2008年3月27日 13時42分
高瀬徹朗
「BuyMa(バイマ)」、「プレスブログ」、「filmo(フィルモ)」、「シェアモ(ShareMo)」――。エニグモが提供するサービスはどれも独自性に溢れている。仕掛け人は、元大手広告代理店勤務で現在、同社最高経営責任者(CEO)を務める須田将啓氏と田中禎人氏。優れたベンチャー企業を選出する「Tech Venture 2008」に選出された同社のビジネスモデルと今後の展望について、須田氏に語ってもらった。
インターネットを利用した新しいビジネスの企画・開発・運営を行うことを目的として2004年2月に設立した会社です。アイディアの発案者である私と田中が共同最高経営責任者を務めます。
この共同最高経営責任者というスタイルは当社の最も大きな特徴の1つで、お互いの意見を尊重し合う経営陣の姿勢が、社内の意見を尊重し合う社内風土のベースにもなっています。
主なサービスはグローバル・ショッピング・コミュニティ「BuyMa」、個人ブログを活用したプロモーションシステム「プレスブログ」、消費者参加型CM制作ネットワーク「filmo」、2008年1月からスタートしたソーシャル・シェアリング・サービス「シェアモ」です。このほか、filmoにプレスブログの要素を加えて「rollmio(ローミオ)」の名称で米国展開しています。
2002年のちょうどクリスマスの日、当時勤めていた博報堂で残業中に、田中と互いのアイディアを交換したのがきっかけ。そこで話題にのぼったのが「BuyMa」でした。その後、サービス実施に向けてブラッシュアップをかけ、企画を練りこんでいきました。
当初は「アイディアを世に出したい」という気持ちが強く、必ずしも自分たちが主導するという考えはありませんでした。そこで企画の精度と信頼性を高め、パートナー企業探しに奔走することになります。
当時、複数の企業が我々の企画を評価し、実践に向けて動き出したこともありましたが、いざビジネスとして進み出そうとすると思惑の違いが顕著になってくる。思い通りにならないどころか「思ったことすら出せない」状況が生まれてきてしまいました。
そこで自ら会社を立ち上げ、構想を実践するのがベストという判断に至ったのです。
世界各国で発見した素敵な商品を販売したいという「バイヤー」と、日本にいながら世界中の商品を購入したいという消費者をマッチングする、全く新しい形のショッピングコミュニティです。2005年の開始以来、現在では会員数30万人、バイヤーも世界54カ国1万人が参加しています。
市場はファッション関係が中心となっていますが、例えば「ニューヨークのクラブのみで販売されているライブCD」など、ロングテールな商品が取引されることもあります。ユーザから「こんな商品が欲しい」とニーズを吸い上げて買い付けに走るバイヤーも多く、単なる売買市場にとどまらない、世界を股にかけたコミュニティとして成長を続けています。
実際の取引においては、独自の決済システムを取り入れ、商品代金の決済代行をエニグモが行っています。これによりお金を払ったのに商品が届かない、商品を送ったのにお金が支払われないというトラブルを回避することができています。具体的には、注文連絡が入った段階で購入者の支払い金をバイマが仮押さえ(コンビニ・ATM・ネットバンク・郵便局などから)し、発送が行われた時点でBuyMaからバイヤーに振り込む、という形です。これを当社独自のアイディアとして採用し、現在では他社サービスでも導入するケースが増えてきました。
BuyMaは優れたサービスという自信がありましたが、ビジネスとして成立させるためには多くの参加者を集めて市場を活性化させる必要があり、収益化に時間がかかると考えていました。そこで、短期的に利益を生むビジネスとして生み出されたのが「プレスブログ」です。
いわば「ブログのメディア的利用」で、数あるブロガーに情報を投げ、記事化してもらうことで対価を支払うシステムです。即席の「口コミライター」を用意し、その力を結集させることでマスメディア並みの新たな広告ツールを創り出すことが狙いでした。
ブログによる口コミ効果はマスメディアとは異なる効果を持ちます。端的にいえば、マスメディアで100万人に伝える情報と、ブログ口コミで100万人に伝える情報とでは“中身の濃さ”が違うのです。
実際の運営にあたっては、記事内容に一定の方向性は設けるものの、主観的であっても批判的であっても構わないというくらいの自由度を持たせました。これも多くのブロガーに参加していただけるようになった要因のひとつと考えています。
2006年11月には、「プレスブログ韓国版」の展開も開始しました。これはフランチャイズ事業なのでエニグモに金銭的なリスクはありませんが、順調に収益に貢献してきています。
インターネット上で動画ニーズが高まりを見せてきたのを受けて導入したのが「filmo」です。クライアントから依頼を受け、そのコマーシャルフィルム作成を一般クリエイターにまかせる。消費者ならではの視点で制作することで異なる訴求力を生み出してもらうことが狙いです。
もちろん、動画ともなれば「誰でも簡単に」とはいきません。プロによって作品は審査され、優秀作にのみ対価が支払われる仕組みとなっています。厳しい審査を乗り越えた作品はマスメディアに登場するCMと較べても遜色なく、実際、電波への「逆輸入」が実現したケースもありました。
読み終わった本や捨て切れない洋服を「みんなで使いあおう」とシェアするサービスです。登録すると、欲しい人が引き取り、使用後にまた他の人に譲り、とシェアの輪が広がっていきます。このとき、発生するのは送料だけ。もちろん、気に入った商品があれば引き取ることもできます。とにかく「邪魔だけど捨てるのがもったいない」という商品をみなで使い合おう、という日本人の善意に期待したサービスですね。
個人の良さを引き出し、マスに匹敵するパワーを形成すること。これはエニグモが展開する全サービスに共通するキーワードです。個人のよさを引き出すためには、それぞれをつなぐ信頼性が必要不可欠。それを確保すべく、エニグモはサービス形態やオペレーションを通じて正しいルール、マナーを持った個人によるコミュニティ形成に努めてきました。
そして、エニグモの試みはすべて「世界初」。この目標に向かうモチベーションが、企業として個の力を結集させるための求心力となっています。その先に見据えているのはずばり、「世界進出」です。BuyMa、プレスブログ、filmo、シェアモのいずれも、当初から世界展開を視野に入れて構築したサービス。もちろん、海外と日本ではビジネスモデルが異なりますが、まずは国内サービスでノウハウをため、新たな一歩に向けた準備を進めています。
世界中の人が「シェアモ」でモノを使いあえる。そんな信頼感と善意のあふれるコミュニティを一日も早く形成したいですね。
コメント ( 0 )