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経営者×ベンチャーキャピタリスト=無限の可能性

2006年12月 25日 08時00分

女性ベンチャーキャピタリストだから話せる、VCの魅力と苦労とは

永井美智子(編集部)、田中誠

 企業の成長は、決して経営者1人の努力だけでは無理だろう。その過程では、資金はもとより経営に関するアドバイスなどさまざまな支援が必要になる。こうした役割を担うひとつがベンチャーキャピタル(VC)だが、経営者とVCはどのようにして出会い、具体的にどういう関係を構築していくのか、そして人物像は。

 IBM Venture Capital Group日本担当の勝屋久氏が紹介する形式で、VCと経営者の姿をリアルにお伝えする連載「経営者×ベンチャーキャピタリスト=無限の可能性」。今回は年末特別企画として、VCで活躍する女性ベンチャーキャピタリストに焦点を当てます。インテック・アイティ・キャピタルの遠藤弘子氏、日本アジア投資の落合加奈恵氏、ネットエイジキャピタルパートナーズの長谷川彩子氏の登場です。

勝屋:今回は現場で活躍する女性ベンチャーキャピタリストの方々にお集まり頂きました。最初に、自己紹介と皆さんが所属している会社の紹介をお願いします。

遠藤:インテック・アイティ・キャピタルの遠藤です。私はまず日興証券に入社して、すぐにグループ会社の日興キャピタル(現:日興アントファクトリー)に配属され、そこで企業の審査から投資管理など一通りVCの基礎を勉強しました。

 それから10年くらい経った2000年のITバブルの頃に外資系のファンドなど新しいVCが日本にも進出してきて、いくつかお声をかけて頂いたんです。その中の1つで、クリムゾン・ベンチャーズという米国系のVCでしばらく仕事をしていました。ただ残念ながら外資系のグローバルファンドは見切りが早く、1年半ほどで撤退してしまったんですね。その時にインテック・アイティ・キャピタルから声をかけてもらって、現在に至ります。ですからこれまでに、証券系、外資系、事業系と3社のVCを経験しています。

 インテック・アイティ・キャピタルはインテックの子会社で2000年8月に設立されました。事業会社系のVCではあるものの、投資の資金はすべてファンドでまかなっているという特徴があります。もちろんインテックグループも出資をしていますが、機関投資家やインテックグループの顧客など外部のお金を預かって運用していますので、我々はファンドのパフォーマンスを第一に考えています。

 もうひとつの特徴としては、マネージメントチームがすべてインテックグループ外から招かれた、VCのバックグランドを持つ者で構成されていることです。投資に関したプロフェッショナルとインテックグループの事業基盤を掛け合わせた形でのユニークなVCを目指しており、設立当初から試行錯誤を重ねて、ここ数年でやっと形が見えてきたという実感が湧いてきたところです。

落合:日本アジア投資の落合です。私は新卒で2001年に入社しまして、現在6年目になります。最初の3年間に国内投資業務を担当し、今は海外企業への投資や投資先の管理業務などを担当しています。また、当社の国内外の投資先同士を引き合わせるような仕事もしています。海外の企業が日本のVCからの出資を受ける理由のひとつに、日本企業と提携を持ちたいという考えがあるからです。私たちのチームは組織的にそういったニーズをすくい上げて、日本の企業とつなぐ窓口業務を担当しています。

 日本アジア投資は1981年に経済同友会を母体に設立された会社で、1996年に株式公開をした独立系のVCです。自由な雰囲気で、「ユニット制」という独自の投資体制を採用しています。VCではおそらく当社だけではないでしょうか。ある一定金額までは独自で投資判断できる決済権限を持っています。モバイル専門に投資をしていくチームや設立7年以内の会社に投資をするチームなどのようにテーマを決めているチームと、とくにテーマを決めずに投資をするチームがあります。

長谷川:ネットエイジキャピタルパートナーズの長谷川です。私は新卒で三菱自動車工業に入社しまして、自動車の輸出や海外の債権債務の業務を担当していました。3年半ほど経った時にベンチャー企業のスターティングメンバー募集という広告を見て、もしかしたら経歴や性別も関係なく仕事ができるんじゃないかと思い、転職しました。そしてその会社の株主にVCが入っていて、ベンチャーキャピタリストの方が社外取締役として参画していたことで、初めてVCという存在を知りました。

 VCに関する本を読むうちに自分でもやってみたいと思うようになり、その取締役の方に「10年後にベンチャーキャピタリストになりたいのですが」と相談をしました。そうしたら「今すぐ入社すればいい」と言われたので、そのままVC業界への転職を決意しました。そのVCには9カ月在籍し、2006年3月にネットエイジキャピタルに入社しました。

 ネットエイジキャピタルパートナーズは、純粋持株会社であるネットエイジグループのファイナンス・インキュベーション事業を担う100%連結子会社です。特徴は、インターネットビジネスに投資をフォーカスしている点と、少人数でやっているという点ですね。メンバー全員が個性豊かで、投資に関して社員の意志を尊重してくれる会社でもあります。

勝屋:遠藤さんと落合さんはどういういきさつでVCの道を選んだのですか。

遠藤:私は証券会社に入ったら配属がVCだったというだけなんです。「VCって何?」という状態で、当時は「証券会社に入社したのになぜ出向なのか」という思いの方が強く、異動願いをずっと出していました。ですから、仕事をやっていくうちに面白くなってきたというのが正直なところですね。

落合:私も不勉強ながら就職活動を始めるまでVCという存在を知りませんでした。就職活動中に日本アジア投資からダイレクトメールが届いて、初めてこういう業界もあるんだということを知りました。それで興味を持って、採用試験はVCばかり受けました。

 新しい産業の育成に関われるところが面白いと思いました。世の中をより便利にするポテンシャルを持つ企業を自分で見つけて投資し、上場というひとつのゴールに向かって企業と一緒に走るところですね。さまざまなタイプの経営者、成功したいという強い意志を持つ人に会えるのも魅力的だと思いました。

インテック・アイティ・キャピタル投資部長
遠藤弘子

1990年立教大学法学部卒業後、日興證券に入社。1995年まで日興キャピタル審査部にて数多くの投資案件のデューデリジェンスを手がける。その後、投資企画部に在籍しベンチャーファンドの企画及び法務業務に携わる。2000年8月より、米系VCのCrimson Ventures東京支店にて投資および法務業務に従事し、2002年1月より現職。日本アナリスト協会検定会員。

趣味:週末はお茶(表千家)のお稽古をしています。年数だけは長いです

投資先(インテック・アイティ・キャピタル):セラーテムテクノロジー(大阪証券取引所ヘラクレス市場:4330)、Eigner US(2003年8月にAgile Software Corporationに買収)、プラネット(ジャスダック:2391)、リスクモンスター(大証ヘラクレス:3768)、アクセラテクノロジ3PARdataイーライフゲインデータコア・ソフトウェアWily Technologyイズ

勝屋:なるほど。では、VCにいて自分が役に立った、やっていて良かったと思ったのはどんな時ですか。

遠藤:役に立ったと思っているのは私たちだけかもしれないので、本当に役に立っているのか、常に自分の行動を振り返っています。

 ただ、今の会社では親会社が事業会社であることがすごく助かっていると実感しています。証券系VCや外資系VCにいた時にも個人的なネットワークを使っていろいろな企業や人を投資先に紹介してきましたが、あくまでも紹介しかできず、なかなかビジネスには結びつかなかったんです。

 でも今はグループ会社があって、現場の人たちと話をしながら具体的な先まで進めていけます。だんだんと思いが伝わって、「こういうことがやりたかったんだね」ということをインテックも私たちもお互いを分かっていけるようになったんですね。そこが一番役に立っているかもしれません。

落合:私も遠藤さんと同じで、投資先の企業にいろいろ紹介するのですが、なかなか先方に響かないことがあります。そういう時はすごくもどかしく感じます。逆に、ひとつの提案が喜ばれるとやっていて良かったなと思いますね。

 私はまだそれほど多くの経験があるわけではないですし、強力なネットワークを持っているわけでもないのですが、私なりにその会社にとって何が良いのかを追求した結果、その熱意が伝わったりすると本当に良かったなと思います。

長谷川:私はまだ経験が浅いので試行錯誤している日々なんですが、紹介したことに自分が満足しないようにしています。最初のうちは紹介だけで満足してしまっていたんですが、そうではなくて、その会社に対して自分がどう役に立てるかをいろんな方向から考えるようにしています。必ずしも結果が出なくても、その中で信頼関係が築かれていくのではないでしょうか。経営者との信頼関係をいかに築くかということは先輩からもよく言われています。

 それから、投資先と仲良くなりすぎないようにするのも大事だと思っています。距離感が難しい職業ですね。

勝屋:皆さんは日ごろどんなベンチャー企業に投資したいと思っていますか。投資の基準があれば教えてください。

インテック・アイティ・キャピタル遠藤氏

遠藤:使い古されている言い方かもしれませんが、やはり経営陣だと思います。たぶんこれは相性なんでしょうね。不思議なんですが、投資先とVCって似ていることがありますね。派手なVCが投資している会社は派手な企業が多かったり……。結局、この人たちと一緒にやっていきたいとか、この経営陣は好きだという気持ちが持てないとうまくいかないと思います。

落合:私も全く同じです。経営者とのコミュニケーションがきちんと取れる会社で、経営者が自分のやっている事業に誇りを持って熱意を私たちにぶつけてくるような方に魅力を感じます。何か失敗しても「あの人が失敗するなら仕方ない」と自分が腹をくくれる人じゃないとだめです。ですから最後の判断基準はやはり人になります。

長谷川:私も経営陣ですね。その経営陣がいかにそのビジネスに精通して、いかに信念を持ってやっているかということになると思います。あとは嘘をつかないということですね。これは私自身もそうなんですが、いろいろなことを言い合える関係が一番大切なんじゃないかと思います。

勝屋:ベンチャーキャピタリストとして、女性だから良かったこと、悪かったことはありますか。

遠藤:一番のメリットは、まだ女性が少ない業界なのですぐに覚えてもらえることですね。デメリットもあるんでしょうけれど、結果的にはプラスマイナスゼロのような気がします。

落合:世の中の半分は女性が占めるわけですから、男性の視点からは見辛い市場をカバーできるのはメリットだと思います。

 デメリットは、その社長の人柄をもっと知りたいと思う時、なかなかこちらからお誘いすることができないことです。男性同士なら気軽に「飲みに行きましょう」と言えるんでしょうが、女性からだと向こうも気を遣うでしょうから、コミュニケーションの取り方には気を使いますね。

長谷川:私は良いのか悪いのか、社内ではおじさんキャラだと言われていて、今まで一度も言い寄られた経験がないんです(笑)。ただ私自身、「だから女性の担当は嫌だ」といったことは絶対に言われたくないので、立ち振る舞いは自分なりに気をつけています。

勝屋:VC業界はまだまだ女性が少ないと思いますが、もっと増えるにはどうしたらよいと感じますか。

遠藤:私はあまり女性だからという視点がないんです。女性でも男性でも優秀な人には頑張って欲しいし、女性だからということにこだわりたくないんです。ですから、女性が頑張れる土壌を作ろうというようなことも考えたことがないですね。

 ただ、女性に向かない業界ではないと思うので、もし最初から女性には無理だと諦めている方がいるのなら、あまり性別は関係ない業界だと言いたいですね。

 企業を見ても、順調に伸びている会社はキーマンに必ず女性がいます。そういう会社は女性だから彼女たちを登用したわけではなくて、彼女たちが優秀だからというだけなんですよ。経営者たちに女性だからどうこうという視点はまったくないと思います。

落合:これは個人的な考えですが、新卒で入ると男性と同じ扱いなのでそれ程ストレスなく過ごせると思います。ただ女性は人生のサイクルがどうしても男性と違うので、そのあたりの社会や会社の理解があったらいいですね。日本アジア投資は産休制度が充実していて、子どもを何人も産んでその度に仕事に復帰している女性が多数いるので、そういう実績があることは心強いです。ただ投資部隊での実績はまだありません。ですのでそういう人が出てくれば若い人も安心して増えてくるのではないかと思います。

長谷川:素敵なベンチャーキャピタリストの方々がもっと目立つ機会があればとは思います。私自身が学生の時もキャピタリストの存在を知らなかったので、現在活躍している方々が目立つことが一番のアピールになるのではないかと思います。

日本アジア投資マネージャー
落合加奈恵

2001年上智大学外国語学部卒業後、日本アジア投資入社。国内投資を3年担当し、2004年よりグローバルリンケージチームへ異動。海外ポートフォリオのフォローや国内外の投資先をマッチングさせるリンケージ業務を担当する。2006年11月よりJAIC International (HK) Co., Ltd.Taipei Branchに異動。

趣味:テニス、書道

投資先:Afas Inc、デジタル・ナレッジアブコ、Vertical、他

勝屋:落合さんは12月から台湾勤務と聞きましたが、貴社は海外勤務希望もきちんと実現させてくれるのですね。

落合:そうですね。日本アジア投資では最近の数年だけでも、タイ、シンガポール、香港、米国など、4人の女性が海外に行っています。海外に行く若手の多くが女性ではないでしょうか。昔から「行きたいのであれば頑張ってやって来い」という土壌がありましたね。私も国内投資部門にいた時からいつか海外投資業務を担当してみたいという希望を出していて、今回台湾へ赴任させてもらえることになりました。そういう意味でも会社にはとても感謝しています。

 国内投資業務を担当していたとき、どこに自分の強みを置こうかと考えました。日々の業務を通じてハイテク関係の知識では、とても男性の先輩社員には敵わないのを痛感していたからです。その時、ビジネス領域が日本国内に留まらなくなっている昨今にあって、より多くの国をビジネス対象にできるコミュニケーション能力があるということは強みになるのでは、と思ったのです。VC業界にはさまざまなタイプのキャピタリストがいますが、日本だけでなく海外でのVC経験もあるという人材はまだ少ないですから。広いビジネスエリアを網羅できるキャピタリストがいてもいいのではないか、と。

勝屋:ベンチャーキャピタリストに向いているタイプはどういう人ですか?

遠藤:ひとつのことをずっと続けていける人だと思います。この仕事はすぐに結果が出るわけではないし、失敗したかなと思っても取り返せたり、失敗してもそれが次につなげられたりしますからね。

 2000年頃、外資系の投資銀行などからものすごく優秀な方がこの業界に入ってきたのに、今は皆さん元の業界に戻られています。企業の経営者もそうだと思うんですが、決して頭が良い順に成功していくわけではなく、成功にはその事業に対する思い入れだったり、それを続けていけたりする力が必要なんだと思うんですよね。みんなからばかにされてもずっと続けてきた人が、結局、今インターネットビジネスでも成功しているんじゃないかと思います。

 女性に向いている職業ということではないんですが、もし向いているタイプがあるとすれば、あきらめの悪い、しつこくやっていくタイプだと思います(笑)

落合:私も女性だから向いているということは感じないのですが、強いて言えばお節介焼きタイプですかね。投資部門ではある程度決められた投資金額があって、常に新規投資をしていくことになります。そうなると新規開拓に意識が行きがちで、既存の投資先のフォローが後回しになってしまうことがあります。新規投資案件を進めつつも、常に頭のどこかで「あの会社がこういう会社と接点を持ちたがっていたな」というようなことを考えられるタイプが向いていると思います。

長谷川:私自身の性格でもあるんですが、やはり前向きな気持ちと向上心を持っていることが一番大切だと思います。会社の経営には波があるはずで、その中で一緒に悩みつつも、プラスの方向にいくための手段を前向きに考えられる人が向いていると思います。

日本アジア投資落合氏

勝屋:VCの社会的な意義はどんなところにあると思いますか。

遠藤:やはり新しい産業を世の中に出していくサポートができることだと思います。VCにビジネスのアイデアはなく、あるのはお金だけといってもいい。でもそのお金をきちんと流してあげることで新しい産業、新しい事業が生まれるお手伝いができるのが大きな意義だと思います。

勝屋:仕事をしていく中で、自分のモチベーションを保つためにしていることはありますか。

遠藤:私の場合は、自分の裁量で動ける立場になったからだと思うんですが、効率よくやっていけば自分の時間も取れるようになりました。精神的なタフさは確かにあるんですが、性格的にあまり引きずらないタイプなので、今はダメでもそのうちうまくいくんじゃないかという根拠のない自信で乗り切ったりしています。

 あと、今まで誰かに言われた小さな言葉に救われることもありますね。例えばまだこの仕事を始めたばかりの頃は、何も分からない女の子が経営者と話してどうするんだという目で見られたこともあったんです。そんな時にある経営者の方から「仕事はどう?」と聞かれて、「気の強さだけでやってるようなものです」と答えたことがあるんですよね。そうしたら「でも仕事の8割は気の強さだよ」とおっしゃってくれたんです。

 日本の社会では気の強い女の人って嫌われますよね。少なくとも気が強いというのは女性に対する褒め言葉にはならないと思うんです。それなのに自然な感じでそうおっしゃって頂けて、すごく救われましたね。このままでもいいんだと思えました。

落合:私はふたつあって、ひとつは今の仕事が自分が目指す目標につながっていると信じること。もうひとつは弱気な自分に負けないようにすることです。要は負けん気ですね(笑)。仕事で失敗したりうまくいかなかった時に、いつか挽回してやると思う気持ちで乗り切っています。やっぱり私も気が強いんでしょうか(笑)

遠藤:私、最近思うんですけど、気が強くない女なんていないですよ。

落合:それは名言ですね!(笑)

勝屋:面白いなあ。長谷川さんはどうですか。

長谷川:私はストレスをためないんですよね。分からないことはまだいっぱいありますが、分からないことは何でも聞けるという環境があるので恵まれています。

ネットエイジキャピタルパートナーズ アソシエイト
長谷川彩子

2001年4月三菱自動車工業に入社。資金部海外債権債務に所属し、輸出・海外の財務管理を行う。2004年よりベンチャー企業へ転職。創業時のスターティングメンバーとして決済、人事、営業など多岐にわたる業務を担当する。2005年住信インベストメントに入社。2006年3月にネットエイジキャピタルパートナーズに入社し、アソシエイトとして投資業務に従事。

趣味:卓球、スノーボード、ラジオを聴くこと

投資先: ミウ・コスメティックス青山プランニングアーツインフォテクトオトバンクダイレクト・アクセスシリウステクノロジーズパテントビューロ阪神酒販マルチリンガルアウトソーシングライフバランスマネージメント

勝屋:これからベンチャーキャピタリストを目指したいと思っている女性や、今頑張っている女性ベンチャーキャピタリストにメッセージをお願いします。

遠藤:最近いろんな事件がありましたが、私はVC側にも問題があったと思うんです。まっとうでない会社を世の中に出してしまった責任ですね。ですから過度なマネーゲームに陥らない、きちんとした会社を世の中に出したいという思いを常に持っていて欲しいですね。一攫千金を夢見ることがいけないわけではないですが、それだけでこの業界に入ってくるのはやめて欲しいです。

落合:私は新卒で業界に入ったので、当初は食い込みたいと思っている会社に結局何もできなくて悩むことが多くありました。でも、そんな何も知らない新人でも、受け入れてくれる社長さんはいらっしゃるのですね。優秀な方であればあるほどそんな若造にもいろいろと教えてくれて、しかも「いろいろと気付かされることがあった」と言ってくれたりします。ですから、例え経験がないとしても、自分が何かしらの形でベンチャー企業の成長に関わっていきたい、少しでも貢献したい、と思う人に入ってきてもらえたらと思います。

長谷川:これは私自身の教訓でもあるんですが、自分がやりたいと思ったことや、これは何かの役に立つのではないかと思ったことを、きちんと考えてやるということですね。思考をストップさせるのは簡単ですが、やりたいと思ったことに対してどうしたらいいのかを常に考えることによって自分が成長できると思うんです。まわりは結果しか見てくれないかもしれませんが、その過程は自分の自信になると思います。

勝屋:皆さんの将来の目標は。

遠藤:私は今の仕事を大きな組織でやりたいとは思ってないんです。最終的にそれがどこの会社になるのかは分かりませんが、自分がいる会社のファンドから投資を受けているのはいいよね、と言われるような質の高いVCを作りたいと思っています。日本といえばあのファンドと言われるようなものを目指したいですね。

落合:最近、またベンチャービジネスが面白くなってきたなと思っています。従来はBtoCのビジネスモデルの会社が効率的に利益を出すには、対象とする顧客を富裕層に設定する場合が多くありました。でも、Web 2.0の時代になって、対象となる顧客層が格段に広がったのが面白いと思っています。

 具体的には、先日ノーベル平和賞を受賞して話題になったグラミン銀行のようなマイクロクレジット(小額無担保融資)などのビジネスモデルが、もっとうまくいく時代になる気がします。そうなるとVCの対象になる企業も増えると思うのですよね。今までグラミン銀行のようなところはNGOなどがやるもので、VCの対象ではなかった。でも今後は、我々のビジネスの対象になるかもしれませんね。常にそういった広い視野でビジネスに関われるベンチャーキャピタリストになれたらいいなと思います。

長谷川:私は会社の名前だけがあるような人間にはなりたくないんです。VCで働くのに資格は必要ないですが、プロフェッショナルな世界だと思うので、出資者からも投資家として信頼されるようになりたいです。長谷川だから信頼できると言われるようなベンチャーキャピタリストになれればいいなと思っているので、そのためにいま何をすれば良いのかを常に考えながら日々過ごしています。

勝屋:ほかの方は将来的な独立は考えませんか。あるいは自ら起業するという選択肢もあると思いますが。

遠藤:独立は考えていませんね。私自身がそんなに何でもできるというわけではないので、いろんな力を使える立場の方がいいかなと思っています。起業は一時考えたこともありますが、今は考えてないです。やっぱり全然違うタイプの仕事だと思うので、私はこの道のプロフェッショナルになりたいと思います。

落合:独立に関しては、あわよくば、と思っています。同期でも独立志向が最初からある人は多いですね。最初はそんなこと考えていませんでしたし、今でも10年くらいは先の話だろうと思っていますが、先ほども言ったように貧困層がビジネスパートナーになると実証できたら面白いなとは思っているんです。

長谷川:まだまだ勉強中なんですが、弊社の社長である小池や業界の多くの先輩など、目標となる人を見ていると、憧れだけが募ります。今はいろいろなことを覚えている段階ですが、将来的には私も独立ができたらいいなと思っています。向上心だけは誰にも負けないつもりなので、夜寝る前にいろいろなビジネスを妄想していると楽しいですよ(笑)

対談を振り返り--勝屋 久

 対談中、3人をみているとキラキラ輝いていて、きっと今を生きているんだなと感じ、とても気持ちが良かった。ベンチャーキャピタリストは人ときちんと向き合えるコミュニケーション能力が特に大切とよく言われるが、人間関係の作り方、仕事のやり方は人それぞれで、男だからとか女だからとかは関係はない。ただ、女性だから持てる視点や優しい気遣い、自然に人と人をつなげることができるなど、ベンチャーキャピタリストに求められる資質としてプラス面があることにも気づいた。

 発展途上の日本のVC業界において女性の活躍できる可能性は大きいと思います。遠藤さん、落合さん、長谷川さん、そして女性ベンチャーキャピタリストの皆さんを心から応援し、皆から愛され尊敬される女性ベンチャーキャピタルリストがどんどん生まれることを楽しみにしてます。

IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。1999年ITベンチャー開拓チーム(ネットジェン)のリーダー、2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation,Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。7年間で約1800社のベンチャー経営者、約700名のベンチャーキャピタル、ベンチャー支援者の方々と接した。Venture BEAT Project企画メンバー、総務省「情報フロンティア研究会」構成員、ニューインダストリーリーダーズサミット(NILS)企画メンバー、大手IT企業コーポレートベンチャーキャピタルコミュニティ(VBA)企画運営、経済産業省・総務省等のイベントにおけるパネリスト、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の中小ITベンチャー支援事業プロジェクトマネージャー、大学・研究機関などで講演、審査委員などを手掛ける。ベンチャー企業−ベンチャーキャピタル−事業会社の連携=“Triple Win”を信条に日々可能な限り多くのベンチャー業界の方と接し、人と人との繋がりを大切に活動を行っている。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ 機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、 ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」 のプランニングメンバーを務める。

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)