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 乗っていた車を売りに出したいとき、ぱっと頭に浮かぶのはその自動車を購入した販売店の店員の笑顔か、もしくは中古車販売店の広告だろう。しかしこのサービスを使えば、顔も知らないあなたの車のファンに真っ先にコンタクトを取れることになりそうだ。

 中古車販売代理業を営むトロイカが4月3日に開始した「トロイカ オークション」は、個人間で中古車を売買できるサービスだ。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)機能を搭載し、売り手と買い手がそれぞれの人柄を確認できるほか、売りに出されている自動車の状態を細かく確認できる点が特徴だ。

 ユーザーはまず自分が所有している車と、これから欲しい車を登録する。中古車を購入したいユーザーは、サイトに登録されているほかのユーザーの所有車の中から気に入ったものを選び、その車の持ち主に対してリンク申請をする。承認されれば、その人のページに「ビッダーズ」という購入希望者として表示される仕組みだ。逆に、自分のページにはその車の所有者が「ウォッチリスト」として登録される。

 車が売り出し中でなくてもリンク申請は可能。逆に、車を持っているユーザーは、購入希望者が集まってきてからその車を売却するかどうかを検討できる。

070409_troica3.gif トロイカ オークションの画面。右側に車の購入希望者や自分がウォッチしている車の所有者が表示される

「中古車市場をITで変える」

 このサービスを運営するトロイカは、2006年2月に設立されたベンチャー企業だ。中古車販売企業やインターネット関連企業での勤務経験を持つ代表取締役社長の大橋賢治氏は「中古車市場をITで変えたいと考えた」と話す。

 これまではカーオーク.jpという中古車オークションサービスを提供していたが、これは業者向けのオークションの価格を公開して、個人ユーザーでも参加できるようにしたものだった。「他社に依存したビジネスモデルのため、非常に不安定だった。たとえば、中古車の写真を使いたくても、著作権違反で訴えられてしまう。そこで、自社で市場を持つべきだと考えた」

トロイカの大橋賢治氏 大橋氏は、SNSは個人間取引に向いた仕組みと話す

 トロイカ オークションの場合、サイトに登録された車はすべて「在庫」になる。ユーザーは売る予定のない車であっても、自分の車をアピールする場としてトロイカ オークションに登録し、売りたいと思った時期に自分の車をウォッチリストに登録したほかのユーザーに売ればいい。つまり、今は誰かの車として走っている自動車が、すべて潜在的な商品になっているのだ。「中古車の共有在庫がSNS上に常にあると思ってもらえればいい」

「整備手帳」と第三者の査定で安心感を提供

 自動車の個人間取引はYahoo!オークションなどの他社サービスでも行われているが、自動車の状態は命に関わるものだけに、買い手は売買に対して慎重になる。しかし、自動車の整備状況などの情報は売り手が自己申告した情報に頼るしかない。このため、実際に現物を見ないで購入することへの抵抗は強い。たとえばgooリサーチ上で行われた調査では、インターネットオークションでの中古車購入経験者は4%未満にとどまるという結果がでている。

 そこでトロイカでは、2つの方法で買い手がその車の状態を判断できるようにした。まず1つめは、売り手が日々記録する「整備手帳」だ。車のオイル交換や、点検、修理、改造、パーツ交換などの記録を文章や写真で残せるというもの。こまめに整備している人にとっては、自分の車の状態の良さをアピールする場になる。整備手帳は車の持ち主が変わった後も受け継がれるため、その車の整備状況に関する履歴はずっと残るという。

 もう1つは、第三者が自動車の状態を必ず査定する「トロイカ査定」という制度だ。トロイカが提携した全国の自動車整備工場で、内外装の状態やエンジンの点検といった査定を受け、その情報を公開しないと車を販売できない。これにより、ユーザーの自己申告だけでない客観的な情報を買い手が把握できるようになる。現在全国800店の整備工場と提携しており、今後も提携先を拡大する考えだ。

 決済はトロイカが仲介し、車が納品されたことを確認して売り手に支払う。これにより、「車を送ったのに料金が支払われない」といったトラブルが起こることを防ぐ。また、車の受け渡しは整備工場を通じて行うという。

改造車もファンがいれば高く売れる

改造車もファンがいれば高く売れる

 オークションでの取引価格も独特だ。トロイカは店頭での販売価格と、業者向けオークションでの取引価格を元に、トロイカ オークションにおける売買の上限価格を車種ごとに設定する。「店頭よりも安く、オークションよりも高い価格を設定する。売り手と買い手の双方にとってメリットがある」

 「日本初となる個人間取引市場の相場価格を作っていきたい」

 個人間での取引ができることで、売り手としては中古車販売店に引き取ってもらうよりも高い値段で車を売ることができる。改造を加えている車の場合はなおさらだ。

 販売店が中古車を下取りする場合、改造が加えられている車の査定は低くなる。これは、手が加えられていない車のほうが売りやすいからだ。しかし個人間取引であれば、その改造を気に入ってより高い値段をつける買い手が出てくる可能性がある。ユーザーはコミュニティを自由に作成できるため、ここで同じ趣味のユーザーを探すことが可能だ。

 トロイカでは改造車に関しては取引の上限価格を設けず、買い手と売り手に価格を任せる考えだという。4月時点でオークション機能は搭載されておらず、5月からの開始を目指す。

整備工場のビジネスも変える

 さらにトロイカでは個人と個人を結びつけるだけでなく、車の持ち主と自動車整備工場を直接つなぐことで業界を変えようとも目論んでいる。これまで自動車が故障した場合、持ち主は自分がその車を購入した販売店に持ち込んで修理を依頼するのが一般的だった。販売店は提携先の整備工場に修理を発注して、その中間マージンを得ていた。この中間マージンがなくなれば、利用者はもっと安く車を修理できるのではないか――大橋氏の発想はここにある。

 トロイカ オークションでは、ユーザーが自分が住んでいる場所を登録すると、その周辺にあるトロイカの提携工場や保険代理店などが地図上に表示される。ここからユーザーは直接修理や点検の依頼、保険の見積もりなどを依頼できるようになっている。

 トロイカは提携工場などから、店舗情報の掲載料を受け取る。金額は1店舗につき月額1万500円。これがトロイカの大きな収益源となる。提携工場はユーザーに対して「今ならオイル交換半額!」といったキャンペーンを展開できるようになるため、新たなビジネスが可能になると大橋氏は話す。

 トロイカの収益源は、提携工場からの店舗情報掲載料のほか、車の売買が成立した場合の成約料(1件につき3万1500円)、それにサイトへの広告掲載だ。

 トロイカ オークションにはブログ機能があり、動画で自分の車を紹介することも可能。動画はYouTubeとAmeba Visionに対応している。

 このほか、ユーザー間でメッセージをやり取りする機能も存在する。このため、トロイカ オークションを通さずに車を売買することもできてしまう。この点については規制しない方針という。「トロイカ オークションにとっては登録された情報とユーザーこそが財産。制限はできるだけ設けたくない」(大橋氏)。この場合、5250円を支払えば整備手帳を引き継げるようにしている。

 今夏には、オンライン上で自動車のパーツを販売するECサイトとも提携していく考え。ユーザーはトロイカ オークション内でパーツを購入し、その取り付け見積もりを複数の整備工場に依頼できる。ユーザーが選んだ工場にECサイトから直接パーツが配送される仕組みにするという。ここでも販売店を中抜きし、ユーザーのコスト負担を下げていく。

 中古車情報サイトとしては「カーセンサー.net」を運営するリクルートや、「Goo.net」を運営するプロトコーポレーションなどが大手だ。しかし両社とも、中古車販売店からの広告を主な収益源としていることから、「販売店を中抜きにするような個人間売買の分野には参入しにくい」と大橋氏は見る。

 一方、オークション最大手のYahoo!オークションやSNS最大手のmixiなどはジャンルを絞っていないことから、専門領域に特化した強みがあると話す。「レストランも、昔は寿司やラーメン、ハンバーグなどの料理を1つの店舗で出すところが人気だった。しかしだんだん舌が肥えてくると、消費者は専門店に行くようになる。ウェブのサービスも同じだ。総合力ではかなわなくても、中古車カテゴリでは負けない」