田中好伸(編集部)
インフォテリアは7月25日、企業向けにブラウザだけで利用できるオンライン表計算ソフト「OnSheet」を10月から販売開始することを発表した。これにあわせて同日からベータ版を一般公開を開始した。
OnSheetは、香港のTeam and Concept(TnC)が開発・提供するオンライン表計算ソフト「EditGrid」と、インフォテリアの「ASTERIA」などのデータ連携技術を融合させたもので、SaaS(Software as a Service)形式で提供される。ユーザーは、Excelなどの従来の表計算ソフトのように、自分のPCにソフトをインストールせずに、ユーザー登録をするだけで利用できる。
「OnSheetはEnterprise 1.0から2.0への流れに沿ったもの」と説明する平野洋一郎氏
表計算を含むウェブベースのオンラインオフィスソフトといえば米Googleの「Google Docs & Spreadsheets」やマイクロソフトの「Microsoft Office Live」が有名だが、OnSheetも、そうした表計算ソフトサービスの基本的な機能である計算やグラフ機能を搭載し、それらのデータを複数のユーザーで共有できるようになっている。
しかしOnSheetには、財務管理システムや顧客管理システムなど企業内の既存の情報システムが取り扱う各種データと連携して、表計算のデータとして加工・分析できるという特徴がある。
これは、OnSheetのバックエンドでインフォテリアのデータ連携ソフト「ASTERIA WARP」の「パイプライン」機能を活用したものだ。パイプラインを利用することで、企業内の情報システムにあるデータベース(DB)に格納されたデータをワークシートに呼び出したり、またワークシートのデータをDBに格納することができるのである。
TnC会長のDavid Lee氏
インフォテリアでは、データ連携ソフト「ASTERIA」(WARPを含む)シリーズを大企業を中心に360社に導入してきているが、その半数の企業が、Excelでデータを扱うための「Excelアダプタ」を導入しているという。このことから「企業の情報システムのデータを自分のPCで加工・分析したいというニーズに対応するために、OnSheetでは、既存の情報システムとのデータ連携を重視した」(インフォテリア社長兼CEOの平野洋一郎氏)。
「OnSheetは、ASTERIA WARPと、徹底的に日本語けにローカライズしたEditGridを組み合わせたものであり、情報システムのユーザーインターフェース、フロントエンドツールとして表計算ソフトを利用できる」(平野氏)
そうしたOnSheetでは、パイプラインで対応するDBは、Oracle、DB2、SQL Server、MySQL、PostgreSQLとなっている。対応するプロトコルはHTTP、SOAP、REST、FTP、POP、SMTPであり、FTPソフト、メールでのデータ連携が可能となっている。対応するデータ形式は、XML、CSV、固定長テキスト、Excelファイル、RSS、Atom。
またOnSheetではローカルのPCで作成された表計算ソフトのファイルとの互換性が重視されている。インポートできるファイル形式は、Excel(.xls)に加えて、CSV(.csv)、OpenDocument 1.0(.ods)、OpenOffice.org Calc 1.x(.sxc)、Gnumeric(.gnumeric)、Lotus 1-2-3(. 123)となっている。エクスポートできるファイル形式は、Excel(.xls)のほか、CSV(.csv)、HTML(.html)、PDF(.pdf)、OnSheet XML(.xml)、OpenDocument 1.0(.ods)、OpenOffice.org Calc 1.x(.sxc)、Gnumeric(.gnumeric)、TeX Source(.tex)などだ。
OnSheetは10月から正式に提供され、「具体的な金額はまだ発表できないが、月額課金という価格体系で提供される」(平野氏)としている。なお、個人ユーザーであれば、ユーザー登録をすれば無料で利用できる(パイプライン機能は利用できない)。
平野氏は、「Enterprise 1.0から2.0へという流れに沿ったものだ。重要なのは情報をリアルタイムに共有できるという点にある」とOnSheetがもたらすメリットを説明している。
インフォテリアでは、OnSheetの開発にあたって、EditGridの開発元であるTnCに対して、株式数の5%出資することも発表している。これは、「中長期的にOnSheetの開発を含めて、一緒にやっていきたいということから、話し合える環境を作っていきたい」(平野氏)という思いから、出資を決めたとしている。
TnCでは2006年1月からEditGridの開発を開始し、2006年4月にパブリックベータ版を公開している。これは「Google Docs & Spreadsheetsよりも2カ月早かった」(TnC会長のDavid Lee氏)という。そのEditGridについて、Salesforce.com会長のMarc Benioff氏は「私が見てきたなかで最高のオンライン表計算ソフト」と絶賛しているという。
ブラウザで操作できる「OnSheet」
米Red Herringが京都にて開催したカンファレンス「Red Herring Japan 2007」では、同社が選んだ優良ベンチャー企業のプレゼンテーションが次々と行われた。その優良ベンチャーの中には、「EditGrid」というオンライン表計算ソフトを提供する香港のTeam and Conceptsが含まれていた。
Team and Concetsの会長 David Lee氏が友人らと共に同社を立ち上げたのは2003年2月のこと。まだ香港大学の学生だった頃だ。最初に開発した製品はイベント管理システムで、同社の最初の顧客となったのは母校の香港大学だ。その後、同社はEditGridの開発を手がけ、2006年4月にパブリックベータ版を提供開始した。Googleが「Google Spreadsheets」を発表する2カ月前だ。そして2007年6月、同社は米ベンチャーキャピタルのWI Harperより125万ドルの資金調達を受ける。
「Microsoft Excelよりいいものを作る」とDavid Lee氏Lee氏はEditGridについて、「Microsoft Excelと同じようなものだが、もっと便利なものが作りたかった」と話す。オンラインでこのサービスを提供する利点について同氏は、「ネットワークアクセスさえあればどこでも使うことができ、リアルタイムでコラボレーションができる」と話す。また、APIを公開しており、ユーザーはさまざまなオンライン上のサービスとEditGridをマッシュアップしている。
例えば、ユーザーがEditGridを利用して一般に公開している表のひとつに、株価比較シートがある(下図参照)。これは、他のサイトで公開されている株価のAPIとEditGridをマッシュアップし、株価を随時アップデートして表示している。Lee氏は、「Bloombergの株価情報よりこの表を見る人もいるほど人気のある表だ」と話す。
この株価の表は、所有者以外に編集権限は与えられていないが、EditGridは複数人数で編集作業することもできる。複数ユーザーが同時に編集している場合も、変更された部分はすぐに全員の表計算上に反映される。また、他人に編集されたくない部分は、セルをブロック指定して他人が編集できないよう設定することも可能だ。編集履歴では、セル単位で誰が編集したかがわかるようになっている。
2007年2月にEditGridはベータ版から正式版へと移行した。正式版の発表と同時に、これまでの一般ユーザー向けの無料版に加え、ハイエンドユーザー向けの有料版も提供開始した。有料版では、セキュリティ向上のための暗号化機能やアカウント管理機能などが備わっており、月額5ドルで提供している。
有料版は、EditGridから直接申し込むことも可能だが、同社ではパートナー各社にEditGridを提供し、パートナーを通じた販売に力を入れている。パートナーには、オンデマンドプラットフォーム企業のSalesforce.comや、オンラインオフィスソフトを提供するThinkFree、オンラインコラボレーションツールを提供するCentral Desktopなどがいる。日本初のパートナーとしては、7月25日にインフォテリアとの協業を発表したばかりだ。インフォテリアでは、「OnSheet」としてこのサービスを提供する。
Lee氏が最初に意識したMicrosoft Excelはもちろん、同様のサービスはGoogle Spreadsheetなども存在するなどライバルは多い。こうしたライバル企業に脅威を感じないのかとの問いにLee氏は、「われわれは表計算という分野にフォーカスしている。多くの分野に手を広げるのではなく、ひとつのことに注力するからこそ最高級品を作ることができる」と強気な姿勢を見せた。今後はMicrosoft Excelとリアルタイムコラボレーションができるような機能や、モバイル機能も強化するという。「われわれは表計算分野でイノベーションを続ける。イノベーションを続けることで勝つ」(Lee氏)
Lee氏は、自分を含め創業仲間のことを「単なるオタク集団だ」と笑う。だがその笑いは、オタクだからこそこの分野では決して他に負けないという自信にあふれているようにも見えた。
EditGridの1ユーザーが作った株価比較表フリービットは7月25日、完全子会社化を目的としてドリーム・トレイン・インターネット(DTI)の普通株式のすべてを公開買い付け(TOB)で取得すると発表した。
DTIの筆頭株主である東京電力との間では、同日付で「公開買付応募契約書」を締結しており、同契約に基づき同社の保有する対象者株式45844株(発行済株式総数の96.19%)のすべてについて、原則としてTOBに応募する旨の同意を得ているという。
DTIは、ネット草創期の1995年に三菱電機の関連会社として設立され、インターネット接続サービスとサポートを提供している。現在では東京電力グループとして、東京電力の光ファイバー事業と積極的な連携を行い、2007年3月末時点で約880万契約の光ファイバーユーザーを獲得している。
フリービットでは、ユビキタスネットワーク社会に向けた中期経営ビジョン「SiLK VISION 2010」を策定しており、ユビキタスネットワーク技術を活かしてISPがさまざまななネットワークサービスの媒介役となる「Ubiquitous HUB」構想がその中心となっている。DTIの完全子会社化で自ら顧客を持つISP事業を営むことで、新世代ISPの事業領域を確立する計画だ。
フリービットは、2007年6月のlivedoor接続サービス事業を会社分割により取得しており、今回のTOBも同戦略の一環として位置付けられている。DTIがフリービットのグループに加わることにより、ユビキタスネットワーク関連技術である「Emotion Link」をはじめとする独自技術を利用した新ユビキタスサービスをDTIユーザーに直接かつ速やかに提供することが可能となり、事業の進捗スピードが上がり、事業拡大と社会のユビキタス化に貢献できるとしている。
買付金額の総額は53億6374万8000円(1株11万7000円での見積額)で、8月31日から決済を開始する。TOB後、最初に開催される対象者の株主総会において、フリービットから過半数以上の取締役の派遣、監査役全員の派遣を行う。またDTIの代表取締役は、フリービットが指名する者が就任する予定。
エキサイトは7月25日、ブログサービス「エキサイトブログ」において、ブログ記事を正式エキサイトコンテンツへ投稿できる「ブログtoメディア」を開始した。
ブログtoメディアは、従来の市民記者制度のような、ライター単位で審査されるメディア作りとは異なり、ブログの1エントリー単位で投稿可能なブロガーのためのウェブメディアだ。ユーザーは、エキサイトブログの投稿画面からメディア制作に参加できるが、クォリティ維持のために、一度エキサイトスタッフによる審査を経て、情報価値が高いものだけが掲載される仕組みとなっている。
エキサイトでは、まず、女性向けポータルサイト「ウーマンエキサイト」で連載中のニュースサービス、「カワイイ!」からブログtoメディアを搭載する。
エキサイトブログのアカウントがあれば、特別な審査や申し込みをしなくても、コンテンツ制作への参加が可能。採用されたブログ投稿記事は、エキサイトトップページやウーマンエキサイトなどでも、そのほかのオフィシャルコンテンツ同様に配信される。また、採用された記事からは自身のブログへの誘導が可能となる。
インターリンクは7月25日、IPアドレスからドメイン名を調べることができる「逆引きサービス」をISP業界で初めて、固定IPアドレス提供サービスの利用ユーザーに対して、同日から無料で提供を開始したと発表した。
逆引きとは、IPアドレスからドメイン名を調べることをいい、ドメイン名からIPアドレスを調べることを「正引き」という。逆引きによってドメイン名を知ることで、メールサーバのセキュリティ管理への応用など、さまざまなメリットを得ることができる。
インターリンクはこれまで、中級以上のスキルを持つユーザーを中心に、自分のドメインに対して逆引きの設定を希望する声が数多くあったことから、固定IPアドレス提供サービスの利用ユーザーを対象に、有料でISPによる逆引きサービスを展開していた。
今回のサービス開始は、ユーザーのさらなる利便性向上を目的としたもの。無料で利用できるほか、専用のコントロールパネルよりユーザー自身で簡単に逆引き設定が可能であり、特に複数のサーバを運用するユーザーは、簡単かつ自由に逆引き名が設定できることで、サーバ運用の幅がさらに広がるというメリットがあるとしている。