2006年6月30日 18時00分
加藤さこ
ベンチャー経営者や業界のキーパーソンが登場し、起業経験や最新の業界動向を生の声で伝える「CNET Business Baseセミナー」の第2回目が6月8日に開催され、サーチテリア代表取締役社長兼CEOの中橋義博氏と、同社に出資するネットエイジキャピタルパートナーズ取締役の金子陽三氏が登場した。
中橋氏からは、サーチテリアの起業までの経緯、現在の経営状況、そして今後のビジョンが語られた。携帯電話からのインターネット検索結果に広告を配信する「モバイル検索広告」という新しい試みに挑戦するために行われた体験が惜しみなく披露され、参加者の興味を引き付けていた。また金子氏は、自社の投資スタンスを紹介しながら、新進のベンチャー企業に投資を決める際の重要なポイントを解説した。
2人の講演後には、CNET Japan編集長の西田隆一が「起業とベンチャー」をテーマに、中橋氏と金子氏の出会いから、投資家と企業家がどのようにして事業を進めていくかという話題に焦点をあて、参加者からの質問を交えながら両氏とトークセッションを行った。
サーチテリア代表取締役社長兼CEOの中橋義博氏
サーチテリアは、「独自の発想とノウハウを武器に、マーケティングソリューションプロバイダーのリーディングカンパニーを目指す」という理念に基づき、モバイル検索連動型広告事業「サーチテリア広告」をメインに、ソリューションビジネス、モバイルマーケティングコンサルティングを行っている。
「サーチテリア広告」という新しい分野での事業展開を思いついたのは、中橋氏がオーバーチュアに勤めていた頃だという。当時のモバイルインターネットは、モバイルの公式コンテンツが成熟化し、モバイル対応ブログをはじめとしたキャリアに依存していない勝手サイトへのトラフィックが増加していた。こうした点から中橋氏は、モバイルビジネスの主流は、モバイル広告による無料運営の勝手サイトに移っていくだろうと予測したという。当時を振り返り、中橋氏は次のように語った。
「当時のモバイル広告業界がどうだったかというと、公式コンテンツは5000を超え、溢れ返っていました。課金インフラも整っており、PCと同様にモバイルも広告収入がビジネスモデルの主流になると思っていました。そして無視できなかったのが勝手サイトの増加。公式コンテンツのトラフィックが30%だったのに対し、勝手サイトでは70%もありました。勝手サイトでは、課金インフラを持っていないので、モバイル向けのリスティング広告を立ち上げればいけると直感しました」。
中橋氏が注目したのは、日本におけるリスティング広告配信会社の主要プレーヤーは外資系企業だという点だ。外資系企業は日本にエンジニアを持っていないため、本社が日本のモバイルに特化したシステムを作るのは難しい。また、外資系企業のグローバルな視点で見ると日本市場は小さく、モバイル業界はさらに小さい市場だ。外資系企業は日本のモバイル対応への優先順位は低いだろうと考えられる。
しかし、一方でベンチャー企業がやれるのかという不安もあったという。「ベンチャー企業は大きな市場に参入しても資本が少ない。だからニッチなところをがっちり押さえるべきです。日本のモバイルのリスティング広告はニッチ市場で、PCの1/10の市場規模しかありません。このビジネスにおいて仮想ライバルは大手外資系でしたが、エンジニアは本国にしかいないし優先順位が低いでしょう。検討していくうちに、これは日本のベンチャーがやるべきビジネスだと確信しました」(中橋氏)。
起業への決意は固まったが、リスティング広告への参入には外資系企業が持つ掲載順序の特許が障壁となってしまう。中橋氏は、創業メンバーと他社が保有する特許に抵触せず、さらにモバイルに特化した独自の検索ロジックを生み出すことで解決した。これでビジネスを組み立てれば、逆に国内で競合他社が現れたときに大きな参入障壁になり得る。
次に考慮すべきことは、起業のタイミングだった。遅すぎたら先行した企業に追いつけない。しかし、早すぎても市場が成長して利益が出せるまで時間がかかる。ベンチャー企業のように資金の少ない会社では体力が持たないからだ。中橋氏が起業する際も、タイミングを見誤らないために慎重に検討したという。幸い、PCのリスティング広告は、業界的に認知度がすでに高いものだったので、モバイルのリスティング広告会社と説明すれば、伝わりやすい。2004年初旬がまさにチャンスだという確信があり、起業に踏み切ったという。
そして、事業計画書を作成に着手し、3年先までの綿密な計画内容をまとめていった。この綿密な事業計画書が、のちにベンチャーキャピタルから投資を受けるときに有利に働いたと中橋氏は語った。
「月に100回来る検索があるとして、80回は広告を返せる。そのうち10%がクリックされれば、クリック金額で売上の見込み計算ができます。こうして3年先まで、手探りのまま事業計画を立てました。振り返ってみるとずさんな点もありましたが、最初に作ったものがいまだに通用しています」
こうして2004年1月、創業メンバー3名が1万円ずつ出し、資本金3万円でサーチテリアとしてスタートした。創業メンバーはサービス開始の8月まで無給で仕事をしていたという。資本金3万円では給料も出ない。オフィスもレンタルオフィスを利用して、机1席いくらという形で3席借りることにした。
「サービス開始後、ビジネスがうまくまわり始めたのは良かったのですが、システム投資が増えていきました。すぐに借入の必要がありましたが、これが難しかった。『債務超過でしょう、担保あるの?』と、必ず聞かれました。信用がないので金利も高い。国民金融公庫で数百万、システム投資のために商工中金から数千万円を調達しました」
1つの借入をまとめるのに数カ月かかり、借入金の負担も無視できない。永続的な起業を目指しているのに、管理体制の向上にコストをかけられないジレンマが生じた。売上に直結することしかお金をかけられない状態が続き、これを解決するには上場を目指して体力を付けたほうがいいと判断し、直接金融へと方向転換することになった。
「創業当初から、ベンチャーキャピタル20〜30社から提案を受けていました。そこから話し合いで信頼できそうなNIF-SMBC、ネットエイジキャピタルの2社に絞り、増資を求めました。上場して市場で資金調達を目指すことにして、その結果、資本金も増えて借金も返済し、管理部門にコストをかけられるようになっていきました」
現在は資本金増強により、借金は完済している。金利負担が減って、利益に貢献できている。管理部門にコストがかけられるようになったため、会社の基礎となる管理体制を整えることができた。上場準備のプロセスで会社組織がしかるべき体制に向かって整えられていくのを実感できると中橋氏はいう。
「開発などの投資案件も、これまでは実施まで数カ月と長期になっていたのが、即座に対応できるようになりました。資本金が3億になってからは、取引開始時や採用時などに、メリットを感じられます」(中橋氏)。
サーチテリアのコアコンピタンスは、ジャンル別モバイル広告のデータベースにある。モバイルリスティングのノウハウも溜まってきている。今後の課題はマッチングの多様化だと中橋氏は語る。
「ページの内容に合わせたコンテンツを表示し、さらに人、行動、場所、時間に合った広告を配信していくことも可能になります。ニーズがあれば、テーマを持つサイトに合った広告を掲載していくことも考えています。また、課金方法や露出形態についても、ニーズがあれば多様化していきたい。これまで蓄積してきたノウハウを元に、モバイルSEMを海外に広げていくことも視野に入れています」
中橋氏は、モバイル広告市場の規模を2006年で8%。2007年では16%になり、2008年には32%に上ると予測。今後の市場拡大を十分に期待できるという。「トップシェアを取っていくことが今後の課題」だと結んだ。
ネットエイジキャピタルパートナーズ取締役の金子陽三氏
続いて、ネットエイジキャピタルパートナーズの金子氏が登壇した。ネットエイジは、ベンチャーキャピタルをベースとして、企業の成長を総合的に支援する事業を行っており、サーチテリアが創業当時に利用したレンタルオフィスも、ネットエイジの事業ドメインの1つである「クロスコープ」が運営しているものだ。
「ネットエイジは、ベンチャー起業が大好きな人間の集まり。お金だけを出す会社ではなく、経営リソース、人材採用、システム開発、オフィスなど、新しいサービスを立ち上げるときに必要なすべてを支援しています」(金子氏)。
金子氏は、ネットエイジキャピタルのコアコンピタンスとして「インターネットビジネスにフォーカスした投資」「新規に事業を起こすための支援」「事業経験豊富な投資チーム」「業界でのネットワーク」「魅力的なポートフォリオ企業群」を挙げる。金子氏をはじめとした6名チームの4名がベンチャー企業経営の経験者であり、他社がリーチしていないアーリーステージの企業を好んでアクセスしている。投資額は、3000万〜1億円。起業したばかりの企業への投資は、3000〜5000万円から始まり、継続的に資金支援をしているという。
「投資決定には1〜2カ月かけて検討します。流れとしては、まず経営者にプレゼンをしてもらい、それを担当者ベースである程度判断し、案件会議で報告してシェアして、さらに調査します。ビジネス内容、人材、財務状況技術情報を比較していきますが、投資先の99%は赤字で資産がないのが実情です。だから財務状況は重視ではなく、経営者のバックグラウンド、技術面、特許の有無などをヒアリングして検討していきます。そして取締役の就任も条件の1つ。取締役会議に出席し、決議を聞くだけでなく、ともに何が問題で何がしたいか、何が苦しいか、話し合うためです。提携、採用などは経営者の仕事ですが、どういう答えがあるのか、過去の会社経験から情報提供し、きっかけを作るのは我々の仕事です」(金子氏)
投資の意思決定までのコミットメントは1〜2カ月。その間、どこまで信頼関係を築けるか、企業が上場するまでの約5〜7年間に一緒に成功を信じてやっていけるのか、という点がクリティカルなポイントだと金子氏。中でも上場までの7年間を信じられるかが一番重要なポイントだと考えているという。上場するまで最低でも3億円は必要となる。その調達する作業を経営者に使ってほしくないと金子氏は力説した。経営者の仕事だが、資金調達は仕事の一部であってすべてではない。土台作りをしっかりできるような環境を作ることが大切だという。
「いつも気にしているのが、経営陣、市場性、将来的にビジネスが大きくなっていけるかの3つ。具体的に実現する方法を知っているか、どういうプランを描いているか。それがしっくりこないときは、投資をしたいと思うことは少ないです。ネットバブル時代には、さまざまな職種がビジネス参入してきました。チャレンジ自体は悪くないが、市場やお客さんをよく知っている人の方が立ち上がりも早く、市場の変化を嗅ぎ分けられるものです」(金子氏)。
また、金子氏はベンチャーキャピタリストとして企業家に考えてほしいことをいくつか挙げた。まずは「自分のビジネスは何で、どこが強く、どのくらい大きくなるのか」。そして「株より銀行で借りたほうが良くないか、わざわざ投資を受けてまで上場する必要があるのか」。この2点を見極めることが大切だと説く。
「忘れがちですが、重要なポイントがいくつかあります。まず、起業に時間をかけないこと。そして会社を起業すると資金繰りが大変になるが、大切なのは利益を生むことであり、経営者はそのために何をするか知恵を絞って具現的な仕組みを考えることです。資金調達に時間をかけてほしくありません」(金子氏)
金子氏は、資金調達について何度も注意を促し、「お金は誰から集めるかが重要で、決して無色透明ではありません。一緒に仕事をすることで大きく成長することもあるので、誰からお金を集めるかにフォーカスすることが大切」とした。
続いて行われたトークセッションでは、セミナー参加者からの質問を交えて、CNET Japan編集長の西田隆一が両氏に起業とベンチャーに関するさまざまな話題を投げかけていった。
金子氏:六本木、赤坂、本郷の3拠点にオフィスがあり、現在約100社の創業間もないベンチャー企業が利用していて、カオスなオフィスです(笑)。セグメントを切って、いろいろな会社が入っています。
金子氏:講演の中でもお話しましたが「経営陣」、「市場性」、「将来的にビジネスが大きくなっていけるか」という点が投資決定のポイントになります。サーチテリアは、この3つのポイントがパーフェクトにそろっていました。特に事業計画書がすばらしく、リスティング広告のビジネスを知り尽くしていて、具体的なやり方ができており、特許をとっている。そしてこのビジネスが世界に広がってもおかしくない。バランスがとれていたのです。
金子氏:メンバーのモチベーションを上げるには何が必要かといった悩みに対して、ささやかながら支援できればと考えています。たとえば、組織制度を作っていくのは初めての経験だと思いますが、迎えうる課題を乗り越えていくために必要な情報を提供することも、ささやかな動きです。
金子氏:信頼関係が築ける人かどうかです。
金子氏:組織が大きくなる上で重要なのはカルチャーとシステムですが、特に社員の元気ややる気を生み出すカルチャーを作るのに努力しています。カルチャーを昇給や、能力の向上につなげる仕組みを作っていくことが大切だと思います。
中橋氏:まずベンチャーキャピタルを入れるべきかを相談しました。金子さんも投資家ですけど、その頃は僕にとってはクロスコープの大家さんでした。だから気軽に話ができました。最近では、執行役員制度など質問しました。
中橋氏:「いてよかった」というより、いないと困りますね。
金子氏:起業家の方にとって我々は、まず意見をぶつけてみる相手です。聞く場所になっているのではないでしょうか。
中橋氏:すごくたくさんいますよ。PCと比べればまだ少ないですが、何百万というユーザーがいます。PCは複数ワードの検索が増えていますが、携帯はワンワードが多いのが特徴です。これから複数ワードの検索も増えていくかもしれませんが。クエリが複雑化したら、それに合った広告に活用していけばいいと思っています。
中橋氏:20円から入札競争されています。競争して日々上がっていくのですが、平均で40円くらいです。
中橋氏:公式サイトのトラフィックシェアは、勝手サイトが延びています。ニーズはありますが、公式サイトを中心とした検索がどれだけあるでしょう。auで勝手サイトが延びていくのは僕らにとってもプラスになりますし。グーグルのよさはページランクです。
携帯はリンクを張り合わないので、リンクの数では良いサイトかというのがわかりません。友達同士の他愛のない日記が上に出ることも多いのです。公式サイトのページとは違い、勝手サイトでは良さが発揮できません。もう一歩新しいロジックが必要ではないかと思います。
中橋氏:自信はあります。モバイル市場は小さくてPCを追い抜くことは難しいです。モバイル広告は、手間をかけずに広告を出せるしくみを構築できるかがポイントです。サーチテリアでは、キーワードをカテゴリーでくくってセットで管理するしくみを採用しているので、広告主の方から管理が楽だといわれる仕組みになっています。
中橋氏:うちは入札競争があるから、詳しい事業計画も書けます。ほかでは特許の関係で定額にて行っていますですからまったく脅威は感じません。
中橋氏:創業時のモバイル広告は、出会い、エステ、金融が占めていました。他の広告主が引き気味なこともあったようです。現在では媒体が増えてきて、コマースも伸びている。PCで広まっていてわかりやすいせいだと思います。
中橋氏:米国のネットにおけるSEMのシェアを基準にして、その数年遅れが日本のPC、さらにその数年遅れがモバイルです。その数値を低めに設定して予測したのが32%という数値です。
中橋氏:具体的な数字はいえませんが、トップシェアを目指しています。
中橋氏:厳しくガイドライン設けて、代理店に審査をしてもらっています。出したくない広告はジャンル別にブロックできるようにしています。
コメント ( 0 )
※スパムコメントを防ぐため、コメント投稿時に画像認証が必要です。
※編集部またはブロガーにより記事が削除された場合、コメント機能を停止した場合は、投稿したコメントは削除されます。
※編集部またはブロガーがコメントを不適切と判断した場合に、コメントを削除する場合があります。あらかじめご了承ください。