2007年11月8日 23時02分
取材:島田昇(編集部)、文:光安竜也
ラテン語で「同時にいたるところに存在する」を意味するユビキタス。同名の社名を冠し、その実現を促すためのソフトウェア開発を行う同社が11月13日、新市場「NEO」に第一号として上場する。
生活の至るところにコンピュータが存在し、コンピュータ同士が自律的に連携して動作。いつでもどこでも、誰もが情報ネットワークにアクセスできる社会──。
現時点ではゲーム機向けの技術提供の比重が高い同社だが、ユビキタス代表取締役社長である川内雅彦氏は今後の成長に向けた壮大なビジョンを語る。同氏に上場までの経緯やなぜNEOを上場先に選んだのか、また、ユビキタス・ネットワークが社会にどのような影響を与えていくのかを聞いた。
2001年当時、マイクロソフトのエンジニアがスピンオフして創業しました。今話題の携帯用ゲーム機「ニンテンドーDS」で我々の技術を採用していただいてから実績が伸びているため、ゲーム機関連の会社だと見られがちですが、我々が本来目指している市場とは異なります。
ネットワークはLANの時代からインターネットの時代へと変遷をしてきました。「では、次に何がくるか」が我々のテーマであり、それがいわゆる「ユビキタス・ネットワーク」であると考えております。
元々の狙いはPCのような大型機器と違って、さまざまな小型デバイス(たとえば電球の裏についているほどの小型基盤)をネットワークに繋げる構想です。接続用ソフトウェアは一筋縄ではいかない問題で、それを「小さくて早くて軽い」にするのが元々のテーマです。
人の縁に恵まれたおかげで、最初は東芝のセキュリティ用ウェブカメラに採用いだけました。そのおかげか、次に半導体開発のルネサステクノロジと包括契約を結ぶことが出来たため、さまざまな場所で我々の技術が使われる運びとなりました。
任天堂と手を組めたことは運だと思っております。ライバルである「PSP」はコンセプトが小型PCみたいなもので、従来の技術の延長だったわけです。一方、ニンテンドーDSは従来にない考えが詰め込まれていて、開発の現場の空気が熱く、新鮮で楽しかったです。
しかし、玩具として非常にシンプルですっきりしている分、制約条件には厳しいものがありました。もっとも、我々は条件が厳しければ厳しいほどやりがいを感じるため、満遍なく力を発揮できたと自負しております。
また、弊社と任天堂はお互いの求めるものが80%合致していたものですから、残りの20%を両社間でつめました。ですから、非常に集中してリソースを投入したので開発期間は短く半年程度で済みました。
確かに、現状では不安定な経営であると認識しております。収益の柱は3本ないと安定して成り立たないため、あと2本を2010年ごろまでに確立します。
2007年時点で将来ネットワークに繋がるであろうデバイスは20億台強あり、年間成長率が20%あるわけなので、母数はかなり大きいと思っております。ゲームで調子がいいように思われている我々ですが、それはほんの一部。コア部分はこれからと考えております。
ゲーム機の次の柱として、我々はデジタル家電が重要な収益になると踏んでおります。
今後のIP放送対応ソリューションでメーカーが社内で行っている技術がハイビジョン画像のみだとしたら、我々はフルハイビジョン画像を映しながら、認証・暗号化コードやセキュリティにも配慮するといった数段上の物をご提供できる自信があります。すでに技術的検証は終えておりまして、テレビ機器メーカーと協力もさせていただいております。
確かに、大手メーカーも社内ソフト開発比重を増やしているのは感じています。しかし、ソフト業界も近い将来、専門分野に特化した業界とそれをコントロールする業界とに二分していくでしょう。我々はその中でネットワークという分野において総合的に技術をご提供できる会社を目指しております。
コンピュータのコードを書くには技術的な側面と芸術的な側面があります。技術的な側面となる数学的な知識が必要なことは言うまでもありませんが、芸術的な側面はセンスや経験の蓄積が問われるので、我々はむしろこちらを重要視しております。
職人気質と申しますか、小さくて無駄のない効率的なコードを書くことを至上命題としておりまして、我々の書くコードの美しさは他社に真似出来ないものです。
競合という意味では、我々の行っている範囲に絞ると直接競合しているケースはあまりありません。証券会社が類似企業として分類している会社はありますが、我々としては領域が異なると認識しているため、はっきりと申し上げることはできません。
白物家電をネットワーク化する構想自体は80年代までさかのぼることができます。ユビキタス・ネットワークの普及に時間がかかってしまったのは、白物家電を追いすぎてしまったのが第一の原因と考えております。
例えば、冷蔵庫を各家庭で買い換えるスパンは10年以上、しかも、冷蔵庫単体がネットワーク対応していてもまったく役には立ちません。また、バックボーンとなるネットワークも各家庭になかった。
ところが、現在は各家庭への光・ADSLなどのブロードバンドが普及し、無線LANの構築も珍しいものではなくなった。各ビデオゲーム機器メーカーから発売されているゲーム機もネットワーク標準対応が当たり前となってきている。
このように2000年当時とは違い、各家庭でのバックボーンが構築されていること、それに個人がお金を落としやすいエンターテインメント方面が多いことも普及に拍車をかけていると考えます。
わたしの考えるユビキタス・ネットワークの普及は(1)バックボーンの構築(2)エンターテンメントのシナリオの前進(3)ホームコントロール・ホームオートメーション(4)ユビキタス・ネットワークの実現――の4段階あります。
いきなりユビキタス・ネットワークの世界を実現させるのは難しいので、一つ一つ段階を踏まえて着実にビジネスの基盤としたいと思っております。
マザーズの株価指数もピーク時の数分の一まで落ち込んでいるので、「マザーズでなければならない」といった状況ではないのが一つあります。
また、ユビキタス・ネットワークは非常に長い時間をかけて構築していくマーケットです。その長期的な視野で支援していただきたい部分に対し、「マイルストーン開示」に象徴される成長性のある新技術・ビジネスモデルを支援するというNEOの趣旨が我々の求めるものと一致したというのが一つ。
最後の理由としては、第一号として名乗りを挙げれば露出効果も多いですし、我々のような小さな会社には宣伝効果もかなり期待できるといったところです。
しばらくはNEOでがんばろうと考えております。第二号以降については我々が考える立場ではないですから、ジャスダックさんにいい会社を集めていただいて、元気のなかった新興市場に風穴を開けてもらうことに期待したいですね。
2004年末に第三者割当増資をした際にベンチャーキャピタルともかかわっているので、上場はその時点で宿命付けられておりました。実際の準備にとりかかったのは2006年の後半からでした。
株主にどこへ上場するかは相談しておりません。我々がNEOに上場すると決め、主幹事証券の野村証券と主に相談して進めました。
それは事実と異なります。彼らの間で強力な話題性を欲しがったことはあるかもしれませんが、我々は依頼されて決めたわけではなく、NEO市場の魅力に惹かれて決定致しました。
上場準備期間の時ははっきりとどの新興市場に上場しようかは決まっておりませんでした。市場を決めようとしている時にちょうどNEOの発表がうまい具合にありましたので、もし発表のタイミングが数カ月ずれていたらNEOでの上場はなかったと思います。
特に反対はありませんでした。新興市場を単に知らなかったという理由もあったのかもしれませんが、役員の意思統一も早々にできました。
当社役員の監査役は3人が会計士、最高財務責任者は監査法人トーマツ出身です。会計・経理・財務的な監督は厳密に出来る体制をとっております。市場不振に対するアンチテーゼとして長く継続成長を実現できれば、我々にとっても勝算はあります。
これまで、米国の市場には強いソフト会社はいくつもあったわけですが、冷静に分析すると、一見すると強そうですが、北米以外の市場やPC以外のコンシューマで弱かったりします。
一方、日本のデバイス会社はコンシューマに強かったりしますので、うまく日本にいることの有利さを使ってビジネスを押し進めていきたいですね。
米国や英国にはもはやコンシューマエレクトロニクスの会社はほとんど残っていないわけですから、日本にいたことがうまく働いたと思っています。
我々は「縁の下の力持ち」ということでデバイスの下支えをしている会社です。その分、さまざまなデバイスに当社の技術を入り込ませることで、着実に収益を上げていきたいと思います。
バックボーンが出来上がっていますので、さまざまな面白いことができると思っています。ただ、自分の回りの数百のデバイスが見えないうちに動いているのが理想なので、目に見えて意識されているうちはまだ十分な段階とは言えないでしょう。
ホームネットワークでつながっている冷蔵庫の残り物で献立を立てるなどの例が近未来像としてよく使われておりますが、人間一人ひとりにデバイスが埋め込まれ、その日の体調を医者に送信し、メディカルチェックを受けるといったことも可能になるわけです。つまり、健康診断も不要になるかもしれません。
ただ、可能性が無限にありますし、どう進むか分からない点も多いため、「5年後はこうなっている」といった明確なビジョンは申し上げられません。市場の動向を見ながら実績を積み重ね、修正が必要な部分は修正をしていくということも重要になるでしょう。
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