2006年12月6日 13時30分
永井美智子(編集部)
企業の成長は、決して経営者1人の努力だけでは無理だろう。その過程では、資金はもとより経営に関するアドバイスなどさまざまな支援が必要になる。こうした役割を担うひとつがベンチャーキャピタル(VC)だが、経営者とVCはどのようにして出会い、具体的にどういう関係を構築していくのか、そして人物像は。
IBM Venture Capital Group日本担当の勝屋久氏が紹介する形式で、VCと経営者の両者に対談してリアルにお伝えします。今回はMonotaRO代表執行役社長の瀬戸欣哉氏と、ワークス・キャピタル シニアマネージャーの本間真彦氏の登場です。
勝屋:今回は、全国16万社以上の事業所や工場に対する工場用間接資材(MRO)のインターネット販売で業績を伸ばしているMonotaROの瀬戸社長と、ワークス・キャピタルの本間さんがゲストです。最初に、会社のご紹介をそれぞれお願いします。
本間:ワークス・キャピタルは三菱商事と三菱UFJ証券を株主とするVCで、働いている人間はほぼすべて海外ベンチャーへの投資経験があります。IT分野全般を対象としたブティック型(特化型)のVCを目指しており、現在は設立7年目です。
瀬戸:MonotaROという社名には2つの意味を込めています。ひとつは「物が足りる」という意味、もうひとつがMROです。MROはMaintenance、Repair and Operationの略ですが、いわゆる間接資材のことですね。簡単に言うと、商品の原材料になるようなものが直接資材、その商品を作るために必要なものが間接資材です。製品を磨くための砥石や、作業をする際の手袋やヘルメット、あるいは工場にある機械の交換部品なども間接資材に入ります。
大きな工場になると購入する資材は10万点、20万点にもなるんですが、その中で直接資材が占める割合は10分の1以下。ほかはみんな間接資材なんです。そして、そういうひとつひとつの購買金額が低い「その他いろいろ」の資材を買うには、ものすごく手間がかかるんですね。全体の購買金額の20%以下のものに80%くらいの時間を使っているという現状があるわけです。それをもっと便利にしようという狙いで始めたのが当社です。
勝屋:MROに興味を持ったきっかけは何だったんですか。
瀬戸:起業する前に住友商事に勤めていたのですが、そのとき米国でビジネススクールに通い、インターネットのビジネスに興味を持ちました。商社はインターネットがBtoCだけでなくBtoBにも利用されていることに対し、自分たちの仕事が中抜きされてしまうのではないかという危機感を持っていたんです。でも当時、私が勉強して分かったことは、商社でやっているような仕事はインターネットとは関係なく付加価値が高いということです。むしろ取引が複雑なので、機械化しにくいし、合理化しにくい。
ただ先ほど言った間接資材などは単純な売り買いで、買い手は手間だけを気にしているんですね。もう少し分かりやすく説明すると、ある工場でひとつのドリルが必要になった時、それが500円か400円かということよりも、5分で買えるか、1時間かかってしまうかの方が会社のコストにとっては重要なんです。そして、それを合理的に売り買いする方法がそれまでなかったんですね。
世の中に間接資材として流通している商品の点数は何百万点もあって、それをいろんなところから買わなければいけないので、手間ばかりかかっていた。そういう単純で労働集約性が高く、繰り返しが多いものこそ、システム化しやすいと思ったんです。自分たちのサイトで商品を一括して買え、簡単に検索ができて、しかもたくさんの商品をそろえれば、多くの人が利用してくれるんじゃないかという発想で始めました。2000年の10月のことです。
当時の住友商事の意図は、先ほども言ったような中抜き対策がメインだったんです。でも私は考えれば考えるほど中抜き対策のビジネスはうまくいかないと思ったんですね。それでこの事業を考えたわけですが、住友商事としては本社の事業と関係がなかったので、「ビジネスアイデアとしては面白いね」と言ってくれましたが、そんなに熱心ではありませんでした。
勝屋:住友商事のほかに、米Grainger Internationalも創業当時からのパートナーですよね。
瀬戸:そうです。Graingerは当社と同じような商品を実店舗で売っている米国の会社で、1996年からEコマースも始めていました。1999年から2000年にかけては株価も上がって、非常に注目されていた企業でした。世界展開をしたいということで我々との話が進んでいたのですが、ネットバブルが弾けた関係で、直前になってグレンジャー側もかなり及び腰になってしまったんですね。
ですから住友商事としてもGraingerとしても、絶対にうまくいくという確信は持てないまま、50%ずつ出資したという形なんです。結局、創業時の2000年10月に両社から調達したのは、ほぼ1年間会社の運営ができるような規模の金額でした。逆に言えば、その1年間テストでやってみて、うまくいくようだったらもっと出しましょうという感じだったんです。
1983年東京大学経済学部卒業後、住友商事に入社、特殊鋼の輸出を担当。1990年米国住友商事デトロイト支店に赴任。1996年米国ダートマス大学タックスクールにてMBA取得後、米国にて新鉄源プロセス販売会社のアイアンダイナミックスプロセスインターナショナルを設立、社長に就任。2000年MonotaROの前身となる住商グレンジャーを設立、現在に至る。
趣味:経営より楽しい仕事はないので、気分転換に映画を観る程度
勝屋:それで事業を始められたと。
瀬戸:いや、でもそれでは絶対無理だと思ったんです。そもそもこういう商売で一番ニーズが強いのは大企業ではなくて中小企業なんですよね。中小企業は情報弱者なので、インターネットを活用していますし、そこに売っていかなければいけないと思ったんです。
ただ、中小企業はそれぞれの購買量が多いわけではないので、多くの企業を集めなくてはいけない。顧客獲得単価などを考えていくと、30億円くらいはかかると思ったんです。でも、創業から3カ月後に「30億円貸してください」と言っても無理な話だったわけです。そこで、ほかの会社に出資をしてもらってもいいかと住友商事とGraingerに掛け合いました。ほかにも興味を示してくれる会社があったらもう一度考えてくれと。そして2000年の12月から、毎日のように何社もVCを回りました。ことごとく断られましたけどね(笑)
勝屋:時期も悪かったですからね。
瀬戸:そうですね。40〜50社は行ったと思いますが全部駄目で、最終的にワークス・キャピタルの前身であるウィットジャパン・インベストメントの宮島(正敬)さんが「面白いかもね」と言ってくれたんです。
ただ、その時に宮島さんがひとつだけ条件を出したんです。どこかインダストリアル・パートナーで興味があるところを連れて来られたら30億円のうちの何割かは出すと。それで不思議なことに、外資系のVCは自社がリードインベスターにならないと嫌がるんですが、日本のVCはどこかがやったと聞くとやるんですね(笑)。そんなこともあって、1社が決まってからは早かったです。住友商事とGraingerもこれはいけるのかなと思ってくれて、最終的にはかなりの出資をしてくれました。
勝屋:本間さんとの出会いはいつ頃だったんですか。
瀬戸:投資が決まってしばらくしてから、当社の担当者ということで会いました。2003年くらいですかね。
本間さんは「こんな面白い話があるんですがどうですか」といったように、いろんな話を持ってきてくれるんですよ。私は新しい情報に関してそんなにアンテナを張っているタイプではないので、本間さんの話はさまざまなことを考えるきっかけになりました。いろんな人も紹介してくれましたし。だから一般的なVCというイメージではなかったです。
勝屋:本間さんから見て瀬戸さんの最初の印象はどんな感じでしたか。
本間:2001年に投資をしてまだ5年程度ですが、調達した30億円を使い切って売り上げを70億円近い水準にまで持ってくるベンチャーというのは、私の知る限りほとんどない。そこがまずユニークです。
それから私個人の瀬戸さんに関する印象なんですが、経営者としてかなり完成されているタイプだと思いました。なかなかうまくいかない経営者には、自分がやることに迷ってしまったり、いろんなことに手を出してしまったりするタイプの人が多いです。逆にこれしかやらないと言い張って、柔軟性が下がるタイプの経営者も同じようにうまくいきません。
ところが瀬戸さんは、頭を使わなくてはいけない部分と、決めたんだから身体を動かさなきゃいけない部分、そのあたりのバランスが抜群に良い社長で、最初に会った時からその印象は変わらないですね。
前任の宮島ともよく話をしましたが、このビジネスはそんなに派手で面白いというわけではないんですよね。でも瀬戸さんはそれを細部まで考えてやっているんです。例えば、スパナ1本をどれくらいの値段で仕入れられて、それを在庫で持つとどれくらいのコストがかかって、1回買った人が3カ月以内に何%くらいまた購買してるのかというようなことを、チャートを作って、経営を科学してるんです。そういう徹底の仕方がプロだなと思いました。
慶応義塾大学商学部卒業後、ジャフコに入社。海外投資事業部にて、ヨーロッパ・イスラエルのITベンチャー企業への投資及び日本進出支援を行う。米国ネットサービスの日本法人立ち上げに参画。その後、アクセンチュアにてベンチャー投資及びアライアンス業務に従事。2003年よりワークス・キャピタルにて、日本・中国・韓国のIT関連ベンチャー企業への投資育成活動を行っている。
趣味:サーフィン、フットサル、お酒
投資先:MonotaRO、キューアンドエー、ベンチャーリパブリック、スカイウェイブ、 シクスオン、新華ファイナンス(東証マザーズ)、オウケイウェイブ(名証セントレックス)
勝屋:本間さんはまだお若いですが、瀬戸さんと信頼関係を作っていく過程で年齢差は気になりませんでしたか。
本間:やりにくいことはなかったんですが、どうしても経験の差はあります。ビジネスモデルはもうでき上がっていたので、僕は中長期的に事業を拡大するためのアイデアやきっかけを与えるような役割を果たそうと。瀬戸さんが僕のことをVCっぽくないとおっしゃったのは、まさにそういう立ち位置だったからだと思います。
勝屋:瀬戸さんは大手商社に勤めて、MBAも取られたわけですが、それでもなぜ起業しようと思われたんですか。
瀬戸:ベンチャー経営というのは、本当に意義のある仕事だと思うんですよね。ベンチャーがなぜ成功するかというと、それは与えられたルールを破るからだと思うんです。ほとんどすべてのサービスには既存の業界がありますから、その既存の業界と同じ形をやっても成功する可能性はゼロに近い。
例えば、セリエAのサッカーチームにいきなり僕が入っても成功する可能性はないでしょう。もし僕がセリエAのチームでゴールを奪うチャンスがあるとしたら、それは手を使ってボールをゴールに投げ込むことでしょうね。ベンチャーというのはそういうことで、違うルールを持ち込むことで成功するチャンスが出ると思うんです。
もともと業界にいる人たちはルールを守ろうとしますが、そのルールはだんだんと意味がなくなっているケースも多いです。かつてはそのルールが世の中に役立っていたかもしれないけど、今はその業界にいる人たちだけにとって良いルールであって、世の中全体にとっては良いルールではないこともあります。それを変えることができるのがベンチャーだと思うんです。既存の企業はそこで利益を上げている以上、ルールを変えようというモチベーションはありませんからね。つまり、既存の企業だけで世の中が動いている限り、発展はないわけです。確かにベンチャーは山のように生まれて、山のように死んでいくかもしれませんが、何かを変えるきっかけになればそれは意義があると思います。
我々がやっている間接資材の業界に関しても、高度成長の時代はそれなりに合理的な仕組みで動いていたかもしれませんが、今ではものすごく不合理になっていました。それを変えることができるのはすごくハッピーなことですよね。だから大企業にいたとかMBAを取ったとか、そういうことは関係ないんです。ベンチャー経営ができるというのは人生においてすごく幸せなことですからね。少なくとも社会に何らかの貢献はできるわけで、そういうチャンスを与えられたこと自体が嬉しいです。
勝屋:MonotaROはベンチャーのいわゆる「死の谷」(編集部注:事業開発に投資がかかる一方で、売り上げがない期間のこと)を越えて、きれいなカーブを描いて成長しているそうですね。
瀬戸:私に取っては死の谷なんてなかったですよ。こうなると思ってやっていましたから。
変な話ですけど、当社が最初に苦しければ苦しいほど、次に参入してくる企業はもっと苦しいんですよね。当社の場合、最初の段階では利便性で勝負をしたのですが、利便性を追求したサービスは、ある大きな矛盾を抱えます。それは、便利なものというのは、慣れているからこそ便利であるという部分です。つまり、切り替えるという作業に対して、そもそも人は便利だと感じない。だから人は便利だと思うようなものに対しても、なかなか切り替えることができないわけです。
そうなると当然、最初は誰も飛びつかないので、顧客獲得にはコストがかかるんですよね。そして、そこに多くのコストがかかっているビジネスに対して挑戦しようと思ったら、もっとコストをかけて、もっと説得力を出さないといけないわけです。だって私が一生懸命変えたものをもう一度変えないといけないわけですから。
おそらく、私が30億円かけたものに対して、次に来る人は100億円かけないと駄目でしょう。逆に言うと、お客さんが変えにくいような利便性をどんどん築き上げることが私たちにとっては大切になってくるわけです。最初から儲かってしまう会社が何年も持ったためしはないと思いますよ。
勝屋:なるほど、面白い話ですね。ところで話は変わりますが、VCの社会的意義や魅力について、本間さんはどう思われますか。
本間:ベンチャー企業が「こういう面白いアイデアがある」と言っても、普通、自分の仕事に関係なければそんなに話は聞かないですよね。でも、VCはそういった話を聞くことを仕事にしているので、最終的にお金を出すかどうかは別にして、少なくとも話は聞く。そこにまず付加価値はあると思います。
よくVCは成功へのクリティカルパスが分かっているというような見方をされることがありますが、それは間違いで、むしろやってはいけないこと、禁じ手などが分かるんですよね。たくさんの事例を見ていますから。それは瀬戸さんにも話をしますね。
勝屋:本間さんはどういう基準で投資を決めているんですか。
本間:アーリーステージで関われる案件とミドル、レーターステージで関わる案件では、基本的に質が違うと思います。

アーリーステージで関われる案件に関しては、原則としてだいたいお金がどれくらいかかるかが決まっているものですね。開発が進むたびに資金を調達しなくてはいけないような案件は投資したくないので、「こういうプランでここまではお金をかける」ということがある程度見えている案件に投資をしています。そういう意味で瀬戸さんのところは当社でも投資できるぎりぎりの案件だったと思いますが、実際、30億円使うと言って本当に30億円までしか使っていませんからね。
あとは月並みですが、社長の考えがぶれない会社ですね。社長の考えがぶれるケースは予想以上に多いです。僕もこの仕事に入ったばかりの頃、社長は何でも見えていてオペレーションをしていると思っていたんですが、実際はかなりぶれるんですよね。もちろん、そこをぶれないようにするのがVCの仕事だとは思いますが、あまりにもぶれやすい社長には投資をしてはいけないなと思います。
1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。1999年ITベンチャー開拓チーム(ネットジェン)のリーダー、2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation,Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。7年間で約1800社のベンチャー経営者、約700名のベンチャーキャピタル、ベンチャー支援者の方々と接した。Venture BEAT Project企画メンバー、総務省「情報フロンティア研究会」構成員、ニューインダストリーリーダーズサミット(NILS)企画メンバー、大手IT企業コーポレートベンチャーキャピタルコミュニティ(VBA)企画運営、経済産業省・総務省等のイベントにおけるパネリスト、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の中小ITベンチャー支援事業プロジェクトマネージャー、大学・研究機関などで講演、審査委員などを手掛ける。ベンチャー企業−ベンチャーキャピタル−事業会社の連携=“Triple Win”を信条に日々可能な限り多くのベンチャー業界の方と接し、人と人との繋がりを大切に活動を行っている。
また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ
機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、
ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」
のプランニングメンバーを務める。
趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)
勝屋:瀬戸さんも事業計画書の段階からぶれていないと伺いました。
瀬戸:事業計画書を作る時のつらい部分は、とにかく利益よりも売り上げを大きく見せないとお金が集められないことなんですよね。そういう意味では頑張り過ぎてしまったところもありますね。当初は薄利多売を考えていたので、すぐに年商2000億円くらいいくと考えていたんですが、途中でそういうやり方はできないと思って軌道修正をしました。でも、調達したお金は基本的に顧客獲得のために使う考えだったので、そこはあまりずれてないと思いますよ。
本間:事業のコンセプトはまったくぶれていないですね。当初からデータベースをどう作るかとか、検索エンジンをどう作り込むかといったことまで考えていましたから。
タイミングのずれはどんな事業でもあると思います。でも、コンセプトや狙っている市場がぶれると投資家としてはかなり困ってしまうんですよね。MonotaROの場合も都度いろいろ微調整をしているので、数字面では全然違います。でも、コンセプトや、狙っている市場、どうしてこのビジネスは勝てるのかという部分は5年前と変わっていないんですよ。それはすごいと思います。
勝屋:経営者側として、VCとどう付き合ったらいいと瀬戸さんは考えますか。
瀬戸:それはもう正直にやっていくしかないと思いますよ。私の正直さが一番試されたのは、やっぱりVCからお金を集める時でした。何十社も回って全部断られたのですが、たいてい1回目に会ったときには断られないんですよ。「もう1回来てください」「もう1回来てください」と言われるうちに、駄目なのかなというのが分かってくるんですよね。
そうやって何回も自分の考えを否定されていくとだんだん自信がなくなってきて、「瀬戸さん、このビジネスモデルってこういうことですよね?」と言われると、必ずしも自分でそう思ってなくても「そうです」と言ってしまう時があるんですよ。相手に迎合しちゃうんですね。本当に1度そう答えてしまったことがあって、後から電話をして「実はそうじゃないんです」って説明したこともありました。
結局、その会社は出資してくれませんでしたが、いい加減な返事をしたまま出資してもらっていたら、あとで問題になったと思うんですよね。だから、自分のやろうとしていることに自信があるなら正直にやった方がいいし、うまくいってないことがあったら「うまくいってない」と言った方がいいと思います。VCに限らず、すべての株主に対してそうするべきだと思いますよ。今、世の中に起きている問題の大部分は、正直に話さなかったことから起きていると思うんですよね。やっぱり正直が一番だと思います。
勝屋:本間さんと出会って良かったと思いますか。
瀬戸:社長というのは本当に孤独な仕事なので、「瀬戸さん、その通りですよ!」「それはうまくいきますよ!」って背中を押してくれる人が欲しいものなんですよね。社員にそれを言わせたら会社が駄目になってしまうので、社員に言わせてはいけないんですが、やっぱり誰かに認めてもらいたいという心理はあるんですよ。そういう時に本間さんが声をかけてくれるのは嬉しいですよね。
しかも、本間さんが言うということは、いろんなベンチャーを見た上で客観的に褒めてくれていると思えるじゃないですか。それはすごく勇気づけられますね。
私にとって一番困るVCは、すぐに利益を出せというタイプなんですよ。早い段階から利益を求めるのは地獄への一本道だと私は思っていて、最初は苦しくてもお金をかけていかないといけないと思っているんです。それを本間さんは理解してくれます。VCは短期的な見方になりがちなのに、本間さんは小さな浮き沈みに関しては何も言わないんですよ。うまくいっている時だけ褒めてくれる。それはすごく感謝していますね。
本間:お褒め頂いてありがたいです。ただ、これも相手を見て言っているところはあるんですよね。瀬戸さんはこれだけ細部を詰めて事業をやる人なので、人材に関することなど、普段なかなか手の回らないところ、社員の方に相談できないことを僕がやる方が意味があると考えています。あと、基本的にVCは、投資後はネガティブになっても仕方ないんですよ。前向きなことしか議論する意味がないんです。批判を含めた議論は投資する前にすることで、投資してからはそういう無駄な時間は社長から排除した方がいいと思っています。
勝屋:瀬戸さんは、今後さらにMonotaROをどう成長させていきたいですか。
瀬戸:できるだけ儲けたいというのは経営者として当たり前のことで、それは頑張りたいんですが、それは目標として意味がないと思うんですよね。100億円より200億円儲けたいと思うし、200億円より300億円の方がいいに決まっている。
だから本当に最後に意味があったと思えるとしたら、それはどういう会社を作ったかだと思うんです。会社という言葉を逆さまにすると社会ですよね。だからいい社会を作れたかどうかが私にとっての評価になると思います。この場合、働いてくれている従業員が社会の構成員です。従業員がこの社会にいれて良かったと思ってもらえるような会社を作れたら、それは私の仕事が成功したということなんだと思います。それはひとつの目標にしたいですね。
勝屋:今は大阪に本社を置いていますが、拠点を東京に移すことは考えていますか。
瀬戸:それはありえないですね。ふたつ理由があって、ひとつは今当社で働いている従業員は、大阪の会社として入社していることです。それを異動させるというのはそれだけで従業員にとっては苦痛ですよね。
もうひとつは、地理的な問題です。この事業を始めてから分かったことなんですが、当社が取り扱っているような商品は、必ずしも翌日に配達する必要はないんですよね。ある程度の在庫はどこの事業所も持っていますから。非常にニッチな商品が多いので、在庫は持っておく必要はあるんですが、物理拠点をたくさん持つ必要はないんです。
実際の売り上げ構成を見ても、県による違いはほとんどありません。距離によって配達に必要な日数が違うにもかかわらず、県の差はないんですよ。拠点を1カ所に集約させることで、本当にたまにしか注文が来ないニッチな商品まで在庫として持っておけますし、商品の点数を広げられるということがお客さんの利便性にもつながるんです。
勝屋:なるほど。本間さんの今後の目標は何ですか。
本間:VCとベンチャーは役目がそもそも違うので、自分がベンチャーをやるということはないと思いますが、僕が一番嫌なのは能力がある人が何もしない状態なんです。先ほどの社会の話に当てはめれば、それは一番駄目な社会だと思うんです。能力がある人が適切な能力を発揮するためにVCがあるのだとすると、大企業にいる方を外に連れ出すとか、ベンチャーをやっている人をさらに大きくするといったように、もともと能力がある人をその能力が発揮できるようなポジションで仕事をさせてあげることができればいいと思っています。

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