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 サイボウズが7月3日、東京証券取引所市場第一部へ指定されることが決まった。1997年の創業から、2000年の東証マザーズ上場、2002年の東証二部への市場変更を経て、9年で一部に指定されたことになる。

 そのサイボウズは、ウィルコムと提携して2006年内にモバイル通信事業に参入する。ウィルコムの回線と端末を利用するMVNO(仮想移動体サービス事業者)と呼ばれる形態で、音声通話およびインターネット接続サービスを提供する。自社のグループウェアである「Office 6」の顧客を主なターゲットとしており、携帯端末からでも安全にOffice 6にアクセスできることを売り込む。

 すでに10社ほどを対象にテストサービスを始めており、「グループウェア、特にスケジュール機能を携帯端末から利用できるという便利さを実感してもらっている」という。

 携帯電話業界は今、ソフトバンクのボーダフォン買収や2006年秋からの番号ポータビリティ制度(契約する事業者を変えても同じ電話番号を使い続けられる制度)の導入、さらにはアイピーモバイルやイー・アクセス子会社のイー・モバイルの参入など、大きな変化の時期を迎えている。

 このような時期にモバイル事業に参入するのは大きなチャレンジのように見えるが、代表取締役社長の青野慶久氏は「MVNOは利益の出やすい事業だ」と自信を見せる。サイボウズはどういった点に勝機を見いだしているのか、青野氏に話を聞いた。

--数ある携帯電話事業者の中から、ウィルコムをパートナーとして選んだ理由は。

青野慶久氏

  我々は複数の事業者にお話をしたのですが、その中で一番早く決断をいただけたというのが最も大きな理由です。昨年の秋ごろから話をはじめて、3月にはサービスを発表できる段階になりました。

 携帯電話事業者はこれまであまり回線を企業に卸すということをしていなかったので、勇気の要る決断だと思います。その中で、ウィルコムはもともと日本通信にも回線を販売していた実績もあり、我々についても「応援したい」ということで、早く決断をいただけました。

 また、ウィルコムには強い法人営業部隊がいるので、法人向けサービスを提供する上で心強いということもあります。

--ウィルコム以外の通信事業者を今後採用する可能性は。

 他社とは継続して交渉しています。今年中にウィルコムの回線を使って本格的なサービスを開始する予定ですが、そのときには通信事業者が増えている可能性もあります。

--複数の通信事業者でサービスを提供するというのは、運営面の負荷が大きくなりませんか。

 当社の子会社であるインフォニックスは複数の通信事業者の課金代行などを手がけています。ですので、システムや運営の面で特に問題はありません。ただ、各社の端末向けにアプリケーションを開発するとなると、あまり手広くはできないというのは事実ですね。機種が増えることに負荷が上がりますから。

--テストサービスでは、端末のブラウザからサイボウズのグループウェアであるOffice 6にアクセスする形でしょうか。

 はい。今回のテストサービスはアプリは提供せず、ブラウザからアクセスしてもらう形になります。

--2006年秋には契約する携帯電話事業者を変更しても同じ電話番号を使い続けられる番号ポータビリティ制度が始まります。また、携帯電話事業に新規参入する企業も出てきます。年末のサービス開始はこういった動きを見据えたものでしょうか。

 そうですね。ただ、できるだけ早く始めようとしたら、この時期になったというほうが大きいです。

--テストサービスを行う狙いは。

 まず、モバイル通信サービスを提供する際のオペレーションを一通り体験して、ノウハウを蓄えようと考えています。我々には、法人向けに電話を売ることでどんなことが起こるかということがまだ見えていない。それから、顧客のニーズを探りたいということもあります。ですので、今回は参加企業も10社程度に限定しています。

--この10社はどのように選んだのですか。

 既存ユーザーの中で、今まで強いお付き合いがあって、きちんとフィードバックをいただけそうな企業、しかも携帯電話でグループウェアをまだ使っていないところをこちらから選ばせていただきました。

 先進ユーザーだけれども、携帯電話を活用していない企業にお声がけをしました。携帯電話を使っていない理由にはいろいろあって、個人に携帯電話を支給することをためらっているとか、導入する時間がないといったことなどがあります。

--本サービスの時点ではアプリも提供していくのでしょうか。

 その可能性が高いですね。

 日本は携帯電話のメールが発達しているので、ユーザーは本当は外出時にも会社のメールアドレスでメールをやり取りしたいと思っています。現状ではそれを実現するには手間がかかるので、もっと簡単にできるようにしたい。

 それから、やはりスケジュール機能ですね。端末を開いた瞬間に自分や上司のスケジュールがわかるようになれば面白いと思います。そうすれば、営業の人が自分の携帯電話を開いて、取引先で「次は○○日に部長を連れて来ます」といったことが言えますからね。

--ご自身が一番欲しいのはどんな機能ですか。

 私はやはりスケジュールのチェックですね。今はメールで自分の携帯電話に予定を送るようにしているのですが、端末を開けばすぐに今週のスケジュールと来週のスケジュールがわかるようにしておきたいですね。

 あとは、feedpathと連携したいと思っています。携帯電話は緊急なときだけではなく、空き時間を潰すために使うことも結構ありますよね。「今見たいから端末を開く」のではなく、「時間が空いているから開く」ということもあると思うんです。空き時間にフィードパスを使って、ニュースや自分がいつもチェックしている人のブログが読めると快適ですね。

--そういったサービスはいつごろ実現するのでしょう。

 実はあまり長期的な計画はまだ描いていないんです。できるだけ早くサービスを始めたいと思いますが、どういったサービスをどの順番で出していくかというのは、ニーズを見ながら決めたいと思っています。

 ただ、モバイル通信電話サービスを始めることは決まっていますので、グループ会社はみな対応できる体制をとっています。少なくとも、2年以内には今言ったようなサービスは一通り用意しておきたいですね。

--将来的には、独自端末も作っていく計画ですよね。

 やりたいですね。画面の大きさや使い勝手を考えると、ちょっと大きめの物が欲しいなと思ったりもしています。サービス開始から2年ぐらいで実現したいと考えています。

--経営的な視点で考えると、モバイル通信事業で毎月ある程度決まった売り上げが立つというのは大きいのではないでしょうか。

 はい、ありがたいです。グループウェアの場合、保守売上が全体に占める割合は2割程度なんです。ですので、新規契約が減ると、そのまま売り上げが減ってしまう。もう少し事業の安定性が欲しいというのはありました。

--どの程度の規模の事業に育つと考えていますか。

 上を見ると、結構すごいですね。サイボウズ単体の売上高は2006年3月期でで33億2000万円ですが、その何倍かにはすぐになってしまいます。

  例えば、1人あたりの利用料金が月額5000円とします。そして、いまのサイボウズユーザーの5%にあたる10万人が加入したとすると、月間5億円、年間60億円の売上規模になる。ただ、利益率はソフトウェアよりも低くなります。

--料金は既存の通信事業者よりも高くなるということでしたが、どの程度ならユーザーの許容範囲だと考えていますか。

 付加サービスの対価と考えると、月額500〜1000円程度ではないかと考えています。

--有料アプリを1〜2個契約したという感覚ですね。

 そうですね。それでビジネス的な使い方ができるのであれば、費用対効果で十分に元を取れると感じてもらえると思います。

--利益率が下がる点については、懸念はしていませんか。

 いまインフォニックスが在日のブラジル人向けに携帯電話サービスを提供しているのですが、ここから利益を出すコツがあることが見えてきているんです。例えば、ブラジル人の場合、クリスマスのシーズンになると長距離電話が多くなる。そこでこういったシーズンには通話量を計算しながら、魅力的な料金を設定する。この辺りにノウハウがありますね。契約者は2万人程度ですが、黒字化しています。料金設定を間違えなければ赤字にはなりません。

 ただ、法人でどういった通話特性があるのかという点については我々がデータをまだ持っていないので、テストサービスの中で探っていきます。

--サイボウズはモバイル事業以外にも、いろいろな新規事業を手がけていますが、どういった企業を目指しているのでしょうか。

青野慶久氏

 いまは「情報共有」という言葉に強くこだわっています。人がお互いに情報を出し合って賢くなっていく。また、夢を語ればお互いにモチベーションも上がりますし、励まし合うこともできる。そういう情報共有の良さを広げていきたいと考えています。

 これは日本の文化だとも思っているんです。米国や欧州は、サイボウズのようなウェブグループウェアはあまり普及していない。欧米が個の文化であるのに対して、日本にはチームワークの文化がある。これをもっと広めたいんです。1人で働くよりみんなで働いたほうが面白いということですね。

 ですので、これまではソフトを手がけていましたが、必要であればハードウェアもやります。通信だけでなくシステムの運用やコンサルティング、インフラもやる。とにかく、情報共有でみんなチームワークを発揮しようぜ、ということですね。これを広めるためのものは、全部私たちの守備範囲です。

--いま一番注目している技術は。

 フィードにはかなり注目しています。最初に見たときには腰が抜けるほど感動しました。

 最初は、米国でブログの存在を知って、その時にRDFを見たんです。「自動的に文章のサマリーが送られてくるので、これをフィードリーダーで読めばサイトを見に行かなくてもいいんだ」と説明されて、びっくりしましたね。だって、ウェブサイトは見に行くものだと思っていたら、見に行かなくていいと言われたわけですから。情報の流れが逆流しているわけです。これは世の中が変わると思いました。

--Office 6のデータをフィードするということもあり得るのでしょうか。

 具体的なことはまだ申し上げられませんが、視野には入れています。ただ、ちょっと難しいのは、グループウェアのデータは基本的にすべて認証がかかっているということです。これをどう扱うかというポリシーをきちんと作らないといけません。

--事業全体の中で、モバイルはどう位置付けられるのでしょう。

 今までは、どちらかというとPCからアクセスすることを前提にサービスを設計していて、モバイルはオプションでした。しかし携帯端末がもっとインテリジェントになり、またフィードなどを使ってちょっとした情報がどんどん流通するようになれば、PCと携帯端末を並列で扱わないといけないと思っています。携帯端末が本当の意味での情報端末になるということですね。どこにいても同じように、同じような利便性が受けられるようにしたいと思っています。

--ユーザーから見て、サイボウズのモバイルサービスを使う一番のメリットはどこにありますか。

 ワンストップで申し込めて、請求も一括になるので、手間が省けるという点が大きいと思います。それから、端末に搭載されるアプリケーションの部分です。モバイルアプリは端末に依存しますので、我々が保証している端末以外では動かないことになります。

--加入目標数は初年度2〜3万人ということですが、ずいぶん控えめですね。

 まずはいまのサイボウズユーザーの1%程度を目標にしているということです。ただ、これでも1人あたりの利用料金が月額5000円なら月間1億円、年間12億円の売り上げになります。これだけで、サイボウズ単体の売り上げを3割ぐらい伸ばす効果がある。

 利益面については、2万ユーザーを取れれば利益が出せると踏んでいます。初年度の黒字は難しいかもしれませんが、2年目からは黒字にしていくつもりです。

--利益は出やすい事業だということですか。

 私たちにとってはそうです。というのは、初期投資が非常に安いからです。すでにグループウェアがありますし、運用システムや課金システムもすでに持っているので、初期投資が少ない。自社でこれから作らなければならないことがほとんどないので、我々にとっては黒字にしやすいビジネスです。

--子会社化した企業の技術やサービスを利用することを考えると、ずいぶん前からいろいろ準備されていたということですね。

 インフォニックスはやはり魅力的でしたね。インフォニックスは日系のブラジル人を中心にビジネスをしているわけですが、日系ブラジル人は日本に数十万人しかいないんです。そうすると、やはり事業規模に限界がある。しかしサイボウズと組むと、規模が数十倍に膨らんでくる。ですので、お互いにメリットがあったということです。

--営業体制は。

 自社で営業部隊を設ける予定ですが、先日出資したレカムなどと一緒にやっていくと思います。また、パートナー経由で販売する可能性もあります。

 当初のターゲットは既存のオフィスユーザーです。現在の顧客である2万2000社のうち、携帯電話オプションを使っているのはわずか1割です。少なくとも、既存のユーザーが欲しがらないようなサービスでは話になりません。