2007年8月29日 16時11分
小林ミノル、瀬井裕子(編集部)
2010年には2兆8000億円に拡大すると予測されているネットオークション市場。この成長著しいマーケットに着目し、各オークションサイトに掲載された商品の横断的な価格比較ビジネスに乗り出したのが、オークファンだ。
オークファンは、これまで個人によって運営されてきた同サイトのシステムを譲り受け、会社組織として2007年6月にリスタート。Yahoo!オークション、ビッダーズ、楽天オークション、モバオクといった国内の主要オークションサイトと提携し、過去1年間の落札価格や関連データを公開しながら、オークションに関わる情報ビジネスを展開している。
同社社長の武永修一氏は、京都大学法学部4回生の頃からネットオークションを始め、その後事業化。これまで商品販売をメイン事業とするデファクトスタンダードの代表取締役を務めていたが、オークファン設立に伴い、同社代表の座を主要株主でもあるネットプライスの佐藤輝秀社長に譲り、オークファン代表取締役に新たに就任した。
「大学時代は弁護士を目指していたんですが、制度が変更されて大学4年の2002年から法科大学院が設立される2004年までの2年間、期間が空いたんですね。その間、休学して学費を稼いでも悪くないかなと思っていたときに、ネットオークションの存在を知ったんです。ちょうど不要になったパソコンがあったので、友人からデジタルカメラを借りて撮影し、自分で説明をつけて4万円で出品したら、なんと15万円で売れたんですよ」
「それ以降、販売データをエクセルに保存しながら、ありとあらゆるものを出品していきました。廃棄品を手直しして出品したり、学園祭のフリーマーケットで衣服を仕入れて大量に出品したり。面白いところでは、自分が大学受験のときに使った赤本を出品したら、“使っているからこそ価値がある”と言われて高値がついたこともあります(笑)」
「そのうち、メンズのブランド服が狙い目だということがわかったので、京都、大阪、神戸のリサイクルブティックに『売れないブランド品を委託販売します』という売り込みをかけて、出品し始めました。月100点ほど出品していましたね。平均単価1〜2万円で、粗利65%を目安にし、1日1万円貯めるという目標を立てて運営していました」
スタートから1年の間は1人ですべての仕事をこなしていたが「リサイクルブティックからの出品依頼が増えすぎてさばききれなくなり」、人員を増やし始める。すでにその頃には、事業を発展させて起業する方向にシフトチェンジしていたという。そして2004年4月に、デファクトスタンダードを設立。同社設立後は、物販事業をさらに拡大する一方で、出品支援ツールの開発や商品検索・入札代行など、業務内容も広げていく。その延長線上に、オークファンの存在もあった。
「どんな商品でも必ず値段がつきます」と武永氏「まだ会社化していなかった2002年の1月に、事業パートナーとフランスに買い付けにいって、深夜のネットカフェで商品相場を調べていたときに、オークファンのひな形となるサイトをみつけたんです。その当時からこういうサイトを自分でもできたらいいなと思っていました」
「でも、当時は誰が運営しているのかわからなかったんです。その後、個人がやっていることまでは判明したんですが、そこから先には進めませんでした。ところが2005年になって、パーティで知り合った人がその運営者と知り合いだというので、『会いたいもなにも…』ということで、急いで会いに行ったんです。会った当初は、他からもこのサイトを売却してほしいという話がいくつかあったらしく警戒されたんですが、粘り強く交渉した結果、ほぼ同じ年齢・同じ業種ということで、譲ってもらえることになりました。2006年の1月頃のことです」
そして、今年6月にデファクトスタンダードから新設分割というかたちでオークファンを設立。「商品販売を主な事業とするデファクトスタンダードから離れることで、データの中立性を確保できた」と武永社長は語る。同サービスの月間ユニークユーザー数は120万人。データの収集方法は、クロールやAPI、DBサーバへのアクセスなど、各サイトごとに異なっている。
オークションサイト大手「ebay」のノベルティグッズ。日本ではほとんど手に入らないという。「今後は、各会社がオークションを独自に始めると思います。PRADAが今年7月に期間限定のオークションを開始したことが話題になりましたし、イーベイもショッピングサイトをどんどん買収しています。海外への転売も当たり前になっていますし。アメリカではもはや『GMV=gross merchandise volume(総流通額)』が、指標となっています。もはやコマースとオークションの垣根がなくなりつつあるんです」
「現在日本には1000万人のネットオークションユーザーがいますが、潜在的なユーザーがまだ2000〜3000万人いるといわれています。その潜在層を掘り起こしていくのが我々の役目です」
「我々としても、「オークション」という概念にこだわらず、情報産業にシフトしていくつもりです。ビジネスモデルをどう構築するかが勝負なので、現在手元にある2億件の商品・価格データをはじめ、ユーザー・PVなどのマーケティングデータをどう活かすか考えているところです。会員制にしたり、統計情報をリサーチできるようにしたり、コミュニティ機能をつけたりしているのは、その第一歩です。ほかにも、データ販売事業やオークション関連の金融事業、セミナー事業などを視野に入れています」
「需要と供給の関係を公明正大に反映しているのが、オークションの価格じゃないでしょうか。オークファンのデータを見れば、どんな商品を他のユーザーが支持しているかも一発でわかります。新商品の人気も、初日の3時間の値段変動をチェックするだけで判明します。最初は全業者を敵に回すかもしれませんが、そういう消費者の側に立ったビジネスをし続けたいですね。株価に誰も文句は言わないじゃないですか」
流通コストの壁を限りなく低くする可能性のあるネットオークション市場において、誰もが参照する指標が定着すれば、それは大きな武器となる。「ゴールドラッシュ時代にリーバイスが大儲けしたように」(武永社長)、新しい潮流の側面からアプローチするビジネス展開を図る。
「オークションが大好きだった」ことがきっかけで入社する人もいる。利用者向けの機能の拡充とサポートを全面的に担当し「スタッフRのAucfanコラム」で情報発信を続けるRさんは、「もともとウェブの知識はまったくなかったですが、社長との距離が近くて日々どんどん進化していく仕事をしたくて。武永の人柄で入社したいと決めました」と言う。社内は常に打ち合わせや電話の声が絶えない。
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