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2007年10月26日 08時00分

株主が納得する資本政策は、明確さと柔軟性

中村知子(未来予想パートナー)

 資本政策には、経営者の考え方が如実に反映されます。その計画と実績を見ることで、どのような経営手法をとっているかがよく分かります。資本政策表はあくまで計画+実績の表にすぎませんが、どのような考えでそれを策定したのかということを明確にすることに加え、そこに柔軟性を持たせることの重要さをまとめたいと思います。

基本的な資本戦略を考える

 まずは資本政策における最重点を以下にまとめたので、こちらをご覧ください。

 そもそも資本政策というのは資金調達をふくめた株式シェアをまとめた計画になります。ただし、資金調達にあたっては結果的にどのような投資をしていくのか、そして、それによりどんな利益を生み出すのか、という計画があります。つまり、資本政策とはそれら全ての集大成になるはずなのです。

  • (1)何にどのくらい投資するのか(投資とリターン)
  • (2)株主に何を期待するのか(お金・業務・信用力)
  • (3)経営権の確保(本質的な経営支配者を明確に)

 これらの項目は、資本政策における基本戦略に落とし込む部分といえますが、その数字的なものは1番目の投資とリターンに集約されることになります。これは、事業計画・資金繰り・資産計画などの項目がきちんと整合性のとれるものになっていることで成立します。

 最も重要なのは2番目と3番目です。前回のコラムでも触れましたが、株主になる場合にはそれなりの調達コスト以上のメリットを勘案して支援いただいているわけですから、何らかの期待内容があるはずです。

 「自分自身でぐいぐいひっぱっていくので、株主とは基本路線として『お金+信用力』というだけの関係でいく」のか、「株主というのはお金だけでなく、業務的にまきこんでいく関係」なのかは、経営トップの基本思想を入れていくべきだと思います。

 これはどちらがよい、ということではありません。経営トップの考え方を色濃く出しておく方が、後々の株主との関係構築においても重要になるということなのです。

経営支配者を明確にする

 次に経営権の確保です。これはエゴ的にシェアを保持しておくべき、という意味合いではありません。経営支配者を明確にすることで、誰がこの会社のトップであるのか、そして、誰がこのトップを支えていく株主であるのか、ということを明確に出していきましょう。

 学生ベンチャーによくある傾向ですが、創業者複数人のシェアが同じにすることで「誰もが暴走しない」ということを表現するつもりでも、それは結果的に、誰も責任をとらない、うまくいったら喧嘩別れする、今はただの仲良しクラブ--ということを表現してしまっているわけです。

 つまり、ベンチャーは創業時に経営支配者の順番を明確に出しておくということが、重要ポイントではないでしょうか。

上場までの確認項目

 さて、ここで話を事務方向にシフトしたいと思います。

 資本政策ができあがったとしましょう。会社設立から、今日に至るまでの実績が表現され、さらに、将来に株式上場するまでがまとめられている資本政策ができたとします。その際に最低限確認したいのが以下のチェック項目です。

  • 各調達ラウンドでの調達額が資金繰り計画とリンクしているか
  • 各調達ラウンドでのPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)が事業計画とリンクして計算されていて、その数字が適正か否か
  • 上場時のPERとPBRが事業計画とリンクして計算されていて、その数字が適正か否か
  • 潜在株は、発行株式全体の10%未満(最大でも15%未満)程度になっているか
  • 上場している類似企業と比較してPERとPBRが高すぎになっていないか(低すぎるくらいがちょうどよい)

 箇条書きにしましたが、これらを抑えておけば、おかしな数字にはならないはずです。

 PERとPBRは一般的な株価と比べて割高か割安かを測る指標ではあります。これは上場していなくても同様に計算ができます(※)。

 ただし、それが高いか安いかはその業種業容により変動しますので、自社の事業スタイルと類似する企業で上場している会社を2〜3ピックアップしておき、その株価に正当性を持たせるのがよいでしょう。

資本政策は柔軟に補正する

 事業計画に変化が起これば、資本政策も見直さなければならないわけですが、株主が前の段階までさかのぼって変えることはできません。つまり、過去は変えられないという部分もあることになります。

 既存株主は「計画上、このくらいの売り上げと利益が出るということを前提に、この株価で投資をしたのに、こんな実績では、この株価は高すぎた」と後悔することでしょう、経営者としては屈辱的な瞬間です。

 ただ、これだけではすみません。なぜなら、次に資金調達する際には、今の実績値からしてどう考えても高すぎる株価で調達をしなくてはならなくなるからです。無論、安くしてもかまいませんが、そこには「既存株主が許してくれれば・・・」という条件が付くことになります。会社の新株の価格は、既存株主の了承が必要なのです。(新株の発行決議は株主総会決議になります)

 資本政策については、常に計画がうまくいくことを前提にすることよりもむしろ、万が一計画がうまくいかなくてもそのタイミングから資本政策を補正することができるようにしておくということが重要です。この機会に自社の資本政策を見直す機会を持ってみてはいかがでしょうか。

※非上場企業の株価(企業価値)というのは世界的にも研究されている一方で永遠のテーマになっていくことと思います。現時点では、事業計画からDCF法で実施するか、純資産法で実施するか、類似企業比較法で実施するか、それらの間をとって妥当性を説明することが一般的です。

未来予想パートナー
中村知子

会計事務所での様々な業種の会計・税務コンサルティングの実務経験。その後、転職を機にIPOに向けた管理部門整備の経験を経て、現在、未来予想株式会社にてベンチャー・中小企業向けの経営企画・管理・財務部門のコンサルティングならびに実務支援の専門家として活動中。


未来予想の主なベンチャー支援向けサービス:「EIP型マネジメントASP Miraizβ(登録無料)」、資金調達支援サイト「資金調達.bz」(登録無料)