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 2006年の大注目IPO(株式新規上場・公開)となったミクシィは、事前の評判どおり初日取引では買いが殺到する人気で値がつかなかった。しかし、初日の最終気配値で見ると時価総額が2221億円で、すでに新興市場を代表するかのような企業価値になっている。

 この価値を正当と見るか、過度で行きすぎたプレミアムがついたと見るかは議論の余地があるだろうが、いずれにせよ単純にソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の最大手だからというだけで価値が高まったわけではない。

 まずは、業績面から見てみよう。これまでミクシィは、ほぼ一貫して業績については口をつぐんできた。株式を上場して初めて開示された情報だ(グラフ1)。年度で見ていくと、毎期2倍以上の伸びを示している。また、2007年3月期決算の第1四半期(2006年4〜6月)の売上高だけで、すでに2006年3月期通期の売上高の47%を達成している。

売上高の推移 グラフ1:売上高の推移

 この売上高を、四半期ごとに2大事業別で見たのがグラフ2だ。ミクシィは、SNSの「mixi」を展開するインターネットメディア事業と、求人情報サイト「Find Job !」を展開するインターネット求人広告事業がある。これまでの売上高の推移を見ると、圧倒的Find Job !の占める比率が高かった。しかし、近年ではこの差が急速に縮小して、2006年3月期決算の第4四半期(2006年1月〜3月)で逆転した。代表取締役社長の笠原健治氏は、上場に伴って臨んだ会見で「今後はmixiが事業の中心になっていく」とした。

2大事業別売上高の推移 グラフ2:2大事業別売上高の推移(四半期)

 では、利益はどうだろう。グラフ3は経常利益と同利益率の推移だ。2004年3月期に黒字転換し、2006年3月期にはmixiの成長を受けて前期比5.6倍もの急激な拡大を示した。また、この決算期には経常利益率も48.2%と高水準に達した。2007年3月期の第1四半期の利益率は、51.0%とさらに向上している。ベンチャー企業だとはいっても、非常に優秀な経営成績と言えるだろう。

経常利益と利益率の推移 グラフ3:経常利益と利益率の推移

 業績以外のデータを見ると、mixiの9月14日現在のユーザー数は570万人、月間ページビュー(PV)は64億PVとなっている。1人あたりの月間PVは616PV、サイトの月間滞在時間は3時間55分で、共に主要サイトの中でトップに立つ。特に強いのが、3日以内にユーザーがサイトを利用する「アクティブ率」が70%を誇ることだ。

 こうした成長を裏付けるmixiの成功要因として、笠原氏は以下の3点を挙げた。

  1. 日本初のSNSとして早期にスタートできたこと
  2. コミュニケーションの活性化を重要課題としてサービスを提供したこと
  3. コミュニケーションを取りたいというユーザーの本能的なニーズと合致したこと

 これにより笠原氏は「日本で最大の会員数を誇るSNSになった」というが、背景にはさらに「ネットワーク外部性が働いたことが大きい」としている。ネットワーク外部性とは、利用者が増えれば増えるほど価値が高まり、それによってさらに利用者が増えていく仕組みのことだ。

 こうした成長の軌跡をもって株式を公募・売り出したわけだが、上場の目的は至極あたりまえで、認知度の向上と資金調達だ。笠原氏は「SNSでトップだとしても、mixiはもとよりSNS自体がまだまだ知られていない」と述べた。そして、「1997年にヤフーが上場して一気にインターネットが人々に広く知られ、理解されたように、業界のリーダー企業が上場することで市場自体の知名度が向上するきっかけになる」と続けた。

代表取締役社長の笠原氏

 また、今回の公募で得た資金は約64億円だ。このうち約11億円をサービス強化のためのシステム開発や、会員数やアクセス数の増加に伴うサーバ設備の増設などに充てる。そして、約3億円を事業所の拡充に伴う設備投資に充てる。残りはまだ50億円もあるが、笠原氏は「具体的な使途が決まっていないため、資金需要が生じるまで預金などで運用する」としている。つまり、今後の事業展開によっては資金が必要になるので、それまではプールしておきたいということとも受け取れる。

 そこで、もっとも重要となる事業展開について笠原氏は、「既存のユーザーの満足度を最大化していくことにもっとも力を入れていく」とした。これがさらなるユーザー数やPV数の向上につながるというわけだ。

 その次に重視している点としては、SNSの特性を活かした広告効果の高いメニューを開発し、広告価値を最大化することを掲げた。Find Job !では、自社媒体であるmixiに広告を掲載することで求職者を獲得すると共に、広告宣伝費を抑制することを実現している。

 mixiでも広告価値を高めてはいくが、mixiの収益構造は変化させていくかまえだ。現在mixiの売上高は82%が広告収入で、18%がユーザーから直接徴収するプレミアム収入(mixiにオプション機能を付けることで月額315円を課金)となっている。このプレミアム課金の比率を上昇させていくことを目指す。

 もう1つ、中長期的に重要視している展開として「新しい収益モデルの創出」を挙げた。既存事業では、mixiでデジタルコンテンツを販売したり、ユーザー間の売買やBtoCのECを展開したりすることを描いている。この一方で、Find Job !、mixiに続く新規サービスも生み出していくかまえだ。こうした具体的な事業展開や、ヤフー、グリーなど他社との競合については、以前に掲載したインタビューで詳細が語られている。

代表取締役社長の笠原氏

 今後、事業展開していく基本戦略は以上の3つで、これらを実現するために笠原氏は「他社との業務提携や資本提携、場合によってはM&A(企業買収・合併)も視野に入れていく」と語った。たしかにこれまでのミクシィは、笠原氏が個人的に出資するケースはあったが、会社としてM&Aなどとはほとんど無縁だった。ただし、あくまでも本業を伸ばしていくことを目的とし、イメージとしては大きな企業を買収するというより、自分たちにはない技術や開発力を持っている企業が対象となる。

 そうはいっても、ミクシィも株式を公開したため、逆に買収のターゲットになることもあり得る。これについて、笠原氏は「特に買収の防衛策などは考えていない」とした。

 こうした事業戦略の一方で、株主に対しては「基本的には事業戦略にもとづいてサービスを強化し、これに伴って業績を成長させていけばおのずと株価の上昇というかたちで貢献できると考えている」と述べた。いずれ、配当金も出していくかまえだ。株式分割については「買いやすい株価帯を意識して将来的に考えていきたい」とした。