A CNET SITE CNET Japan

 日本でオンライン書店のサービスが本格的に始まったのは1996年。サービスが始まって10年間で利用者数は伸び続け、オンライン書店の市場は2005年に600億円を超えた。中でもAmazon.co.jpは2000年11月の開店以来、売上高でトップの座を獲得するとともに、アフィリエイトやマーケットプレイスのサービス提供などで「本を買う」スタイルに影響を与え続けている。

 そんな中、オンライン書店の第2世代とも言うべきベンチャーが現れた。配送料無料のオンライン書店のASPを提供するブークスが、オンライン書店の勢力図を塗り変える可能性を秘めて着実にビジネスを展開し始めている。

ポイントサービス×本×EC

 ブークスの主な事業は、1冊から送料無料のオンライン書店システムのASP「boox」の提供と、自社で運営するオンライン書店「シスコストア」の運営。

 ASPの提供については、会員向けのポイントサービスを展開する主要カード会社など20社と提携し、各社のブランドを生かしたオンライン書店の構築を支援する。

 各社が運営するオンライン書店では、利用者は各社のウェブサイトから本を購入し、定価の5%のポイントをそれぞれに貯めることができる。

 また、企業の福利厚生のサービスとしても利用され、各種企業が雑誌や資料の割引購入のためにブークスと契約しているという。

boox井上氏.jpg「本って小売側の努力でもっと値段を下げて売る方法があると思っていました。試行錯誤したのが今のビジネスにつながっています」と井上氏

 送料無料の秘訣は、代表取締役の井上幸宏氏の起業前の経験と知識による。

 京都出身の井上氏は、佐川急便の京都本社で働いた経験を持つ。その経験から物流各社の細かな料金体系を理解し、低コストの物流システムを作り上げた。

 在庫の面でも特徴がある。商品となる本はすべて仕入れ先の卸会社の大阪屋が持ち、同社は在庫を一切持たない。大阪屋はアマゾンの商品供給も担当していることを考えると、ブークスは実質的にはアマゾンよりも早く商品をそろえることができ、またより多くの商品を扱えると言える。

 これらの物流と商品管理システムの組み合わせで、同社は通常のオンライン書店よりも低コストの発送を実現しているという。

本は強いマーケティングデータになる

 井上氏は起業前、請け負いでシステム開発などを行っていた。ところが2002年、あるオンライン書店のシステムの発注元だった会社が倒産。納品してもお金を受け取れなくなってしまう。その頃、JTBパブリッシングが運営するオンライン書店のシステムも請け負っていたが、JTBの持株会社制移行に伴ってオンライン書店の事業を手放すことになった。それらのタイミングが重なり、井上氏は独立を決める。

 最初から現在のビジネスモデルが描けていたわけではない。しかし、ビットアイル社長との出会いなど、人のつながりの中から新たな可能性を見出していく。

 オンライン書店としては後発、ASPの提供もビジネスとしては一見シンプルだ。しかし、着実に成長するための戦略は練りこまれている。

 成長が見込まれる理由の一つは、オンライン書店のASPのニーズは高いと考えられる点。書籍の流通点数は約100万件あり、商品画像使用での著作権の問題も絡めるとそれらの商品情報をデータベースとして作り上げるには時間とコストが必要だ。物流の仕組みまで考えると一般的にオンライン書店の新規参入は難しいと言われている。

 一方で、書籍は嗜好性が強い商品のため、インターネットの各種コミュニティ向けに専門書店を作れば有力なECサイトとなる。そのためにbooxの導入を検討する企業は多いという。

 ブークスが提携しているカード会社でも、各社でマンガや女性向けなど売れ筋の傾向は違っているという。大手の電機量販店でもbooxを導入したオンライン書店が始まっており、今後もオンラインの専門書店は増えていくと見込まれる。

 さらに、将来的に発展する可能性を持つのは利用情報のデータ活用だ。本は嗜好性が高い商品のため、その利用情報は、性別や地域で分類したものではなく趣味やライフスタイルにまで踏み込んだきめ細やかなマーケティングデータとなる。ブークスはASPを提供する各オンライン書店の利用データをすべて把握し、そのデータの活用を次の展開への布石とする。例えば、そこから派生する広告マーケティングや、利用者の状況を出版社などに売ることなども考えられるわけだ。

 中期的には、グループウェアやブログとの提携などを検討しているという。また携帯電話向けサービスも展開していく。数値目標として、今秋をめどにシスコオンラインの会員数10万人、月商1億円を目指す。

office.jpg外苑前にあるマンションの3DKの1室がオフィス。広いキッチンもある。