2007年8月24日 18時00分
文:小林 ミノル
iTMSや着メロ•着うたを始めとする音楽配信が定着し、CD一辺倒だった音楽ソフトの流通形態が多様化してからすでに数年が立つ。CDの売り上げ枚数は減少し続け、大手を含むレコード店は苦境に陥いっている。
一方、デジタル配信の拡大により、JASRACに入る著作権料は堅調(2004年度=1108億円、2005年度=1135億8千万円、2006年度=1110億円)だ。
一時期、音楽業界の荒廃が囁かれたが、大手•ベンチャーを問わず、多くの音楽関連企業がこの構造変化をチャンスと捉え直し、新たなビジネスをスタートさせている。世界一著作権に厳格といわれる日本の音楽業界で、彼らはどんな活路を見出しているのだろうか?
ONPOOはインディーズ音楽のコミュニティ規模の大きさに着目し、SNSとストリーミングプレイヤーによる音楽コミュニティ「ONPOO.net」を運営しているベンチャーだ。同社は、自社開発のストリーミングプレイヤー「POOプレイヤー」を使って、インディーズバンドを中心とした楽曲配信支援を行い、派生する広告やイベント開催による収益を目指している。
このサービスの仕組みを説明するとざっと次のようになる。
プロモーションを希望するアーティストやバンドは、回数や期間を自由に設定した上で、楽曲をMP3形式でサーバにアップする。アップされた楽曲は、サーバ上で「POOファイル」に変換されてDRMがかかり、POOプレイヤーのみで試聴が可能になる。
そして、ファンが楽曲を購入すると、MP3に再度変換され、今度はipodや携帯でも聴く事ができるようになる。また、レコメンド機能や音楽ウェブマガジン「ONPOO.net」と連動させることで、詳細なアーティスト情報詳細やクチコミレビューが、文字テキストでも同時に手に入る。
同社代表の佐藤元氏は、「POOプレイヤー」の長所をこう説明する。
「楽曲をアップロードするときに、アーティスト自身が視聴制限をかけられる点がPOOプレイヤーの特徴です。回数制限や時間制限をかけたりすることで、ファンの購入行動を促すことにもなります。もちろんプロモーションとして捉え、無制限で試聴してもらうことも可能です。また、楽曲の課金は我々が代行するので、煩雑な販売手続きを楽曲提供者は行わなくて済みます。我々がやりたいことの核は、ライブハウスの現場的なコミュニティの構築です」
佐藤氏は1969年生まれの38歳。大手広告会社に勤務後、エフエム東京やサイバードで、音楽関連のプロデュースやメディア開発事業に携わって来た。
エフエム東京では、企業とのタイアップイベントや楽曲のプロモーション戦略を練り、サイバードに移ってからは、着メロのサイト開発や、テレビ局向け携帯コンテンツサイトの開発•運営に参加。その後、新星堂と共同して「新星堂ポータル」というジョイントベンチャーの設立もおこなっている。そして、2006年、佐藤社長は、これまでに培った経験や人脈を元に、ONPOOを設立する。
同社がインディーズ音楽のSNSに乗り出したのは、ネットにおける音楽コミュニティの活性化と、ライブハウスなどのインディーズ業界の好調さが一因だという。
「流通形態が10年ほど前から変わったことによって、誰もが音源を発信できるようになりました。音楽に対するアプローチも変化してきていて、聴くよりも、むしろ歌いたい、バンドをやりたいという人が増えてきた。その影響で、練習スタジオやライブハウスが儲かっているんです。音楽がカジュアルなものになってきているのかもしれません。
ライブハウスシーンで人気が出て、『あのバンドかっこいいよ』という噂が広がり、一気に売れるケースも増えてきました。売れている曲を聞くという方向性がなくなったわけではないんですが、そういう素地ができてきた。我々としても、いいバンドを発掘して、知らせていきたいと思っていますね。まだ知られていない面白いバンドを、自分たちで見つけて育てたいという、ファン心理を活かしていきたいなと」
「ONPOO」の特徴は、独自プレイヤーとコミュニティ機能の融合だ。この特性を活かすことで、mixiやiTMS、マイスペースなど大手の間隙を縫っていくことを狙っている。
「バンドの人気を表すのに、最もわかりやすいバロメータはmixiのコミュニティの参加人数です。しかし我々は、mixiと同じ土俵で闘おうと思っているわけではありません。できることならアライアンスしたいと思っているぐらいですから(笑)。
ただし、mixiは音楽に特化したブランドではありません。パスタとバンドのコミュニティが同列になっている。さらに音も鳴らない。「あのバンドの曲がいいよ」と友人から勧められても、曲を聴かないと音楽性はわからないですよね。6万の音楽コミュニティがmixiにはあるといわれていますが、本当の意味で音楽が伝わる場にはなっていないと考えています。我々が音楽SNSをやろうと思ったのは、mixiにそれだけコミュニティがあるのなら、音楽に特化したSNSがあってもいいのかなと思ったからです。
さらに、ONPOOにはコミュニケーションツールとしての役割もあります。iTMSや、ナップスターなどプレイヤーを使ったディスクトップアプリケーションには、逆にコミュニケーション機能がない。大手のアップルさんやマイクロソフトさんが競合相手、というとおこがましいんですが、POOプレイヤーはそこを非常に意識しています。サービスが重なる競合というと、「Last.FM」というイギリスのインターネットラジオがSNS機能も併せ持っているので、比較的そこと近いですね」
日本における音楽ビジネスのメインターゲットは、基本的に中高生である。しかし、彼らが日々接するのは、PCではなくケータイ。ONPOOも、ケータイビジネスに進出する予定はあるのだろうか?
「やりたいです。ただ、独自プレイヤーを使って楽曲をケータイで配信するのは、CPUやメモリの規模を考えると、難しいかもしれません。POOプレイヤーはPtoPの技術を裏側で使っているんです。これを携帯電話のスペックでやるとなるとなかなか…。携帯キャリアも個人の端末に我々が入ることを許可しないでしょうし」
同社は3年後をめどに200万人のユーザー数を目指している。これは現在のmixiのユーザ数の5分の1にあたる規模だ。そのためには積極的にメディアや技術系のベンチャーと協力していかなければならない。
「我々だけでは限界があるので、積極的に他社さんとアライアンスを組んで行きたいと思っています。音楽レーベルや大手広告代理店さんと、広告モデルを一緒に開発しながら新しいメディアを育てていければと。
エキサイトの音楽レーベルである『エキサイトミュージックエンタテインメント』にも出資しています。将来的には、技術力をいかして、コンテンツの供給や、動画サービス、オーディションの開催など、関連事業にも乗り出したいですね。良い音楽が伝わっていくトリガーにONPOOがなっていき、『ONPOOって面白いことしているよね』というようなブランドを打ち立てられればいいと思います」
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