2007年6月4日 14時56分
石田朝子(未来予想 パートナー)
ベンチャー企業、特に有志によって立ち上げられた創業ベンチャーにとっては、資金繰りというのは常についてまわる問題です。
この資金繰りというものは、甘くみると非常に危険な数値管理であり、時期を見誤ると取り返しのつかないことにもなりかねません。また、資金繰りというのは、通帳を眺めているだけでは全く把握できるものではありません。
そこで簡易ではありますが、如何なる管理をすればよいのかを、具体的なサンプルとともにまとめたいと思います。
財務諸表というのは、実際の資金の流れと連動しているようでいて、その感覚を狂わすものも盛り込まれています。
仮に損益計算書(P/L)ベースで利益が出ていたとしても、売掛金が来月入ってくる予定だったとしても、また、買掛金が少なかったとしても、安心できるものでしょうか──。
例えば、在庫を購入したとしてもそれを他勘定に振り替えることで、一見、月次収益に影響ないように見えることもしばしばあります。ただ、ここが落とし穴です。その他勘定されたもののお金もようようと流出していることがしばしばあります。
具体的には、社内の技術者を使ってソフトウエアをつくっている場合や、原盤ビジネスをしている場合の原盤製作費用などです。また、受託開発などしている会社などは、仕掛けという細目で顧客の検収があるまでは原価にあげないことが通例です。
よって、財務諸表はあくまで「表層」であって、その本質には諸々の重要指標が隠れています。そして、その中でも会社の“命綱”といえる資金繰りもその1つです。
事業計画を作る際には、P/Lで作り、必ずそれに伴った資金繰り計画表をつくらないといけないということは、第2回コラムで記載したかと思います。そして、その計画は、第5回コラムで記載した予実管理という作業を常に意識することの重要性も記載しました。
資金繰りの予実管理については損益計算や重要パラメータのトレースとは違うやり方をすることが一般的です。
サンプルとして用意した「資金繰り管理表」をご欄いただきたいのですが、資金繰り管理表というのは、事業計画をもとに作られています。そして、月初残高とその計画値による月末残高で構成されているわけです。つまり、資金繰り計画表に実績を入れる場合には、その月の計画に対してどれだけ差異が生じたか否かを記載することが重要です。
P/Lベースのトレースでは、「今月達成できなければ来月達成しよう」とか、「四半期単位では達成しよう」──といったリカバリー的な要素で多く使うことができますが、資金繰りは毎月単位でのトレースをしていってください。四半期でつじつまをあわせるというのは非常に危険な考え方になります。
そして、その月の差異を入れることで、翌月の月初の残高が自動的に変わります。従って、資金繰り計画表というのは、トレースすればするほど、その姿が変わってきます。
ベンチャー企業では営業キャッシュフロー以上の投資をするケースが多く、「あと○○ヶ月で資金がショートする計画である」ということをより正確につかむことが重要です。さらにその正確につかんだ数字をもとに資金調達行為をしたとしても、1カ月経過し実績を入れたことで、さらに状況が変化してくることもあるわけです。
資金繰り計画表とのトレース方法としては、
・今月は計画に比べて○○万円減らずに済んだ
・今月は計画に比べて○○万円増えるのが少なかった
・計画と同様の進捗をしたとしても、あと○○ヶ月で資金がショートしてしまう
・仮に売上が1円も上がらなかったとした場合に○○ヶ月の運転資金が残っている
──のようなトレースコメントを把握することで、計画的な資金管理ができるかと思います。
資金繰りはどんなベンチャー経営者にもついてまわることですので、用意周到な管理をして、本来の事業への意識集中をすることにより、事業の成長曲線を描くことが当方の希望ではありますが、仮にそれをないがしろにしてきてしまった経営者の方がいる場合には、今すぐにでも事業計画から資金繰り計画を作成し、その計画値に実績を入れてみて下さい。
最後に、私からの問いかけとしては、
「みなさんの会社は事業計画を達成した場合に、○○カ月後の資金残高の予定をすぐに把握できますか?」
──これが自信を持って回答できることは、実は最低レベルのことであり、仮に回答できない経営者がいたとしたら、従業員への責任を今一度再考してみて下さい。
6回にわたってコラムをまとめてきましたが、世間では監査法人の不祥事、上場審査が厳しくなり、内部統制法案の議論など、非常に管理面に対しての意識が強くなっています。みなさんの会社が今後企業として成長して、変化し、そして継続していくためには、世間でいうところの内部統制というニュースソースに振り回されずに、その内部統制、経営管理という本質を理解いただき、決して事務処理で終わらせない仕組みをしていただきたいと思います。
ベンチャー企業の管理業務を常に支援し続ける当社のミッションとしても、ぜひこの啓蒙活動を続けて参りたいと思います。本コラムを通じて、皆さんの会社の経営管理の意識が少しでも変わるきっかけになることを期待しています。
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