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 優れたベンチャー企業を選出する「Tech Venture 2008」に選出されたニワンゴは、もはやベンチャー企業の枠に収まらないほど圧倒的な知名度を誇る。コミュニケーション型動画共有サイト「ニコニコ動画」はPCのID登録者数が600万人を突破し、勢いはとどまるところを知らない。ネットユーザーを中心に高い関心を集めるニワンゴのビジネスモデルと今後の展望について、同社代表取締役社長である杉本誠司氏に語ってもらった。

既存概念崩した「ユルいコミュニケーション」

--ニワンゴ設立の経緯を教えてください。

 もともとは「新しいメールサービス」を展開することを目的として2005年11月に設立しました。ドワンゴの人間と未来検索ブラジル関連記事)の人間が一緒になって、ドワンゴの公式携帯コンテンツの枠を飛び出し、エージェント的にユーザーニーズに応えていこうと考えたのがきっかけです。

 設立の10カ月ほど前から、周囲の人たちと「新しいケータイサービスとは何か」ということを考えてきました。その中で「メール」というキーワードに着目し、メールは利用度の割にさほど進化しておらず、これを使って何か新しい遊びができないかと考えました。

 そうした話し合いの中で生まれたのが「メール検索」というアイディアです。メールは基本対話型であり、そのインターフェースを崩さずにコンテンツを検索できるサービスを考え、「ではどのようなコンテンツが適切なのか」という検討へと拡がっていきました。

 通信キャリア公式サイトのプロバイダは品行方正さが求められますが、川上(量生氏=親会社であるドワンゴ会長)をはじめ我々の発想は「人と違うこと」。公式サイトの場合、容認する側に保守性があるため、さすがに大きくはずれたことはできません。ニワンゴはレギュレーションに縛られることのない一般サイトの道を選んだため、サービス内容、あるいは人材登用などの面においていい意味で既存概念を崩すことができました。

--「ニコニコ動画」が成功した要因をどう捉えていますか。

 ニコニコ動画は一般的なカテゴリで分けると「動画共有サービス」。しかし、特徴は動画再生軸と同時にコメントの書き込みができ、また表示されることです。これにより、コミュニケーションツールとしての性格を持たせることができました。

 いわば、動画視聴における「1対1」の枠組みをはずしたこと。ひとつの動画を多人数で共有することができるのが「ニコニコ動画」です。

 他の動画共有サイトでも実質的に同様の楽しみ方がされているとは思いますが、コメントによってあたかも同じ人と同じ場所で共有しているような感覚を成立させる。我々は「非同期コミュニケーション」と呼んでいますが、こうした「ユルい」コミュニケーションのとり方がネットユーザーにマッチし、成功へとつながったと分析しています。

 例えば電子メールなど、もちろん相手が存在する前提で発信しますが、必ず読んでもらえるという保証は担保されていない。それでも、メールコミュニティは発展してきました。ブログやSNSも然り。必ずしも同期のタイミングは一定ではありません。そのようなコミュニケーションが発達したことが「ニコニコ動画」成功の背景にあったと考えます。

--「ニコニコ動画」のサービス展開における経緯は。

 2006年12月、「ニコニコ動画(仮)」を投入しましたが、このときはニワンゴという名前は開示せず、プロトタイプの形式でした。しかし、非同期コミュニティがユーザーのツボをついたらしく、急激にユーザー数が増加しました。これを受け、2007年1月に「ニコニコ動画」(β)がオープン。このとき、ニワンゴが運営していること、ひろゆき氏の参加も明らかになり、ネット上で話題を集めました。

着実さと明後日の方向への進化

 さて、ユーザー数はさらに増加しましたが、オープンサービスで運営されていたためYouTubeよりアクセス過多によって制限を受けることになります。そこで急遽、3月上旬に動画ストレージの「SMILEVIDEO」をスタートし、これを利用した「ニコニコ動画(γ)」を開始しました。

 また、動画を配信するためのインフラがある一定量でしかカバーできなかったため、10万人限定のID登録制度を導入。インフラ確保等を進めながら限定解除を進め、5月にはID登録者が100万人を超えます。

 その後、サービスは順調に拡大しますが、インフラの負荷、コスト負担が重くなったことを考慮し、6月から有料視聴回線のプレミアム会員制度を導入。これと期をあわせて「ニコニコ動画(RC)」に移行しました。

 7月には、動画に連動した商品をamazon の商品リストから貼り付けるユーザ向けツール「ニコニコ市場(仮)」を開始。商品紹介のコミュニケーションツールとしてスタートした同サービスが現在、収益を支える柱のひとつとして一本立ちしているのはご存知の通りです。また同時期、モバイルサイトでのサービスをNTTドコモおよびauで開始。また、PCのID登録者数は200万人を突破しました。

 さらに9月、ID登録者数が300万人を突破すると、10月には「ニコニコ動画(RC2)」ユーザー向け発表会を実施。新しい機能実装「ニコスプリクト」「ニコニコ割り込み」などを発表しました。さらに11月、ID登録者数が400万人に達すると、エイベックス、吉本興業などが公式動画をアップロードするなど、正規のコンテンツホルダーとの取り組みが開始されます。

 同月には、ヴィジュアリストの手塚眞氏を審査委員長に迎え、オリジナル動画を表彰する「国際ニコニコ映画祭」を開催。明けて1月にID登録者数が節目の500万人突破し、2月にはモバイルの登録者数が100万人を突破、NTTドコモ公式サイトにエントリーされました。

 3月10日には「ニコニコ動画(SP1)」に関する発表会を実施。ニコニコムービメーカー、ニコニコ外部プレイヤー、ニコ割ゲームなど新ツールや新機能やニコニコ生放送などの本格展開について皆さんにお伝えし、新たな方向性を示すことができたかと思います。

 SP1発表の際、我々は「明後日の方向に進化する」というコンセプトを示しました。多くの動画投稿サービスは今後、例えば圧縮技術の高度化、パートナーシップの拡大・強化などに進化の方向性を見出すことになろうかと思います。我々ももちろん、そうした進化も目指しますが、加えて「明後日の方向」にも駒を進める。具体的にはイベント実施やツール開発など、とにかくユーザーの動きを活発化できる企画性を持ちつつ進めていきたいと考えています。

動画以外もチャレンジブルに

--新たな文化を生み出した原動力とは何だったのでしょうか。

 ニワンゴの設立にせよ「ニコニコ動画」の提供にせよ、「ひろゆき氏や未来検索ブラジルの面々の協力」ということが言えると思います。特に「ユーザー喚起」に対する考え方。ここにおいて、いわば「2ちゃんねる的」要素が活かされたことが大きかった。

 インターネットは、大企業も一個人も同レベルでプレゼンテーションや会話が展開される場所。そのため、どれだけ多くの一般ユーザーを巻き込めるかがポイントになります。何に興味を持ち、そして動いてくれるのか――。特にブームを引率するネットリテラシーの高い層の人たちが何に興味を持ってくれるのかを読み取ることが重要なのです。

 「ニコニコ動画」はある意味、異質の動画共有サービス。いわばオンリーワンです。その支えとなっているのは「2ちゃんねる的要素」であると考えています。

 もちろん、一方で技術面も強く意識しています。ユーザー志向型のアナログ的雰囲気を成立させるためには技術力が不可欠です。より直感的で使いやすいサービスを提供すること。例えば、動画内容によって「もっとも盛りあがる」ためのコメント表示位置、スピード、表示タイミングなどをパターン分析し、ベストな形式で提供する。これも技術ノウハウのたまものです。

 このように、ユーザーにとってベストなサービス・ソリューションを提供する技術の開発に力を入れています。

--今後の展開については。

 「明後日を向いて」さらに明々後日の方向に向かうこともあるでしょう(笑)。やはり「人と違うことをやる」を目指していきますが、原点にあるのはユーザーニーズを理解し、その視点で次の展開を考えていくことです。

 理想として考えているのは、1日24時間の中で、必ず1度は「ニコニコ動画」に時間を費やしてもらうこと。ニュース、トピックス、コミュニティ、どれでもいいので。そのユーザーのかけがえのない時間の一部を「ニコニコ動画」に割いてもらえるという、ユーザーの誰もが満足していただけるプラットフォームでありたいと考えています。

 その他、世界展開について。言語対応、その国の文化に即した表示方法を検討して、実施していきたいと考えています。

 動画は恒久的なサービスとは考えていますが、それ以外についてもチャレンジブルにいこうと計画しています。

Tech Venture 2008
Tech Venture 2008とは?
2008年最も活躍が期待できるテクノロジーベンチャーに送られる賞と、受賞企業のご紹介を掲載しています。