Tech Venture 2008
高瀬徹朗
地上波全チャンネル、24時間すべての番組を録画する――。
優れたベンチャー企業を選出する「Tech Venture 2008」に選出されたPTPの提供する大容量ハードディスクレコーダー「SPIDER PRO」は、そんなテレビ大好き人間の夢を叶えてくれる画期的製品だ。
すでにプロ用として優れた効果を発揮することは折り紙つきながら、その存在を知る一般ユーザーから製品を求める声が絶えないという。
「SPIDER」を世に送り出した同社代表取締役社長である有吉昌康氏もまた、自他共に認めるテレビ好き。今後、どのようなビジネスモデルを描いているのか、語ってもらった。
1998年、米国で発表されたハードディスクレコーダー「TiVo」との出会いが事業の出発点です。ハードディスクレコーダーの登場はテレビ放送サービスとインターネットの接続を可能とし、革新的にライフスタイルを変えるものにつながると感じさせました。そして2000年5月、PTPを設立してイメージを具現化させるために動き始めました。
事業内容はハードウェアを作るだけではなく、SPIDERに関わるクライアント、サーバー両方のソフトウェアを自社で開発し、ライセンス供与もします。また、SPIDERを通じて顧客に継続的にネットサービスを行っていくことによりユーザーの皆さまがSPIDERで録画した映像をとことん楽しんでいただく新たな視聴体験を可能にします。
例えば、出演者の詳しいデータを配信することで通常の番組表だけではヒットしない番組をSPIDERでは探し出すことができますし、そうやって新しく発見した番組を仲間に伝えて情報を共有することも簡単にできます。SPIDERを中心に、ハード・ソフトすべてをコントロールしつつ、お客さんの意見をフィードバックし、常にサービス向上に努めている、というのが弊社のビジネスです。
約1週間分のテレビ番組やCMを最大8チャンネル分同時に自動録画し、蓄積した映像を保存・検索することができる大容量のハードディスクレコーダーです。つまり、1週間分の放送内容がいつでも好きなときに視聴できるという、単純明快な製品です。古い映像が自動上書きされるため、手元には常に最新1週間分が蓄積されることになります。また、優れた検索機能により、タレント名や番組名に限らず、「聖火リレー」などフリーのキーワード検索ですべての露出シーンを見つけ出すことができます。
もちろん、資料として永久保存しておきたい番組やCMは保存・管理可能。また、必要な範囲だけの抜粋、簡単な編集、DVD書き出しも可能。書き出したDVDは、市販の端末で再生可能です。頭だし再生にも優れ、チェックしたいシーンのみをピタッと呼び出すことが可能です。
リモコンは、十字キーを中心としたシンプルな構成。その十字キーと決定ボタン、BACK、MENUの4種類のボタンだけで、簡単に使いこなすことができます。ユーザインターフェイスは、製品を開発する上で特に強いこだわりを持ちました。約2年間、50世帯の一般家庭でのモニターを通じてゼロベースで本当に使いやすいリモコンとGUIを設計・改善していきました。
有吉氏の起業のきっかけとなった「TiVo」が紹介された米雑誌『SUCCESS』
「TiVo」を見て衝撃を受け、ビジネスイメージを固める段階においては、まず、ユーザからの情報収集作業に努めました。それらをまとめ、家電メーカーに商品開発提案を行うためです。実際、レポートやデザインをまとめて提案を行いましたが、紙だけではメーカーは動いてくれません。そこで、プロトタイプ開発に着手します。
2005年、完成したプロトタイプをモニター世帯に配布、実践的な商品テストに入ります。そこからのフィードバックを製品に反映しているうちに、ついに「自分たちで本製品開発まで成し遂げよう」と決意しました。これは、ソフトからハードまですべてに責任を持つことで、ユーザーから寄せられる要望をすぐに反映する優位性を確信したことによるものです。
共存というより、もとより対立する軸のないサービスと考えています。ユーザー視点で考えれば「接触機会の増大」ということになるわけですから。ただし、インターネットを活用したサービスということもあり、テレビ局に誤解を与えることだけは避けるよう、慎重に進めた部分はあります。
そうした活動のかいもあってか、現在では多くの放送局関係者からも正しい理解を得ることができました。放送映像をすべて蓄積するという機能を考えれば放送事業者は大切なユーザーともなりえます。実際、多くの放送局で高い評価をいただけるようになりました。
もちろん、ルール上で放送事業の妨げになるような機能は用いていません。例えば、お気に入りの番組やCMを他のユーザーに勧める機能がありますが、これは「SPIDER」ユーザー同士でのみ有効であり、また動画そのものを流通させるものではありません。あくまでお勧め動画に関する情報を共有することで、個々のSPIDERから当該動画を呼び出すことができる機能。通信回線や社内LANによる動画のやりとりなどは敢えて行われないようにしています。
もともと「TiVo」を見て開発した製品ですから、当然、将来は幅広く一般家庭向けの商品にしたいと考えています。しかし、ステップとしていきなり一般向けの大量生産ビジネスは難しい。企業としても実績を積んで、厳しいプロの目でお墨付きをもらってから廉価版を出す、という段階を踏もうと考えていました。
現在は放送関係者のほか、一般企業でも120社以上でご利用いただいています。広報や宣伝、マーケティングなどのプロフェッショナルな方々がお使いになられています。
プロの方からのクチコミが広がり、いまの製品を自宅に「欲しい」と言ってくださる一般ユーザーも多いんです。価格面、サポート面は現状のままということを条件に販売していますが、こうした声を聞く限り、やはりいずれは一般向けへ、という気持ちが高まります。
もうひとつ、現在はアナログ放送対応機であり、完全デジタル放送移行となる2011年に向けてデジタル放送対応を考えていかなければなりません。コピー制御などデジタル固有の条件もあり、制度的な動きも見守りながら早急な対応を進めています。
これまではハード・ソフト、サービスなどすべてに責任もって自前で対応していくことに優位性を持ってきましたが、一般向け販売を行う際には「餅は餅屋」と考えています。量産、流通などさまざまな面で大手メーカーの優位性が発揮されることは確実ですから。
また、現在、検索などに関する各種メタデータ生成は外部に委託していますが、これも同様です。。顧客からのニーズはフードバックして共有しながら、専業の会社に任せることで、より詳細で優れた情報提供が可能となっているわけです。
「新たなライフスタイルの提供」という当初からの目的を果たすために、1社ではできないことは企業連携をして柔軟に対応しながらSPIDERの強みを生かして前へ進んでいきたいと考えています。
コメント ( 0 )