2007年11月22日 08時00分
文:David Hornik
翻訳校正:アークコミュニケーションズ、平本尚美、國分真人
私は2007年10月末の1週間ほどをハワイで過ごしていた。24日から26日まで、「The Lobby」というカンファレンスを主催していたためだ。「The Lobby」の開催趣旨は、メディアの未来への関心を共有する素晴らしい人々を一堂に集め、彼らの対話を深めることにあった。したがって、ステージでの講演もなければ大まかなテーマに基づく討論会もないし、人寄せのために招待された有名人やお偉方もいない。ただひたすら出会いと対話を求める、この分野の魅力的なエキスパートたちの夢のような集いがあるだけだ。参加者は皆、他のカンファレンスでは講演者やパネリストであったり、お偉方であったりすることだろう。しかしこのカンファレンスは、人々の注目を浴びるためではなく参加するためのものだった。そして、誰もが立派に参加してくれた。それこそ明け方から夜更けまで、「The Lobby」の人々は貪欲に対話を重ねた。そのエネルギーたるや熱狂的で、まさに休みなく稼働する発電装置のような、A型行動様式の人々のものだった。だから私は、29日朝の帰りの飛行機に乗る頃には文字通り消耗しきっており、完全に復活するには数週間かかりそうに思えるありさまだった。このカンファレンスで私が学んだすべての事柄を詳しくまとめ、出会った人たち全員と連絡を取り、来年のカンファレンス開催に向けて準備するのは、1年がかりの作業になることだろう。
「The Lobby」は、Lia Lorenzano-Kennett氏という信じがたいほど素晴らしい人物の励ましとノウハウと友情がなければ、絶対に実現できなかったに違いない。Lorenzano-Kennett氏は、カンファレンス制作の分野の最高峰である。彼女は「Apple Worldwide Developers Conference」の当初のプロデューサーの1人であり、「DEMO」カンファレンスと「Agenda」カンファレンスを運営、IDG Executive Forumsの代表でもあった。また、あの傑出したカンファレンス「All Things Digital」をWalt Mossberg、Kara Swisher両氏とともに創り上げ、現在もプロデューサーを務めている。私が「The Lobby」について話すために初めてLorenzano-Kennett氏と会ったとき、彼女はこう言っていた。いったい、カンファレンスを成功させる要因とは何だろう。講演者や聴衆なのか、それともカンファレンスの内容なのか。この従来から続く、ニワトリが先か卵が先かという問題の答えをいつも考えている、と。カンファレンスが素晴らしいものになるのは、そこに参加する人々が素晴らしいからなのだろうか。それとも、カンファレンスが素晴らしいから、素晴らしい人々ばかり集まるのだろうか。「The Lobby」がようやく閉会を迎えたとき、彼女は私のほうを振り向いて言った。「やっと分かったわ。答えはニワトリよ」。確かに、「The Lobby」には素晴らしいニワトリたちが出席していた。
「The Lobby」についてもう少し書きたい。ただしそれはすべて、このカンファレンスに関する私自身の考え方を覆さずに言えることばかりだ。「The Lobby」は当初から、メディアの未来についてオフレコで語り合うという触れ込みで開催されたイベントだった。出席者は、他の出席者が話す内容をいっさい公表しないという条件を了承した上で、このカンファレンスへの参加登録をした。これは私の見解によるものだ。つまり、このイベントでの討論や対話は外部に伝わらないということですべての参加者が安心できれば、皆が思う存分に発言し、それによって得られる成果も大きくなるはずだと思ったのである。私は、この持論が正しいと今でも信じているが、反面、今日のような情報時代に「オフレコ」などというものが成り立つと想定するのは、はたしてどの程度現実的なのか疑わしい気もする。情報というものは、その出所が明らかであろうとなかろうと、いとも簡単に広まってしまう。そんな中で何が「オフレコ」と見なされるのだろう。たとえば、「The Lobby」で聞いた発言を特定の誰かに伝えたとしても、その発言の主を明かさなければオフレコなのか。コミュニケーションサイト「Twitter」で仲間たちに、「The Lobbyでの座談会は最高だった」とか「解決の糸口を100ドルで売るよ」などというコメントを流すのはオフレコなのか。「The Lobby」の人々の写真をFlickrやPhotobucketに投稿してもオフレコなのか。その写真に撮られている参加者の写りがよくない場合はどうだろう。また、自分が「The Lobby」に出席していたことだけを部外者に漏らすのは、そのときに食べた料理以外のことに触れなければオフレコだろうか。答えはまだ分からない。ともかく、私が意図したのは対話の内容をオフレコにするということだった。発言者を明かすか匿名にするか、正式なカンファレンスのセッション中の談話なのか、バーでの談話なのか、誰に対してオフレコにするのか(ほんの数人か、それとも不特定多数か)の区別はない。「The Lobby」に掲げた私のスローガンは、「コンテンツは対話」である。オフレコという方針は、秘密結社を作るためではなく、討論が忌憚なく行われるようにするためだったのだ。しかし、オフレコとは何かを定義するのは難しい。この問題は、「The Lobby 2」の開催に向けてじっくりと検討してゆくつもりだ。それまでの間は、引き続きデジタルメディアの急速な進化に携わるのを楽しみに待ちながら、その進化の一端を「The Lobby」が担っていることを祈りたい。
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David Hornik氏は、ベンチャーキャピタル「August Capital」のパートナーで、2000年に同社へ加わって以来、ベンチャーキャピタリストとしてIT系企業を中心に投資し、Six Apartの社外取締役も兼ねている。August Capitalに加わる以前には、複数の法律事務所で知的財産や企業法律顧問などの弁護士として、Yahooなど複数のベンチャー企業の設立や資金調達、運営に関する法律実務のキャリアを有している。Six ApartのAndrew Anker氏をはじめ、複数のベンチャーキャピタリストらと米国のベンチャー事情をレポートするサイト「VentureBlog」を運営する。
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