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 ビジネスを構成する要素「人・モノ・金」。企業が連携する時、自社の現状を見きわめた上で「今、最優先で必要なもの」を適切に判断し、相手を探すのは意外と難しい。コーポレートベンチャーキャピタルを特集する第3回目は、自社の見きわめを冷静に行い、互いに必然性のある部分で提携したことが自然に成功へ導いた例を紹介する。

 他社に追随できるアフィリエイト事業を得るために提携先を欲したオプトの福岡裕高氏、資金調達というよりもより良い事業パートナーを求めていたインタースペースの河端伸一郎氏。両者はそれぞれの「必然性」について語る。

投資するに値する経営者? 投資して注力したい事業?

勝屋氏:3回に渡ってお届けしてきたコーポレートベンチャーキャピタル特集、最終回のゲストは、オプトの福岡さんとインタースペースの河端さんです。まず福岡さんから、オプトの中では投資事業をどういう位置づけで行っているのか、どこにフォーカスしているのか、そのあたりからお聞かせください。

福岡氏:基本的には事業提携を目的としているため、純粋な投資事業は行っていません。出資パターンを分類すると、1〜3%といった少シェアの出資か、15%以上の出資に分類できます。

 1〜3%の案件に関しては、徹底的に事業提携を押し進めます。15%以上の案件に関しては、前提としてグループ企業ですので、経営者同士のミーティングを開催したり、シナジーの創出手法をじっくりと考えていることが多いですね。

 オプトの主力事業である4分野、広告代理事業、テクノロジー事業、制作などのソリューション事業、コンテンツ事業を補完する事業にフォーカスするという方針はありますが、それ以外の分野の案件も幅広く検討しています。

勝屋氏:本体投資の場合とファンドを作る場合がありますが、どちらですか。

福岡氏:オプトと事業シナジーがある案件は全て本体投資です。オプトが設立に関わったファンドも存在しますが、お互いに自主的に動いています。

勝屋氏:今、出資している企業は何社くらいありますか。

福岡氏:子会社を100%出資で立ち上げることが多くなったため、シェアの多寡に関わらず、総計で40社くらいに出資しています。投資事業は2005年からはじめたため、まだまだ歴史は浅いです。

勝屋氏:では、インタースペースの会社概要や特長を教えてください。

河端氏:主な事業はアフィリエイトビジネスです。クライアントのニーズを満たす事と、それによる対価を得ること、アフィリエイト事業はそれを一度に解決できる方法だと考えて2001年の頭に参入しました。当時はまだアフィリエイトがビジネスとして育っていくのかどうかは見えない状況でしたが。

 インタースペースでは、顧客とのwin-winを実現することを理念としています。ですから、メディアの選別やクライアントへの提案などは自分たちが儲かるという基準ではなく、お客さんが喜んでもらった結果、我々の収入があるという考え方を徹底しています。

 会社全体の誠実さはどこにも負けませんし、それが長期的な信頼にも繋がると思っています。具体的には、現在、社員は100名ほどいますが、新規営業をしている人間は15名くらいしかいません。どうクライアントに成果を上げてもらうかという運用部隊の方に、その3倍くらいの人員を使っているんです。そういうカルチャーが当社の強みだと思います。

勝屋氏:出資したのはいつ頃ですか。

福岡氏:2005年3月ですね。2005年1月に僕がオプトに入社しているので、まさに、最初の投資案件でした。

勝屋氏:投資をする際には社内にもその案件を通す必要があります。最終的な出資に至るまではどういう経緯だったんですか。

福岡氏:オプトがインタースペースさんに出資をすることによって、両社がハッピーになるためのシナリオを考えました。ヒト、モノ、カネの視点で考えると、河端社長は投資するに値する経営者かどうか、アフィリエイト事業はオプトが投資して注力したい事業かどうか、その視点では、どちらもイエスでした。

 2005年時点でオプトは、アフィリエイト事業では完全に出遅れていました。セプテーニさんは自社でアフィリエイトネットワークを、サイバーエージェントさんは自社メディアを持っていました。オプトにとってアフィリエイト事業への投資は必須だったわけです。

 最後に、株価やシェアのカネの視点ですが、最初に受けた要望が「少額少シェア」だったため、悩む必要がありませんでした。本当は、もっと欲しいと回答したかったのですが(笑)

河端氏:担当者同士がお互いに知っているという感じで案件は流れていたんです。オプト代表取締役CEOの海老根さんからも投資したいというような話もありましたし。そうやって具体的になっていきました。

インタースペース 代表取締役
河端 伸一郎(かわばた・しんいちろう)

学習院大学経済学部を卒業後、大和証券に入社。株のブローカレッジビジネスは、自分達が頑張って売上を上げようと思うほど、お客様の手数料が多く発生し、損失をこうむる可能性が高くなることに直面する。自分が将来ビジネスをするのであれば必ずWin-Winのビジネス構造を作り上げたいと強く感じ、森川義明(現インタースペース取締役)とともに、インタースペースを設立。アフィリエイトの可能性を信じ、当時国内3番目となるアフィリエイト事業をスタートさせる。

堅実な経営・営業スタイル、win-winの精神が社内へと浸透。多くの広告主から厚い信頼を得て、昨年9月には東証マザーズに上場も果たした。社員と仕事をこよなく愛す36歳。

趣味:温泉

「福岡さんはとにかくよくしゃべる人だという第一印象でした(笑)。当時、僕はまだ業界の人と飲みに行くようなことをしていなくて、業界の人との交流もなかった時期なんです。でも、初めて会った時から福岡さんとはよくしゃべりましたね。我々の世代がどうあるべきか、もっと頑張らなきゃいけないんじゃないか、みたいな話を延々としました。とにかく熱い人だなという印象です」

勝屋氏:担当者レベルでつながっていた案件が会社対会社のディールになるというのは、実は簡単ではないと思うんですが、そこはどう乗り越えていったんですか。

河端氏:そこは福岡さんのご尽力です。我々としては1〜2%のシェアでどこまでやってもらえるのか見えなかった部分もありましたが、オプトの中でアフィリエイトチームを作ってもらえたんです。具体的にどういう風にすればいいか我々の方にもヒアリングがあって……。

福岡氏:常駐とまではいきませんが、週に1〜2回は来てもらって、丸一日、相談に乗ってもらいました。

河端氏:そうです。その頃はまだメンバーも少なかったので、すぐに人材を採用して常駐できるようにしたんですよね。オプトもアフィリエイトチームにエース級の人を出してくれて、そこでいろいろな骨格を固めていったんです。

福岡氏:オプトのアフィリエイト事業は、アフィリエイトネットワークをフル活用すると決めて、PCのアフィリエイト事業はインタースペースさんに任せ、モバイルはアドウェイズさんに任せるという方針を社内で調整しました。 あとは、僕は、オプトの社員に対して、河端さんの魅力とか、インタースペースの素晴らしい社風を一生懸命に伝えました。結果的に、投資先企業とのシナジーが生まれ、売上高が激増しました。オプトの社員からも感謝されました。素晴らしい経験でした。

勝屋氏:先ほどクライアントとの関係でもwin-winの話が出ましたが、オプトとの関係でもwin-winになれたわけですね。

河端氏:そうですね。短期間の間に売り上げは倍くらいになったと思います。

福岡氏:投資資金は、販売コミッションのみで回収することができました。そのうえで、IPOによる利益を得ていることになります。

勝屋氏:オプトの事業にも貢献できていると。

福岡氏:はい、アフィリエイト事業を支えてくれました。

勝屋氏:会社と会社の関係もありますが、河端さんから見て、福岡さんがいてくれて良かったと思う点はどんなところですか。

河端氏:最初にスキームを作ってきちんとやってくれるというのも当然あるんですが、その後も何かあった時にはすべて相談に乗ってくれるんです。ですから我々としてはそこで繋がっているという安心感があります。現場ではいろいろ問題が生まれることも多いんですが、そういうことも福岡さんに相談すると適切な調整をしてくれるので本当に安心です。

福岡氏:僕ができるのは本当に調整だけなんです(笑)。でも、振り返ってみれば、確かに、事業面、投資面、両面で大成功した素晴らしい案件だったと思いますね。

 インタースペースさん、アドウェイズさん、両社にオプトのアフィリエイト事業を支えてくださいとお願いして、見事に両社が上場しました。事業会社の投資案件としては、ピカイチの案件だと思います。

勝屋氏:確かにそうですね。ところで、福岡さんがオプトに入った経緯を教えてください。

福岡氏:大学を卒業する時点で何をしたいか分からなかったので最初は商社を選ぼうと三菱商事に入社しました。商社を辞めた後、コンサルタントになりましたが挫折、エルゴ・ブレインズで業界デビューを果たしましたが、 個人的なプチバブルが崩壊してプータローになりました。その後、セプテーニ、再度のプータローを経てオプトに入社しましたが、振り返ればかなり無茶苦茶な経緯です。

 結局、それぞれのターニングポイントで誰に一番必要とされていて、誰のチームに入れば自分の力が一番発揮されるかというようなことを考えて動いたように思います。

 「ワクワクする人とワクワクする仕事をする」ことがライフワークです。

河端氏:福岡さんの存在で明らかに業界としては底上げされたと思います。僕らからすればスターですよね。ずっとマーケットを引っ張っていく存在で、すごい人だなという印象です。

勝屋氏:今の仕事は楽しいですか。

福岡氏:ネット業界で働くことはムチャクチャ楽しいです。インターネットという新しい習慣によって人間が変わろうとしてるじゃないですか。そういう変わろうとする人や時代のエネルギーの中にいると、自分がすごくイキイキとしてることを感じますね。

オプト 執行役員 事業戦略本部長
福岡 裕高(ふくおか・ひろたか)

1994年名古屋大学法学部卒業、三菱商事に入社。エネルギーグループにて石油製品を取り扱う。2000年1月にエルゴ・ブレインズの東京オフィスを立ち上げる。 営業担当役員を経て、代表取締役社長兼COOとして2002年にナスダック・ジャパンに上場を果たす。その後、プータローを挟みながら、セプテーニ、オプトを渡り歩く。2005年1月に入社したオプトでは、事業提携を目的とした投資業務をはじめ、広告代理事業以外の業務を“なんでもや”として担当する。

趣味:ゴルフ、会食、仕事(笑)

投資先:インタースペース、アドウェイズ、ウェブドゥジャパン、アルバ、モバイルファクトリー、ユニメディア、ブレイナー、コムスクエア、モードツー、シナジーマーケティング、グローブコミュニケーション、リアルコミュニケーションズ、リンクシンク、ホットリンク、ディマージシェア、デジタルフォレスト、ペットゴー、ウノウ、北京欧芙特信息科技有限公司など。

河端さんの印象は「最後の最後は踏み止まれる腹の括り方を知ってる、そういう紳士&真摯な態度でブレない人です。仕事抜きで長くお付き合いしたいと思っています」

勝屋氏:河端さんはもともと大和証券におられましたが、今の事業を始めようと思ったきっかけは何ですか。

河端氏:学生の頃、アメリカに1年間留学していて、当時はジャパン・アズ・ナンバー1でどうして日本のメーカーがすごいのか教えてくれと言われるような時代でした。でも、アメリカから帰ってきて証券会社に就職した頃は株もとっくに暴落していて、日本の経営者の誰に聞いても景気悪いと言う時代になっていました。

 逆にその頃、大和証券内の外国株式部はすごく元気がよかったんです。オラクルを買え、シスコを買え、マイクロソフトを買えと、毎日のように言ってくるわけです。ニューヨークダウが1万ドルくらい上がった時期ですね。その中にネットスケープもあって、ナスダックに上場して毎日株価が上がっていました。

 その時に日本にもこういう会社が生まれないといけないなと思ったんですよね。それがベンチャーに興味を持ったキッカケです。

 その後、会社を辞めて小売りの手伝いをしたりしたこともあったんですが、「待ち」の仕事はやっぱり面白くないと思って自分の好きなことをやろうと決心しました。最初はホームページの制作をする会社で働いたんですが、やっぱり楽しいし可能性は感じましたね。それで半年後に会社を作ったんです。会社を作ってからビジネスプランを考えたという感じで、最終的に今のアフィリエイトに行き着きました。

勝屋氏:投資にあたって、福岡さんの判断基準を教えてください。

福岡氏:ヒト、モノ、カネの視点は冷静に分析しますが、加えて、運、縁、勘というような「流れ」を大切にしています。オプトとその会社が出会うことが良い流れかどうか、その経営者の運が良いかどうか、今回の案件に必然性を感じるかどうか、そういったことを考えます。良い案件というのは、振り返れば必ず必然性があると思っています。

勝屋氏:河端さんは、ベンチャーキャピタルとの付き合い方や事業会社との距離の取り方など、何か一定のお考えなどはありますか。

河端氏:我々が当時必要なものはお金ではなかったんです。事業をどう成長させていくかが重要で、そのためのパートナーを欲していたわけです。ですからベンチャーキャピタルが良いとか悪いとかではなく、その時たまたま我々が求めていたものが事業パートナーで、オプトが信頼できる相手だったということですね。

勝屋氏:福岡さんは人脈もたくさんお持ちですが、案件はどうやって見つけてくるんですか。

福岡氏:オプトが必要とする事業に関しては、素直に探します。そして、基本的な探し方は、先輩、知人、友人を頼ります。魅力的な会社や人に魅力的な会社や人が集まりますので、魅力的な人と会い続けていれば、良い案件に出会う可能性が高くなると思っています。他力本願です、はい(笑)。

 一方、持ち込まれた事業を、無理やり、オプトに必要な事業に仕上げようとすると無理が生まれます。よって、昨年は、オプトが必要としているものの、提携先が見つからない事業に関しては、自分たちで子会社を立ち上げました。オプトを支えてくれている方々からの「他力」とオプトの努力による「自力」を噛み合わせることで、オプトらしい投資事業を立ち上げたいと思っています。

勝屋氏:河端さんは、インタースペースを今後どうしていきたいと思ってますか。

河端氏:世の中に対してきちんと価値を生むビジネスにしたいですね。儲かりそうだからとりあえずやろうというのではなくて、自分たちにとって必然性があるものをきちんと決めてやる。その結果、消費者はもちろん、代理店の方、当社の社員など、そのビジネスに関わるすべての人が幸せになれる会社にしていきたいですね。

対談での氣づき 〜 勝屋 久(IBM Venture Capital Group)

 双方の戦略的なアライアンスの価値が明確でかつリアルのビジネス結果もしっかりと出ており、コーポレートベンチャーの視点でとても良いビジネスケースと感じた。

 この成功の背景に、オプトの福岡 裕高さんの力が大きい。福岡さんは一つの理想のコーポレートベンチャー像かもしれない。この対談をとおして、福岡さんの素晴らしさに氣づいたことがあった。それはコーポレートベンチャーのプロとして、下の大切な3つの資質があることだ。

  • @業界を知り尽くす。業界の経験がある。
  • A会社の戦略・リソースを正確につかんでいる。
  • B人として魅力的である。
業界を知り尽くし、業界の経験が豊富であれば洞察力、アライアンス候補の目利き・勘所、Win-Winを現実化するアイデア・実行計画の立案できる。

 会社の戦略・リソースを正確につかんでいれば、常になにが自社で足りないかをしっかり把握できる。これは言葉で書くのは簡単だが、実際に描くことは容易くない。

 人として魅力的であれば、アライアンス先企業、社内の良き相談相手になれる。そして素晴らしい出会い(アライアンス候補)に恵まれる。まさに福岡さんは謙虚な姿勢で常に人と向き合っている。(業界を長く経験していると、ついつい上から目線で相手と話してしまいがちである。実は福岡さんも昔はそうだったらしい。)また、実際に現場との調整などで汗をかき、関係する人達と分かちあうことで信頼関係ができ、結果として会社対会社の確固たる信頼関係がうまれる。

 また、福岡さんは謙虚な姿勢で人と向き合い福岡さんと河端さんと話をしていて、僕自身もリアルに学んだことが多かった。もはや1社だけでは市場・お客様を満足させることは難しい時代である。そういう時代だからこそ、企業間連携は大切で、コーポレートベンチャー戦略や事業会社〜ベンチャー企業のアライアンスは有効な手段の一つと考えられる。そういった意味で福岡さんのコーポレートベンチャーとしての活動と功績はとても意義のあることである。将来より多くの事業会社・ベンチャー企業から、オプト〜インタースペースのような素晴らしいアライアンスがうまれることを願う。

IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation, Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。総務省「情報フロンティア研究会」構成員、経済産業省「Vivid Software Vision研究会」委員、New Industry Leaders Summit(NILS)プランニングメンバー、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小ITベンチャー支援事業」のプロジェクトマネージャー(PM)、富山県立大学MOTの講師などを手掛ける。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」を手掛けている。

ブログ:「勝屋久の日々是々

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)