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 ニュース記事に産経新聞の記者と読者のブログが連動するニュースサイト「イザ!」、フジテレビが運営に参加する動画共有サービスの「ワッチミー!TV」、独自のアルゴリズム「オモロアルゴリズム」を利用して人の主観や興味を反映した検索結果を表示しようとする検索サービス「SAGOOL(サグール)」--これらのサービスに、同じベンチャーが関わっていることをご存じだろうか。

 その会社は、チームラボという創業6年目の技術系ベンチャーだ。東京大学から程近い東京都の本郷に本社を置く。オフィスの入り口には訪問先を呼び出すためのファミリーコンピュータが置かれており、その横には社員1人1人の写真がCDジャケット風に紹介されている。独特な雰囲気が溢れるオフィスが示すように、経営姿勢もほかのベンチャーとは一線を画す。

チームラボのオフィスの様子 チームラボの入り口に置かれた呼び出し用ファミリーコンピュータ(左)。コントローラーでキャラクターを操作して、呼び出したい相手の部署が書いてある土管にキャラクターを入れると、電話が鳴る仕組みだ。右はCDジャケット風の従業員の写真で、それぞれの従業員が制作したものという

パートナーと共同でサービス運営会社を設立

 チームラボは現代表取締役の猪子寿之氏が東京大学の4年生であった2000年に、友人と共同で設立した。チームラボという名前には、「チーム(仲間)で一緒に、ラボ(研究所)のようにさまざまな新しい技術やサービスを生み出していきたい」という思いが込められている。社員は現在約100名で、そのうちの70%がデザイナーやエンジニアなどという技術者集団だ。

 膨大なデータの処理技術に強みを持ち、ユーザーの行動履歴などを解析して嗜好やニーズにあった商品などを自動的に推薦するリコメンデーションエンジンや、あるコンテンツに近い内容のものを自動表示するコンテンツマッチングエンジンなどを開発している。

 しかし、ただ製品を開発して提供するだけではなく、パートナー企業と共同で新会社をつくって事業を進めるのが同社の大きな特徴だ。2005年にはトランスコスモスと合弁で、インターネットサービスを開発、運営するチームラボビジネスディベロップメントを設立。この会社を軸に、大手企業ともパートナー関係を築く。

猪子寿之氏 猪子氏はチームラボについて、「Web 2.0企業ではラボを作るのがブームになっているが、うちは元祖ラボだ」と笑う

 たとえばイザ!の場合、チームラボビジネスディベロップメントが産経新聞社、日本工業新聞社とともに産経デジタルを設立し、サービスを運営している。また、ワッチミー!TVでは同様に、チームラボビジネスディベロップメントとフジテレビの合弁でフジテレビラボLLC合同会社を設立した。

 共同で新会社を作るのは、事業継続のリスクを下げるためだ。関係企業が出資する新会社をつくることでお互いのコミットメントを明確化するとともに、万が一事業がうまくいかなかった場合でも本体への影響を最低限にとどめることができる。

 また、別会社を作ることでそれぞれの企業の役割が明確化するということもあるようだ。「チームラボが手がけるのは受託開発やソフトウェアのパッケージ提供のみ。開発が好きな人間が集まっているし、サービスを運営するよりも新しい技術をどんどん生みだしていきたい」(猪子氏)

Web 2.0時代に階層構造のサイトは通用しない

 チームラボはこれまで、複数のサイトの制作を受託してきた。その中で気を配ったのは、それぞれのページ内のコンテンツに、常に関連したコンテンツが表示されるようにしたことだ。例えば東京地下鉄(東京メトロ)とNKBが共同で運営する東京都内の情報を集めたサイト「Let's Enjoy TOKYO」では、ある店舗の情報ページには周辺地域の施設やレストラン、その地域に関わる投稿情報が載るようにした。

 ほかにも、イザ!ではチームラボが開発したコンテンツマッチングエンジンを利用して、各記事に内容の近い過去記事を5本瞬時に選び出して表示する。

 これらの取り組みの裏には、もはや階層構造に基づくリンクでは、ユーザーのニーズに対応しきれないという考えがある。

 これまでのウェブサイトは情報量が少なかったため、階層構造がうまく機能していた。しかし、Web 2.0と呼ばれるこれからのインターネットの世界では、ユーザーが自由にコンテンツを作ったり、各サイトがAPIを利用して外部データを取得し、コンテンツを簡単に生成したりすることができるようになる。つまり、これまでとは比較にならないほどの情報量を、1つのサイトが簡単に持てるようになるのだ。

  また、あるページにたどり着く方法も、サイト内のリンクだけではなく、検索サービスやブログのトラックバックなど多様化している。このような状態では、階層に基づいてコンテンツを表示するよりも、関連するコンテンツを同時に表示するほうが、ユーザーの利用は高まる。

 「情報が超多様になるサイトのリンクは、コンテンツマッチで作られているべきだ」(猪子氏)

 チームラボビジネスディベロップメントが6月に開始した検索サービスのSAGOOLも、同じように膨大な情報の中から、いかに人が好きなものに出会うかを考えた結果生まれたサービスだ。オモロアルゴリズムという独自のアルゴリズムに基づいて、人々が興味や驚きの意見を示したウェブページを抽出し、検索結果を表示する。アルゴリズムの詳細については明らかにしていないが、確率論や統計学をベースにエンジンを作り上げたという。

 ここでチームラボが苦心したのが、いかに人の主観性を検索エンジンに盛り込むかだ。「主観的というと個人の話のように聞こえるけれども、例えばあるレストランの料理がおいしいというように、複数の人が共通して持つものもあるはず。そこを論理化したい」

 「特に動画検索の世界では、客観的に正しいかどうかよりも、映像として面白かったり、綺麗だったりするものが検索結果の上位に来てほしいとユーザーは思うはず。だからこそ、主観性が重要になる」(猪子氏)

上場よりも技術を磨く

 今後、同社が目指すのは世界に発信できる日本発のインターネット技術だ。「インターネット業界では、日本から海外に輸出した製品やサービスはほとんどない。ここを変えて行きたい」(猪子氏)

 SAGOOLのような検索エンジンを開発するには多くの資金が必要となるが、チームラボは現在無借金経営で、ベンチャーキャピタルなどからの投資は受けていない。上場も「考えていない」(猪子氏)と公言する。

 受託開発を中心に収益を上げており、特に出資を受ける必要がないというのがその理由。投資家との話し合いなど、資本政策に時間と労力を割くよりも、製品やサービスの開発に力を注ぎたい考えだという。