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 企業が成長する過程では、決して経営者1人の努力だけでは無理だろう。資金はもとより、経営に関するアドバイスなどさまざまな支援が必要になる。こうした役割を担うひとつがベンチャーキャピタル(VC)だが、経営者とVCはどのようにして出会い、具体的にどういう関係を構築していくのか、そして人物像は。

 IBM Venture Capital Group日本担当の勝屋久氏が紹介する形式で、VCと経営者の両者に対談してリアルにお伝えします。第3回は、前回のインキュベートキャピタルパートナーの赤浦徹氏よりご紹介の日本ベンチャーキャピタル株式会社 インベストメントマネージャーの照沼大氏と、株式会社メンバーズ 代表取締役社長の剣持忠氏の登場です。

勝屋:照沼さんがベンチャーキャピタルを始めたきっかけをつくったのが剣持さんだったとお聞きしましたが、まずそのあたりの経緯をお聞かせ願いますか。

照沼:もともと僕は、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)という外資系のコンサルティング会社で4年半くらいコンサルティングをやってました。その後、次はどうしようかと考えた時に、大手企業を対象としたITコンサルティングというのも企業経営の核心になかなか触れられないビジネスのような気がして、中堅・中小やベンチャー企業のコンサルティングみたいなものをやりたいなと思ったんですね。ちょうどその時、前の会社の先輩からプレステージ・インターナショナルという会社でベンチャーコンサルティングみたいなことを始めるからお前も来ないかと誘われたんです。

 結局、そこではシステムの統括マネジャーをしていたんですが、そこに剣持さんがベンチャーキャピタルにいた頃の後輩である方がいたんです。それで、その方といろいろ話しているうちに、「あなたがやりたいのはベンチャーキャピタルが近いんじゃないの?」と言われたんですよね。ベンチャーキャピタルという業種の名前は知ってるけど、中身はよく分からないなあ、と思っていたら、いろんな人を紹介してくれました。最初に紹介してもらったのが創業間もない頃の剣持さんだったんです。僕はまだコンサルティング会社を出たばかりだったので、その時、剣持さんと話をしていろいろ怒られましたね(笑)。「ごちゃごちゃ言ってないで俺と一緒にこの日本を変えることを考えようよ」と言われたりして……。すごい衝撃を受けました。

勝屋:剣持さんから見て、照沼さんの最初の印象はどんな感じだったんですか。

剣持:最初はものすごくサラリーマンっぽいと思いました。若いんだからもっとバーンとやっちゃった方がいいんじゃないの、という印象でしたね。じゃあ、ついでに誘っちゃえ、みたいな(笑)

照沼氏(左)と剣持氏(右)

照沼:今から思えば誘っていただいていたようなんですが、その時、僕はガーンと衝撃を受けて、ベンチャーの世界を強烈に意識するようになったんです。どちらかというとベンチャーを起業する方向も考えたりしたんですけど、思っただけで、よく考えたら実は起業までしてやりたいことがあった訳ではなかったんですよね。一方でベンチャーキャピタルはすごく意識するようになったので、1997年の春くらいからいくつかの会社をあたり始めていました。ただ、その頃は貸し渋り、貸し剥がしの真っ直中で、ベンチャーキャピタルも中途採用はしてなかったんですよ。その時にたまたま採用していた数少ないベンチャーキャピタルが今の会社だったということです。入社許可をもらったのが1998年の初めで、実際に働き始めたのが、同年の初夏ですね。

勝屋:その照沼さんが所属している日本ベンチャーキャピタルはどういう会社ですか。

照沼:特徴としては、たぶん業界で初めてだったと思うんですが、投資担当者にインセンティブ制度を付けていることです。ですから良い意味で一匹狼タイプの人間が集まってきて、ここ数年は特に良い雰囲気になっていますね。

勝屋:今までクレイフィッシュやケンコーコムなどのIT関連ベンチャー企業に投資され、すごい実績をだしている照沼さんですが、フォーカスしている投資領域はやはりIT関連系なんでしょうか。

照沼:そうですね。もともと企業向けのソフトウェアやソリューションを追求しようと思っていました。そのきっかけは、後輩が過労死してしまったことなんですよ。システム構築の現場はいまだに大変で、そもそも作っている側が苦しい思いをしているコンピュータシステムが使いやすいわけがないと思っていたんです。生産性を上げて、最終的にはユーザーが使いやすいシステムを作りたかったですね。そういうことができるベンチャー企業を探そう、もしくは一緒に作っていこうと、この業界に入った頃は思っていました。

 まだ、そこは壁が厚くてうまくいってないのが現状ですが、そこから派生して投資したインターネット関連やSIerなどのITサービスで、今はうまく行った事例が出てきたという感じです。そうこうしている間に、最近はもともと興味があった製造業にも触手を伸ばしている状態ですね。日本はやっぱり製造業の国であり、ベンチャーが起こせるイノベーションもあるはずだ、とういう実感はますます強まっています。

勝屋:そんな照沼さんの投資先の1つがメンバーズさんですが、メンバーズさんはひとことで言うとどんな特徴を持った会社ですか。

剣持:ひとことで言えば、企業のインターネットマーケティングをワンストップで支援する会社です。もちろん僕らが提供できないものに関してはアライアンスを組んでいるところと一緒に提供するんですが、お客さまのマーケティングゴールの達成のために必要なものをプランニングしていきます。そこでお金を取っているわけではないんですが、そのプランニングが商品といえば商品ですね。提案書が商品で、そこに付属するもので売り上げがついていくという感じです。

 メインはウェブ制作と広告でも、本質的にはそこなんです。メディアを売るとか、ウェブを作るというよりは、最初のプランが本当の商品なんですよね。そこでコンペに勝たないと意味がないんです。当社のプランを必要とする会社は当社を選んでくれますし、やることが決まっているから安い方がいいという会社には選ばれないですね。

勝屋:トヨタやキヤノンなど、日本そして世界を代表する大企業をお客様としてサービスを提供しているのがすごいと思うんですが、どうしてメンバーズさんにはそれができるんでしょうか。

剣持:まず、プランニングに重点を置いているということ。それから、比較的、幹部連中がリアル企業から来ていますし、広告代理店からも来ている人間が多いですしね。役員の年齢も40〜45歳くらいなので、そのあたりが大企業向きなんでしょう。クリエイターでもスーツを着て出向いて行くことが多くあるし、大手企業と継続して取引をするためにいろいろな側面で品質を高めてます。ウェブ制作に関わる業務フローに関するコンサルティングなども我々でやったりしますから、そういう時によれよれのTシャツじゃないですよね。アートやクリエイティブだけじゃないよ、というところが大企業に受け入れられているベースかもしれません。

 やはり大手企業と取引するには信用が大切だと思ってます。例えば、全日空さんとの取引実績などを認めてもらいキヤノンさんと取引が始まって、そしていろいろな大手製造業会社に取引が派生していきました。また、ある時名古屋地区の著名な大手企業と取引することが出来て、それをきっかけに名古屋の有力会社と次々と取引させていただけました。そして最後にトヨタさんとも取引することができました。やはりお客様の信用が大きいですね。

株式会社メンバーズ 代表取締役社長
剣持 忠

1990年早稲田大学教育学部卒。日本合同ファイナンス株式会社(現株式会社ジャフコ)入社後、国内ベンチャー企業向け投資育成業務に従事し4社の株式公開を支援。1995年株式会社メンバーズ設立。

趣味:フライフィッシング、ゴルフ

勝屋:すばらしいです!そのメンバーズさんに照沼さんが投資したのはどういうきっかけだったのでしょうか。

照沼:1996年ぐらいに初めてお会いしたあと、時々お会いさせて頂いていたんですが、僕がこの業界に入った1998年の中頃は、剣持さんもそれほどベンチャーキャピタルから投資してもらおうという考えもなかったと思うんです。まあ、ご自身がずっとその世界にいたからかもしれませんが……。でも、1999年に入って大勝負に出る決心をされたようなんですね。その時にいくつかのベンチャーキャピタルに声をかけられて、最初に我々が極めて少額ですが出資させて頂いたんです。

剣持:ちょっと訂正させて頂くと、最初からベンチャーキャピタルは入れるつもりだったんです。お金が無かったので毎年のように少額の増資を繰り返していたんですが、当時、まだまだ保守的だったベンチャーキャピタルにとって魅力的な事業計画を披露できる段階ではなかったので、ベンチャーキャピタルに入ってもらう時期ではなかったんですね。もっと明確なビジョンを描いて、規模を大きくしていく上でベンチャーキャピタルは必要だと思ってたんですが、そのタイミングを見ていたんです。それからあの時はコンペでたくさん呼んだわけではなくて、照沼さんメインでやってもらったんですよ。まずは信頼できるベンチャーキャピタルに入ってもらって、次に高い株価でまたやるという気持ちだったんです。その1回目だったんですよ。

勝屋:なんか照沼さんにとって剣持さんは、良き先輩であり、良き兄貴という感じに見えますね。照沼さんご自身では剣持さんのことをどう見ていらっしゃいますか。

剣持:役員になってもらって、役員会でも社外取締役として貢献しようと一生懸命やってくれたんですが、最初は手探り状態でしたよね。当時、ベンチャーキャピタルさんはみんな社外取締役として会社に貢献しようと試行錯誤してたんですが、週に1回しか来なくて、会社を経営したことのない人が経営指導をするというのは相当ハードルが高かったと思うんです。だから大変なことも多かったと思います。

 でも最近は、人に迎合するとか、社長さんに気に入られようとかではなくて、自分の意見は言うというスタンスに変わったと思います。やっぱりサラリーマン、営業マンっぽい時は、人に好かれるための発言が多かったですからね。今は僕がムッとするようなことも平気で言いますよ。でも、ムッとするようなことも言ってくれるからこそ、アドバイザーですからね。

照沼:僕としては最初、正直、何をしたらいいのかわからなかったんですよね。だから、とにかく人に会いまくったんです。初めは、剣持さんにも言うこと言うことすべて反論されましたから悔しくてね。どうしたらいいこと言えるかな、と考えてました。気に入られようというより、悔しかったんですよ。このままでは何も貢献できないなと思って……。最近、ようやく何とか私も結果が出てきたので、少しはお役に立っているかな、というところです。

勝屋:そう考えると、照沼さんにとって剣持さんは、先輩というか、良き兄貴という感じなんですね。照沼さんご自身では剣持さんのことをどう見ていらっしゃいますか。

照沼:お付き合いを始めた頃は、圧倒的に先輩でしたね。とにかく竹を割ったような性格の方ですから、剣持さんのようなタイプの起業家が増えたら世の中もっと良くなるだろうなと、ずっと思って付き合ってきました。メンバーズにも苦しい時期がありましたが、剣持さんは乗り切られました。その時は大したことはできませんでしたけど、僕も多少なりとも心理的にはサポートをさせて頂けたとしたら嬉しいです。

照沼氏(左)と剣持氏(右)

勝屋:成長をめざすベンチャー企業において、ベンチャーキャピタルの役割が重要だといいますが、そのあたりも含めて、照沼さんがいてくれて助かったことは具体的に何でしょうか。

剣持:2つあって、1つは良き相談者ということ。事業会社の株主とベンチャーキャピタルの株主とは、やっぱり若干立ち位置が違いますよね。ベンチャーキャピタルの担当者はこちらと一緒に話ができるので、そういう意味で良き相談者ですね。もう1つは、どうしても近視眼的になってしまうところや、自分たちの強みをよく見ていない時、視野が狭くなってライバルや市場の変化に目が届いていない時などに、こういう見方をしたらどうですかと、自分たちでは気づかないところを気づかせてくれるような意見を言ってくれることですね。

勝屋:照沼さんは適切な意見いう良き相談者なんですね。話は少しばかり変わりますが、照沼さんはベンチャーキャピタルの仕事をしていて嬉しく感じるのはどういう時ですか。

照沼:やっぱり投資している会社が成果を出せた、成功を収めたと思える時ですね。ベンチャー企業は厳しい時期の方が多いので、心を合わせ、大きな受注獲得に成功した時や、厳しい局面を何とか乗り切った時など、嬉しいですね。そういう積み重ねがあって上で、株式公開を達成し、起業家と喜びを分かち合えるところまでいけると、嬉しさもひとしおです。

 ただ、企業家の方は株式公開しても会社は続きますからね。我々もその後もご一緒できるようなビジネスの進化を考えたいと思ってます。今のベンチャーキャピタルは株式公開で止まってしまうんですよね。その後も会社は継続していきますので、そこにどう関わっていけるかということを真剣に考えてます。

勝屋:ベンチャーキャピタルとの理想的なつき合い方ってどういうものなんでしょう。

剣持:まずはお金ですよね。お金があるなら(ベンチャーキャピタルを)入れない方がいいじゃないですか、はっきり言って。本当にその個人にアドバイスを欲しいと思ったらそのコンサル料的な出資を受け入れるということはあるかもしれませんが。その場合も当然人で選ぶべきだと思います。会社ではないですね。ただ、本当の友達になりすぎるのも良くないかなと思います。的確な意見をもらえなくなってしまいますからね。反対の場合はきちんと反対してもらいたいし、良き相談者であって欲しいし、そのバランスは難しいですよね。

 また、ベンチャーキャピタルは金融系や独立系、外資系、事業会社系といろいろなベンチャーキャピタルがありますが、この中には会社としてベンチャーキャピタル業務そのものから撤退する場合もあります。例えば、「事業会社系ベンチャーキャピタルが本業に専念するため、ベンチャーキャピタル業務から撤退するので、保有するあなたの会社の株式を売ります」というベンチャーキャピタルは一番よくないです。撤退する可能性が少なそうなベンチャーキャピタルを選んだ方がいいと思います。

日本ベンチャーキャピタル株式会社 インベストメントマネージャー
照沼 大

1991年5月 アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)入社。1995年9月 株式会社プレステージ・インターナショナル入社。1998年7月 NVCC入社。企業向けソフトウェア関連と通信関連のSEのバックグラウンドを活かして、ソフトウェア、ITサービス、製造業関連を主要領域に投資を行う。

趣味:スポーツ鑑賞、映画鑑賞、沖縄に行くこと、釣り(昨夏釣ったマグロは痺れました〜)

投資先:ケンコーコム(東証マザーズ:3325)、ベネフィット・ワン(東証2部・JASDAQ:2412)、ディー・エヌ・エー(東証マザーズ:2432)、CIJ(東証1部:4826)、三井情報開発(東証2部:4846)、クレイフィッシュ(現e−まちタウン・東証マザーズ:4747)、インフォプラント、@IT(現ITmedia)、コミュニケーションオンライン(現アエリア・大証ヘラクレス3758)、ベストリザーブアーバンコミュニティオプトラン、WaveSmith Network、Nauticus NetworkメンバーズNCネットワークデバイスタイルJCDPegasus Technologiesワークス&アソシエイツイーズ・コミュニケーションズワイヤーアクション

勝屋:ベンチャーキャピタルが投資先ベンチャー企業の株主として撤退をするのは、具体的にどういう時なんでしょうか。

照沼:ちなみに、剣持さんのケースは、株主であるVCが、全面的にVC事業から撤退することになったので、引き上げさせて欲しいというものでした。VCであれば、中長期のスタンスでしっかり見てくれよ、という意味でおっしゃっているのだと思います。本当に大変そうでした。そのため通常のケースとはやや異なります。

 通常、ベンチャーキャピタル(投資家)が投資先ベンチャー企業の株主として撤退を意識するのは、経営者と考えてることにズレが生じてきてしまう時ですね。それが表面化してしまうのは、結果が出ない時です。売上が上がらない、お金がなくなる。それ自体は我々も慣れているんですが、その時にどうしたいかというプランと強い意志が明確に見えてこないと、追加投資をするとか、投資をしてくれる人を一緒に探しに行くというような行動ができにくくなるんですよね。その時にこちらがあまりうるさく言うと、だんだん受け入れてくれなくなってしまったりして……。そういう時はすごく落ち込みますね。

 経営者がそういう人だって最初からわからなかったのかと突っ込まれそうですが、実はそういう予感がしてることは多いんですよ。ただ、そのビジネスが極めておもしろく見えて、投資したいと思ってしまうと、人への評価を棚上げして投資してしまうこともあるんですよね。そういう場合はやっぱりうまくいかないです。日本の場合は途中で経営者を変えることはかなり難しいので、立て直しも困難ですしね。

勝屋:次に若い経営者の方へのアドバイスとしてはどんなことがありますか。

照沼:ベンチャーキャピタルも、ビジネスパートナーの一つだと思っています。お互いの利害が一致する場合もあるし、反する場合もあります。そうした、我々のビジネスの特性もある程度は理解してもらわないとスタートできません。それを理解した上で、ベンチャーキャピタルと付き合う前には、よく考えた方がいいと思います。借金は返したら終わりかもしれませんが、株主はそう簡単に変えられませんからね。ベンチャーキャピタルと付き合うことにした場合、キーはやっぱり人なんですよ。ウマが合うこと、人となりなど、兎に角、人で選んだ方がいいと思います。

勝屋:ベンチャーキャピタル=人なんですね。ところで、最近、ベンチャーキャピタリストになりたいという方も多いのですが、ベンチャーキャピタルの理想像とはどういうものなのでしょうか。若い方へのアドバイスでもいいんですが。

剣持:理想を言えば、経営者出身で、自分の資金を入れて、オウンリスクでやる人でしょうね。でも理想論を言ってもしょうがないので、アドバイスであれば、まずは自分のやりたいことをはっきりさせることでしょう。僕がジャフコに入った時は、将来、自分で独立するために修業で入るという気持ちでした。それを許してくれる会社でもありましたからね。そのかわり勤めている間は一生懸命そこで成果を出すまでやりました。

 その会社にいるか、独立してやるかは別にして、自分でソニーやホンダのような会社を作ろうと思ってやっているのか、修業して自分で始めるのか、はっきり公言してやった方がいいと思いますよ。そこが曖昧だと中途半端になってしまうんですよね。よく起業家志望の学生が「成功のコツは何ですか?」なんて聞いてきますが、毎日どうやったら成功するか、どうやったらうまくいくかと一生懸命考えた先にしか成功はないです。どうやったら成功するのだろうと一生懸命に考えもしていない人に成功のコツを教えるのは無理だと思うんですよね。将来の目標は何なのか、自分は何をしたいのかを自問自答したらもっと今何をすべきなのかがいろいろ見えてくるんじゃないですかね。

照沼:経営者出身という話が出ましたが、僕はちょっと違って、成功された経営者の方がもしベンチャーキャピタルをやろうとすると、やっぱり難しいところもあると思うんですよね。僕らの仕事もシードやスタートアップなど初期のステージに寄っていって、米国で生まれたベンチャーキャピタルにいい意味で近くなってきてると思うんですが、まだ未成熟な部分も多い。そうすると現場で膝を擦りむいたり、頭をぶつけたりすることもあるので、それなりに事業経験はあった方がいいと思いますが、大成功された方よりは少し若い方がいいような気がしますね。ある程度は経験が必要なので20代は難しいでしょうが、30〜40代くらいの人がやった方がいいと思います。アドバイスとしては、自惚れずに、ビジネスパートナーとしてどうすればいいか真剣に考え、こちらからやれることを全部やるしかないと思います。

左から勝屋氏、照沼氏、剣持氏

勝屋:照沼さんの将来の夢はどんなものでしょうか。

照沼:少し前までは自分で起業するようなことも考えたりしていたんですが、今はベンチャーキャピタルをもっと突き詰めていこうと考えています。ベンチャーって何で必要なのかと考えたことがあるんですが、やっぱり人間は新しいものを生み出していくことにワクワクするもので、それが人類の発展を支えてきたと思うんです。だから人間の欲求として起業したいという人は今後も間違いなく出続けると思います。

 自分はひとりでも多く、株式公開を果たす起業家の方々をサポートしていきたいですね。その中から日本を代表する会社が出てくれば最高の喜びだと思います。業種は固執しすぎないようにしようと思っているのですが、この数年で、人々の生活を大きく変えたインターネット、モバイルなどは引き続きサポートしていきたいです。また、企業向けのソフトウェア・ソリューションですね。日本から海外へ輸出しているものはないので、起業家の方々とチャレンジして行きたいと思います。その後は製造業・エレクトロニクスを思いっきりやって、最後は農業や漁業を手がけたいと実は本気で思ってます。

勝屋:ありがとうございました。多くの人に照沼さんが愛されている人間的な魅力がわかりました。次回、照沼さんよりご紹介いただく株式会社リヴァンプの上田谷さんとニュー・フロンティア・パートナーズ株式会社の鮫島さんですが、最後にお二人の印象を聞かせて頂いてよろしいですか。

照沼:上田谷さんは、頭脳も身体つきも極めてスマートな方ですが、実は物凄く熱い方です。率直で物怖じせず、行動も素早く、汚れ仕事でも何でもやる方で、ケンコーコムでお仕事していた時(当時上田谷さんは大前・アンド・アソシエーツに所属)は、我々のダイナモとも言うべき方でした。

 鮫島さんは、一見クールな風貌ですが、やはりとても熱く、かつ親身な方です。発せられるコメントやご紹介などは配慮が行き届いており、それでいてハイレベルです。また、ご本人は余りおっしゃいませんが、成功事例は業界でも屈指です。

 お二人に共通している点は、誠実で、掛け値なしに信頼できるということです。当然、ケンコーコム経営陣からの信頼も絶大でしたし、他の起業家からの信頼も厚いです。この連載でもしばしば指摘されているように、会社ではなく、人が重要です。起業家とベンチャーキャピタリストの間、そしてベンチャーキャピタリスト同士の間、その信頼感がとても重要です。そんなお二人とお仕事をご一緒できたのは、私にとって誇りでもあります。

次回
IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。1999年ITベンチャー開拓チーム(ネットジェン)のリーダー、2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation,Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。7年間で約1800社のベンチャー経営者、約700名のベンチャーキャピタル、ベンチャー支援者の方々と接した。Venture BEAT Project企画メンバー、総務省「情報フロンティア研究会」構成員、ニューインダストリーリーダーズサミット(NILS)企画メンバー、大手IT企業コーポレートベンチャーキャピタルコミュニティ(VBA)企画運営、経済産業省・総務省等のイベントにおけるパネリスト、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の中小ITベンチャー支援事業プロジェクトマネージャー、大学・研究機関などで講演、審査委員などを手掛ける。ベンチャー企業−ベンチャーキャピタル−事業会社の連携=“Triple Win”を信条に日々可能な限り多くのベンチャー業界の方と接し、人と人との繋がりを大切に活動を行っている。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ 機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、 ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」 のプランニングメンバーを務める。

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)