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2007年5月11日 21時21分

資本政策は非常にむずかしい?

石田朝子(未来予想 パートナー)

 前回は事業計画書類について記載しましたが、今回は資本政策についてまとめたいと思います。

 資本政策は何より、綿密な計画に基づいて立案することが重要です。事業計画というのはズレが生じる可能性を前提につくります。一方、資本政策は一度決めて走り出してしまったら後戻りができません。ですから、仮に計画が下ブレした際にも、それをリカバリーできる状態にしておくということが欠かせないのです。

 失敗が許されないものですから、まとめる際には有識者の意見やあらゆるケース(特に事業計画が下ブレしたケース)をも勘案してまとめることをお勧めいたします。

資本政策作成で勘案するもの

 資本政策を策定する際にはまず、大カテゴリをまとめます。

1.何に投資したいのか?(投資項目をまとめる)

2.お金以外の目的で外部株主を入れる可能性はあるか?(事業提携や安定株主作り)

3.経営権の確保はできているか?

 さて、ある程度概念的なものがまとまったら、あとは数字に落としていくだけです。とはいえ、どこから手をつけていけばいいのか分からないのが実態でしょう。ここで前回まとめた事業計画が生きてくるわけです。

 事業計画では、3年〜5年後の数値データがまとまっているはずです。その姿をイメージしてみましょう。5年後には何億円もの利益が出ているかもしれません。その時には株式上場できているでしょうか。もしできているというイメージがあるのであれば、株式上場するタイミングでどのくらいの時価総額がつきそうなのか──。

 ベンチャー企業にとって株式上場というのはゴールではないですが、中期的な目標として位置づけられるものではあります。そこで、例えば「上場するときに時価総額がいくらになっているのか?」というところを資本政策立案のスタートにしてみてはいかがでしょうか。

 昨今の株式上場では、会社のモデルと将来性(PER=株価収益率)を中心に時価総額が形成されることになります。(その一方、上場して1年も経つと将来性だけではなく、純資産倍率(PBR)や配当の可否といったところに投資家は目を移してきます)

 みなさんの会社の類似企業が株式市場でどのくらいのPERをつけていますか。高いところでは100倍以上もあるでしょうし、IT企業ですと、平均20倍〜40倍といったところが2007年5月時点の相場ではないでしょうか。仮にここで20倍とすれば、みなさんの計画にある数字で、上場直前期にあたる期の経常利益に30倍をかけた数字が時価総額ということになります。

 これらが決まると、あとはそこへ向けてさまざまなことが必要になってきます。

1.事業計画を達成するために投資する項目分の資金を調達する

2.経営陣や従業員へストックオプションを付与する

3.安定株主を入れて上場したときに社会的な信頼性をさらに高いものにする

4.経営陣をふくめた安定株主比率を高めておきたい

──などなどです。

 ここで、策定する際に注意が必要なのは、調達したい金額と、経営権の保持を両天秤にかけてしまい、上場もしていないのに、時価総額がかなり高くなってしまうということです。先ほど計算した上場時の時価総額より高くなってしまってはいけません。そうです、資金調達を派手にしてしまうと、経営権のシェアが低下してしまうからです。

 とはいえ、経営権を保持しながら調達したい金額を入れると、時価総額が異常に高くなってしまいます。さらに、経営権を保持する手法としてストックオプションを経営陣に付与したりする場合もあります。これもまた、時価総額を高めてしまいますね。

 このスパイラルを考えていくと、いきつく結論は、

・新株発行をして資金調達するのは最小限にとどめよう

・稼いだ利益から投資することを優先し、外部資本からの投資は最小限で行う

・自社のビジネスで利益を出すモデル、実績をつくることを最優先にする

──という考えに至ります。そうです、会社経営における基本中の基本のことです。

 資本政策を考える際には、今の事業モデルで収益実績が出ている、もしくはその可能性が高いというところで資金調達することを考られなければ、経営権の保持は捨てるべきなのです。そして、上場というところの時価総額を想定していないと、利益がついていかずに一生上場できません。仮に上場したとしても、それまで応援してくれた株主に損をさせることにもつながります。

 資本政策をあらゆる視点から網羅的に完成させるのには高いスキルと包括的な視点を持つ必要があります。ビジネスモデルが素晴らしいからお金が集まる、ベンチャーキャピタルがどんどんお金を出してくれる──。これらはもはや、時代遅れの考え方です。

 あくまで、投資してもらう代償に大切な会社の一部(株式)を売ってしまうという、非常に厳しい判断をして初めて、外部資本が入るということを忘れてはなりません。

 最後に、当社で資本政策のお手伝いをする際によく使うシートをご参照ください。

ダウンロードファイル:「資本政策シート

※サンプルファイルの中身は仮想のペットグッズサイトをまとめたもので実在しない数値データです。

 資本政策については、今回まとめたことを最低限勘案することで、みなさんの会社が後々つらい思いをすることは最小限に抑えられるでしょう。上場する際、「過去の資本政策の失敗が原因で上場できない」といったことのないよう、ベンチャー企業経営者の方々には、ぜひ慎重に進めていただきたいと思います。

 次回は会社運営の議事録の書き方や、その他実務ベースの参考情報を中心にまとめる予定です。

※本コラムは毎週金曜日(祝日を除く)に掲載します。

未来予想パートナー
石田朝子

1975年生まれ。埼玉県出身。教育者として中高一環教育機関での教師の経歴をもつ。その後、システム開発系のベンチャー企業への転身を機に人事労務を中心とした管理部門機能の経験を経て、現在、未来予想にて、ベンチャー企業向けの経営企画・管理・財務部門のコンサルティングならびに実務支援の専門家として活動をしている。

未来予想の主なベンチャー支援向けサービス:簡易内部統制診断「無料企業診断」、資金調達支援サイト「資金調達.bz」(登録無料)