中村知子(未来予想パートナー)
資金調達を完了した後は、株主向けのホウレンソウ(報告・連絡・相談)が当然必要です。それをいかに効率的に実施するのか、あわせて、その活動こそが最もCFOの真価を発揮する瞬間であるということを解説したいと思います。CFOの能力次第で株主の支援体制がかわってきます。ベンチャー企業にとっては特に重要視すべき活動をまとめます。
さて、無事に資金調達を完了させてからは本来の仕事になるわけです。まず、最初に何をしたらよいでしょうか。 これはあくまで一般的な事実(あくまで昨今の筆者のまわりにおける事実状況です)ですが、やはり株主としても出資をした直後というのは、なんらかの結果をだすことに熱くなっている傾向があります。言い換えると、時間がたってしまうと、ただの株主ということで接点をもつタイミングをなくしてしまうことが多いです。
したがって、出資実行直後には、なんらかの形で業務シナジーを求める、提案する、形にする、ということを最優先にすることをお勧めしています。ここで、成果がでないと、そのあとは、ただの1株主として事務的に対応される、ということが非常に多いのも事実です。株主も、未来永劫同じテンションで出資先を応援し続けるということは、そうそうないと思うことが重要です。
また、業務シナジー云々というと、あくまで営業担当者や現場に落としがちですが、最初だけはCFOが自ら営業担当者や責任者と同行して結果を求める姿勢をとるようにしてください。
CFOは株主に対して定常的に報告をしていくことが重要となります。報告することはその状況により千差万別ではありますが、基本としては以下の資料は確実に出揃えて報告に出向くということが大切なのではないでしょうか。
このあたりは細かく出そろえると膨大な量になりますが、出向く際にすべてそろえるということよりも、CFOの方の頭の中にすべてはいっていて口頭説明でもかまいません。仕事のできるCFOは当然数字だけでなく、営業現場のことや、主要取引先とのパイプなどあらゆることを掌握していることが多いです。つまり、株主への報告という場でありながら、ここでなんらかの仕事のヒントや顧客紹介などをとりつけることが多いのも事実です。できるCFOは、株主対応と称しながら、大局的には営業を実施しているということもいえるかもしれません。
ベンチャー企業は、日々刻々と変化することが多いです。よって、株主総会も年に1度ではなく、臨時株主総会を開催することも少なくはないと思います。その際には、主要株主には、予め説明に出向き、口頭で説明をすることが必要です。
これも確実にこなすことにより、信頼度は高まると思います。もちろん、総会の議案なので、株主にとっては、容易には承諾できない内容もあろうかと思いますが、その際にもできるだけの誠意をもって説明に出向き、コンセンサスをとってから総会に臨むようにすることが大切です。
全部で6回にわたり、資金調達をとりまくプレイヤーの役割を簡易に寄稿してまいりましたが、そもそもCFOとは、とりわけベンチャー企業にとってのCFOとは、どのような役割なのか…ということを最後にまとめたいと思います。
テクニカルなことはいろいろ記載できますが、結局のところ株主や、顧客からみたCFOは「この人がいるから安心である」という一言につきるのではないでしょうか。つまり、このCFOがいるから安心しているし、困ったことがあったらアラームを出してくれる、さらには、何かあったときにも適正に処理してくれる、という絶対的安心感を与えることが必要だと思います。みなさんの会社のCFOはそのような人材でしょうか、すべてが完璧な人はいませんが安心感をあたえる人材を据えている会社は、おそらく資金調達は成功していくのではないかと思います。
ベンチャー企業は上場するかしないかに限らず、その成長過程においては管理系のスペシャリストが必ず必要なタイミングが訪れます。それを見越して前段階から仕組み化しておくことを指南するようにしていますが、最終的には人材がキーとなることは言うまでもありません。つまり、資金調達をつかさどるのは、ベンチャー企業の人材調達能力が最重要ポイントなのではないでしょうか?という疑問をなげかけることでこのコラムを終了としたいと思います。
会計事務所での様々な業種の会計・税務コンサルティングの実務経験。その後、転職を機にIPOに向けた管理部門整備の経験を経て、現在、未来予想株式会社にてベンチャー・中小企業向けの経営企画・管理・財務部門のコンサルティングならびに実務支援の専門家として活動中。
未来予想の主なベンチャー支援向けサービス:「EIP型マネジメントASP Miraizβ(登録無料)」、資金調達支援サイト「資金調達.bz」(登録無料)
中村知子(未来予想パートナー)
ファイナンスコーディネイトを考える時「お金を集める」という意味だけにとらわれがちです。しかし実際は、ファイナンスコーディネイトを成功させることで、営業力を飛躍的にアップさせることができます。つまり、CFO(財務責任者)であってもCMO(営業責任者)を凌駕する力を発揮することができるのです。
今回は、増資の失敗例と、増資の成功が事業の成功につながった例、または成功へのきっかけに導いた例を具体的なケースをもとにまとめたいと思います。
あるベンチャー企業は先進的な技術ノウハウを持ち、それをもとにして資金調達を実施していました。ところが、膨大な研究開発費用をすべて増資で対応するという方針だったため、経営陣が株式のシェアを確保するというバランスを考慮すると株式数が増え、時価総額が異常に高くなっていました。そのままいくつかのラウンドに分けて資金調達を重ねましたが、事業の進捗としてなかなか結果が出ず、売り上げも頭打ちとなり、だんだん時価総額に見合わない業績となっていきました。すると、今度はそれまでと違って資金が集まらなくなり、そのまま資金ショートしてしまったのです。
この例は、第3回のコラムでも紹介しましたが、あまりにも無謀な資本政策を立てていたということや、事業計画を実現できなかった場合の資本政策について一切検討していなかったことが問題となります。こうなってしまうと株価を下げることでしか資金が集まらず、その結果として、従来まで応援してくれていた株主を裏切ってしまう行為につながってしまい ます。
失敗につながったポイントが何かというと、やはり資本政策に対しての考えが浅かったことだと言えます。ただ、この件に限らず、ベンチャー企業は大局として時価総額を上げすぎたために調達不和を起こして失敗するケースがかなり多いので注意が必要です。
業務改善システムを作っているあるベンチャー企業では、そのシステム開発への投資(技術者の雇用にかかる運転資金)を補完する方法として第三者割当増資を実施しました。そのポイントは以下です。
このような手法により、このベンチャー企業では資金調達だけでなく合弁会社を連結子会社にし、売上高を連結にして年間数億円の売上高と数千万円の営業利益をつけることができました。さらには、その実績を広報で活用することにより、販売力も大幅にアップしました。一方、出資した上場企業側も、コストとなっていたコールセンターを自社から切り離し、さらに収益化する会社にすることができたということから非常に大きなメリットが出たわけです。
このケースでは、資金調達が年間数億円の売上高、多大な信用力、導入実績、というあらゆる角度での自社利益と他社利益を追求できた成功事例だといえます。
モバイルコンテンツの総合コンサルティング事業をしているあるベンチャー企業では、業容拡大とシステム投資を補完する方法として第三者割当増資を実施しました。そのポイントは以下です。
このケースでは、上場企業の持分適応会社になってその信用力を利用し、融資による資金調達を実施しています。増資だけで対応するのではなく、融資を絡め、かつ信用力を得て推進力を高める工夫をしたという成功事例だと言えます。
増資を検討するにあたっての今一度の確認事項として、以下の項目を再度検証してみることをお勧めいたします。
上記の3つは最重要チェック項目です。これらに自問自答を繰り返し、納得のいく割り当て先であれば、ぜひ増資をすることで貴社事業の発展に寄与することと思います。ただし、どれかに不安要素があると、その不安要素はいずれ数カ月先、もしくは1〜2年先に表面化してくることになりますので、妥協のないように資金調達活動をすることを念頭に入れていただきたいと思います。
会計事務所での様々な業種の会計・税務コンサルティングの実務経験。その後、転職を機にIPOに向けた管理部門整備の経験を経て、現在、未来予想株式会社にてベンチャー・中小企業向けの経営企画・管理・財務部門のコンサルティングならびに実務支援の専門家として活動中。
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中村知子(未来予想パートナー)
会社が増資するということは「お金が振り込まれれば完了」という単純なものではありません。あらかじめ会社法で定められた手続きを踏んでおく必要があるのです。今回は、増資するのに必要な最低限のチェック項目としての実務資料をまとめてみたいと思います。
第三者割当増資を実施すると株式が増えますので、既存株主にとっては議決権を希薄化するという意味合いも持ちます。よって、株主の同意を得ておく必要があるわけです。そこで必要となる資料や決議事項を順にまとめてみたいと思います。
中村知子(未来予想パートナー)
資本政策には、経営者の考え方が如実に反映されます。その計画と実績を見ることで、どのような経営手法をとっているかがよく分かります。資本政策表はあくまで計画+実績の表にすぎませんが、どのような考えでそれを策定したのかということを明確にすることに加え、そこに柔軟性を持たせることの重要さをまとめたいと思います。
まずは資本政策における最重点を以下にまとめたので、こちらをご覧ください。
そもそも資本政策というのは資金調達をふくめた株式シェアをまとめた計画になります。ただし、資金調達にあたっては結果的にどのような投資をしていくのか、そして、それによりどんな利益を生み出すのか、という計画があります。つまり、資本政策とはそれら全ての集大成になるはずなのです。
これらの項目は、資本政策における基本戦略に落とし込む部分といえますが、その数字的なものは1番目の投資とリターンに集約されることになります。これは、事業計画・資金繰り・資産計画などの項目がきちんと整合性のとれるものになっていることで成立します。
最も重要なのは2番目と3番目です。前回のコラムでも触れましたが、株主になる場合にはそれなりの調達コスト以上のメリットを勘案して支援いただいているわけですから、何らかの期待内容があるはずです。
「自分自身でぐいぐいひっぱっていくので、株主とは基本路線として『お金+信用力』というだけの関係でいく」のか、「株主というのはお金だけでなく、業務的にまきこんでいく関係」なのかは、経営トップの基本思想を入れていくべきだと思います。
これはどちらがよい、ということではありません。経営トップの考え方を色濃く出しておく方が、後々の株主との関係構築においても重要になるということなのです。
次に経営権の確保です。これはエゴ的にシェアを保持しておくべき、という意味合いではありません。経営支配者を明確にすることで、誰がこの会社のトップであるのか、そして、誰がこのトップを支えていく株主であるのか、ということを明確に出していきましょう。
学生ベンチャーによくある傾向ですが、創業者複数人のシェアが同じにすることで「誰もが暴走しない」ということを表現するつもりでも、それは結果的に、誰も責任をとらない、うまくいったら喧嘩別れする、今はただの仲良しクラブ--ということを表現してしまっているわけです。
つまり、ベンチャーは創業時に経営支配者の順番を明確に出しておくということが、重要ポイントではないでしょうか。
中村知子(未来予想パートナー)
資金調達はテクニカルな手法が多数あります。ただし、大きく分けると、お金を借りる(融資)、株式を売る(増資)--の2つに集約されるでしょう。実際の現場でも、この使い分けを協議することが最も重要な部分だと思っています。
今回は融資と増資の二大重要事項について、読者の方が調達活動を準備する際、少しでも参考になるようまとめてみたいと思います。
ここでいう資金調達コストというのは、金利ということだけではありません。お金を借りることだけが資金調達ではなく、株式を発行して増資をする場合にも見えない資金調達コストは発生するのです。
まず、お金を借りる場合はどうでしょう。2007年10月半ば時点では、短期プライムレートが1.875%、長期プライムレートでは2.45%(日本銀行 長・短期プライムレート(主要行)の推移)となっています。つまり、銀行からお金を借りる場合には、これに銀行の利益分がのった金利になるでしょう。
そこで借りられない場合には、もう少し金利は高いノンバンクから借りることになります。それでも借りられないのであれば、社長個人が消費者金融でお金を借りてそれを会社に貸し付ける形をとるのですが、そうすると、金利は15%くらいになるでしょうか。
ここでの判断は非常に簡単です。金利が安いほど資金調達コストが安い、つまり、コストが安いところから資金調達活動をすればいいわけです。
株式発行をする場合にはどうなのでしょうか。
お金は毎月返済しなくてもいいわけです。増資分の0.7%程度の登記費用がかかる程度です。しかし、実は株式を発行して増資の形をとった方が資金調達コストは高くつく傾向にあります。なぜなら、株主に対しては会社が存続する限り、毎年度配当を検討しなくてはなりません。
さらに、なんらかの利害関係において業務に影響を及ぼすことだってあります。その株主が実は反社会的勢力だった場合には取り返しがつきません、もはや貴社の社会的信用力が地に落ちるのは時間の問題でしょう。
さて、どうでしょうか。”コスト”だけを勘案するなら間違いなく、資金は「借りる」のが一番です。
※自己資本比率・ROE・ROA等のテクニカル論は説明をはぶき、考え方中心のまとめとしています。
さて、ここまでくると「資金調達=お金を借りるに偏った価値観を啓蒙してしまいましたが、株式を発行して増資する手法にも利点はあります。
ベンチャー企業にとって、資金調達にかかる「コスト」よりもメリットのあることは何なのでしょうか。それは事業の拡大です。つまるところ営業協力であり、信用力拡大です。これはお金を借りるという行為では得られないことです。
この部分を業務的な提携関係を結び、さらにそれ以上に近い関係性を保つために、資本関係を構築するということであれば、実は資金調達コストもそれほど高くつくことはないでしょう。コスト以上のメリットがとれるわけですからね。
ただし、業務提携がうまくいかなければ、それこそただのコスト高の調達をしたということに他なりませんので、その点は大いに気をつけましょう。
資金調達を検討する場合には「何にいくら使うので、いくらお金が必要」ということがまず前提にあります。これをもって最初に考えることは、より安い金利でお金を借りることです。その後、業務的に関係を構築できる相手先があったら、はじめて資本提携を考えればいいのです。すべてのケースをこの考え方にあてはめることは難しいと思いますが、本来はこうするべきだ、という形を認識することで、メリットとデメリットを浮き彫りにしやすくなります。
ベンチャーキャピタルなどは、お金は貸さないし、業務提携もできない、ということになってしまい、登場機会がなくなってしまいますが、ベンチャーキャピタルというのは、原則としてはリスクをもってベンチャー企業を応援し、仮にうまくいった時には思い切り売却して利潤をとるという商売を、主たる事業としています。(会社によってそれぞれポリシーが違いますので、ホールド型のVCの方はお見逃しください)
したがって、ベンチャーキャピタルへ支援要請をする場合にも、本質を理解した上で行動することで、よりよい関係が構築できるのではないかと思います。
読者の会社で、資金調達活動の検討段階において少しでもおかしいなと感じたところがあれば、今一度、その調達方法が自社にとってベストソリューションであるか否かを再考するという機会をつくってみてもよいのではないでしょうか。
会計事務所での様々な業種の会計・税務コンサルティングの実務経験。その後、転職を機にIPOに向けた管理部門整備の経験を経て、現在、未来予想株式会社にてベンチャー・中小企業向けの経営企画・管理・財務部門のコンサルティングならびに実務支援の専門家として活動中。
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