして中国でネットビジネスを成功させるためにはどのような点に気を付ける必要があるのか、DCM - Doll Capital Management創業者兼ゼネラル・パートナーの茶尾克仁氏とOak Pacific Interactive Co-COOのJames Liu氏の2人がNew Industry Leaders Summit 2006 Fallにて語った。モデレーターはグロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーの小林雅氏が務めた。
DCMは1996年に創業した米国シリコンバレーに本拠地を置くVCで、Foundry NetworksやAbout.com、日本国内ではカブドットコム証券やオールアバウト、アドウェイズなどに投資している。運用資金は総額2000億円以上という。茶尾氏は米Apple Computerの日本市場参入に従事したほか、日本通信の共同創業者でCTOおよびCFOを務めた経歴も持つ。
中国では人材サービスの51jobや画像処理半導体の中星微電子(Vimicro)、半導体ファンドリーの中芯国際集成電路製造(SMIC)などに投資し、この3社を上場させた。過去4年間での中国市場への投資で300億円ほどの利益を出しているという。
一方のOak Pacific Interactiveは2002年に設立されたVCで、中国のWeb 2.0関連企業に多く投資している点が特徴だ。傘下にmop.comというソーシャルネットワーキングサービス(SNS)や、5q/xiaonei(2006年12月にサービス名を5Q校内網に変更)という大学生向けSNSなどを傘下に持つ。mop.comの会員数は2600万人にのぼり、ページビューも2006年第2四半期には1日9000万PVを超えたという。
さらにPtoP技術を利用した動画共有サイトのuume.comや、IT関連のブログサイトであるdonews.comなども手がけている。
会場ではまず茶尾氏が中国のベンチャー市場について紹介し、続いてLiu氏が中国のWeb 2.0市場の可能性を示した。
中国のベンチャー市場は国際化が進んでいると話す茶尾氏中国のベンチャー市場の特徴としては、トップクラスのインターネット関連企業を中心に、経営者のほとんどが英国や米国で教育を受けた帰国子女であることが挙げられる。シリコンバレーでの勤務経験がある人も多く、シリコンバレーの人々と強い人脈を持っている。
また、上場する市場として米NASDAQを目指しているのも大きな特徴だ。米国で最近上場した企業20社を見ると、うち2割が中国の企業となっている。米国や日本、英国など海外企業によるM&Aも増えており、国際的に活躍するVCへのニーズは高いと茶尾氏は話す。
現在中国市場にVCが投資している金額は総額で約10億ドルで、アジア向けの資金の約48%を占める。これは日本向けの18%に比べてはるかに大きい。「携帯電話の加入者数が4億人、ケーブルテレビの加入者数が1億2500万人といったように、世界で最も大きい市場という点がVCの資金を引き付けている」(茶尾氏)
中国企業にVCが投資するの基準として、「急成長のセグメント、良い経営陣、何らかの技術を持っていること」という基本的な3点を挙げた上で、茶尾氏は中国ならではのポイントを挙げた。まず、GAAP(公正かつ妥当と認められる会計原則)をきちんと見ること。中国のGAAPは米国のGAAPとは大きく異なる点が多いので、VCが投資先の会計基準や財務状況をきちんと精査する必要があると指摘する。また、経営者が信用に足る人物かも注意する必要があるという。
このほか、政府の統制が他国よりも厳しく、外資の資本への制限があることや、政府の監視の目が厳しい点にも注意する必要がある。例えばソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のようにユーザーが自由に発言できる場では、反政府的な発言に対して厳しい目が注がれるため、監視体制をきちんと取る必要がある。
最近のベンチャー企業の動向としては、NASDAQの上場基準が高くなっていることから、英国や日本、香港での上場を目指す企業が増えてきているという。ただし、ミッドステージにあるベンチャー企業へのVCの投資が「バブルになってきている」(茶尾氏)という点には注意する必要があるとした。
また、今まで帰国子女の人が中国で起業していたが、最近ではその企業の部長クラスの人がスピンアウトとして会社を興す「第2世代のアントレプレナーが出てきている」(茶尾氏)という。
今後有望な市場として茶尾氏は、Web 2.0関連やEC、アウトソーシングのほか、映像やデータの処理をするアナログ半導体などの分野を挙げる。
ECの分野は、中国でクレジットカードを持っている人が少ないことや、オンラインでの値切り交渉が難しいこと、国土が広く物流の面で課題があることなどからこれまであまり成長してこなかった。ただし最近ではCDや本、化粧品を中心にECの利用が進んでいるという。
Web 2.0と呼ばれる分野については、オンライン広告市場規模が小さい点がネックになっている。同市場の規模は約300億円とまだ未成熟のため、サービス運営費をまかなうことが難しいというのだ。「5年、10年の期間で見ればWeb 2.0の市場は非常に面白いが、今本当にお金をもうけられるかというと厳しい」(茶尾氏)
Liu氏によれば、mop.comのアクセス数は1日2億PVにのぼるというLiu氏はWeb 2.0サービスを提供している立場から、中国でWeb 2.0サービスを手がける際の注意点として、中国のネット普及率の低さを挙げた。普及率はわずか10%程度のため、例えばSNSでも「自分の友達とかならずインターネットでつながる」といった状況は作りにくい。そこでOak Pacific Interactiveでは、大学生に特化したSNSに焦点を当てた。大学であれば必ずインターネットが普及しており、ユーザーのコンピュータリテラシーも高いというのがその理由だ。
また、動画共有サイトだけを見ても150社以上が乱立している状況のため、こういった分野にこれから投資する場合にはコンテンツが本当に優良か、サービスがきちんと価値を持っているかを見極めたうえで投資し、ビジネスモデルを構築していかないと難しいとの考えを示した。
中国には海外資本のインターネット企業も多く参入しているが、実際にうまくいっている例は少ないようだ。AmazonやeBayが中国のトップ企業を買収して参入したが、「その後ナンバー2に落ちてしまう例が多い」(茶尾氏)。これは人事政策がうまくいっていないためだといい、海外からの人で経営陣を固めようとすることで創業者が退社したり、ほかの従業員との給与の差が大きくなりすぎて社内で問題になるといったことが起きるためだとした。
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