2007年6月12日 16時41分
永井美智子(編集部)
「技術を見せたいんです。ロボットは小型化が難しくて、大きさを2分の1にするにはコストが10倍かかると言われている。それを自分たちでやりたいと思ったんです」
そう言ってはにかんだように笑うのは、小型二足歩行ロボット「EMMA-U0A(エマ・ユーゼロエー)」を開発したROBO-Engineの二田政士氏だ。
EMMA-U0Aは全長22cm、重さはわずか850gの小型二足歩行ロボットだ。500mlのペットボトルより少し大きいくらいで、片手で簡単に持ち上げられる。「プロポ」と呼ばれるラジコンのコントローラで操作が可能。23カ所の関節のうち首を除く22カ所を自在に動かし、前後左右に歩くだけでなく、パンチを繰り出したり、倒れても1人で起き上がったりできる。
二田氏は千葉工業大学のロボットサークルで一緒にロボットの研究開発をしていた中野博文氏と、ロボット制作チームであるROBO-Engineを結成。二田氏の自宅である千葉県稲毛区の1Kマンションで、二足歩行ロボットの開発に取り組んでいる。
EMMA-U0A(写真左)と開発者したROBO-Engineの中野博文氏(中央)、二田政士氏(右)EMMA-U0Aの最大の特徴は、小さくても安定して機敏に動く点にある。同じ大きさのロボットを作ろうとすると、重心が安定せず倒れてしまったり、動きがぷるぷると震えてしまう場合が多いという。これを避けるために、ROBO-Engineではサーボモータと呼ばれる関節を動かすための部品を独自に改造した。本体はすべてアルミ製で、モータをアルミで固定することでモータの熱を体全体で逃がすようにし、モータが発火してしまうのを防いでいる。
ロボットを動作させるプログラムはC言語で書かれることが多いが、ROBO-Engineではアセンブリ言語を使っている。C言語に比べて参考資料が少なく、汎用性が低い難点があるものの、アセンブリ言語の場合、より高い精度でロボットの動きを制御できる。また、すべての関節を異なるスピードで動かすこともでき、ダンスなどの表現力が高まるという。このほか、少ないメモリでロボットを動かせる利点もある。EMMA-U0Aに搭載されているメモリはわずか256バイトだ。
二田氏の自宅に置かれた切削機械(上)と削りだした部品(下)。「切削機械がうるさくて眠れないので箱を作って入れました」(二田氏)EMMA-U0Aの部品は、すべて汎用品もしくは手作りによるものだ。二田氏の自宅マンションに切削機械を置き、数時間かけて金属を削り出す。本体のボディだけでなく、切削機械の部品までも自分たちで作ってしまう。
「アルミを削り出しているときは、家でご飯は食べれません。作業が終わって、炊飯器でご飯を炊いて蓋を開けたら中が銀色で、何だろうと思って見たらアルミの粉末が浮いていたこともあります。布団に入って何か痛いなぁと思ってみたら、アルミの粉が中に入り込んでいたり(笑)」(二田氏)
ロボットを動かすプログラムを書くアプリケーションも自分たちで作った。表計算ソフトのEXCELをベースにしたもので、それぞれのサーボモータの動作をパラメータを入力して指定する。モーションの形を1つ1つ作って、それをつなげることで一連の動作を実現している。
部品の塗装も自宅で手がける。「塗装をした日はガソリン臭がひどくて眠れません」(二田氏)と苦労は多い。
ROBO-Engineの法人化もこれからで、現在は中野氏が代表、二田氏が技術担当という位置づけだ。現在はアルバイトをしながら生計を立てている状態。それでも二足歩行ロボットを開発するのは、一言でいえば「楽しいから」、そして「ロボットが好き」だからだ。
EMMA-U0Aの開発は、ソフトウェアエンジニアだった中野氏が、2000年5月に青山学院大学で開発された二足歩行ロボット「Mk.5」を見て「自分も二足歩行ロボットが作りたい」と思い、千葉工業大学に入学したところから始まる。そこでロボットの技術指導をしていた二田氏と出会い、小型二足歩行ロボットの開発が始まった。
それまでいくつものロボット開発を手がけていた二田氏は2カ月ほどで基本的な設計を終え、半年ほどでEMMA-U0Aを作り上げた。その後、基盤などの小型化を進めて現在の形に至っている。
設計でこだわったのは、とにかく小さくすること。なるべく全体をスリムにするために、それぞれの部品の隙間ができないように調整している。「子どもが遊んで落としても怪我をしないようにしたい」(二田氏)と、将来的には600g程度にまで軽量化する考えだ。
本体の色は、あえて暖色系のオレンジを採用した。ロボットは青や黒などを使ってシャープな印象を持たせるものが多いが、「子どもや女性が見ても可愛いと思ってもらえるようにした」(二田氏)と配色にもこだわった。
EMMA-U0Aの販売にも乗り出す。当初は大手玩具メーカーなどに話を持っていったものの、「『すごい』とは言ってもらえるが、駆動部分が多いため、壊れた場合にどうするのかといった点や、大量生産できるかという点が課題になった」(中野氏)。そこで、販売代理店を通じて受注販売することにした。販売はユビキタスエンターテインメントが手がける。まずはサイト上で購入希望者を募り、部品の調達などができた段階で注文を受け付ける。価格は20万9790円(税込み)となる予定だ。
中野氏と二田氏に将来の夢を聞くと、「街を歩いていて、ふと見ると誰かが自分の作ったロボットを動かしている、というのを見たい。『あれ、俺が作ったやつじゃない?』となったら嬉しい」(二田氏)、「乗れるロボットを作ります。それから、仮想空間とロボットをつなげて、3D映像をロボットを使って動かせたり、ネットを経由させて遠隔操作できたりしたら面白いですね」(中野氏)という答えが返ってきた。ROBO-Engineの挑戦は、始まったばかりだ。
二田氏の自宅にはロボットを作るための道具が並ぶ。まさに「ガレージベンチャー」とでも呼ぶべき光景だ
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