サンドヒルロード発「VentureBlog」--米国最新トレンド
文:David Hornik
翻訳校正:アークコミュニケーションズ、谷口茜、國分真人
初めてSplunkのメンバーと会った頃、同社では企業が利用するさまざまなソフトウェア層を往来するトランザクションを正確に追跡するシステムを開発している最中だった。トランザクションがどこかでエラーになったときに、同社のソフトウェアを使えばその原因をIT部門で発見できるようになるという。トランザクションの問題は一部の企業にとって明らかに頭痛の種であったが、彼らのソフトウェアにはターゲットとする顧客がなく、価値提案も明確とは言い難かった。ただし、開発しているテクノロジは、データセンターで発生する漠然としたデータ(つまりログファイル)から多くの情報を生み出していた。彼らのやっていることに興味はひかれたものの、その時は投資には至らずに終わっている。ある日、私はSplunkの最高経営責任者(CEO)であるMichael Baum氏から電話を受けた。「見つけた」から、私に会いたいというのだ。彼らが何を「見つけた」のかぜひ聞いてみたかったので、すぐに彼と会うことにした。
Splunkは何を「見つけた」のか。それは、データセンター全体のログファイルをほぼリアルタイムに追跡、管理して関連付けられれば「最強のIT検索エンジン」を作り出すことができ、エンドユーザーはこれまで考えらなかった方法で企業のソフトウェア層を調べられるようになるということだった。SplunkのメンバーはVoIPデータを使ったとても簡単なサンプルを見せてくれた。特定の拡張子に関わったシステムすべてを追跡するには、Splunkエンジンでその拡張子を検索するだけでよいのだ。これは今日の企業に存在する膨大なITデータを管理する方法として明らかに優れていると、私はすぐに確信した。そこでシリーズAの投資をし、Splunkはソフトウェア構想の実現へと進むことになる。
Splunkへの投資からほどなく、August Capitalの最大のパートナー(ファンドへの投資家)からきたマネージャーの一団との会議があった。私がSplunkで開発中のソフトウェアについて説明したところ、「それで市場規模はどのくらいなのか」との質問を受けた。私が即座に出せた最善の答えは「分からない」だった。もちろん、これは満足のいく答えとは言えない。彼らはもっといい答えが出てくるはずだと期待して私を見つめた。しかし、実際のところ私にはそれ以上の答えはなかった。それはSplunkのソフトウェアに市場があるかどうか分からなかったからではない。検索エンジンを開発した後に、Splunkがどの市場をターゲットにするのかが分からなかったからだ。投資家たちには、Splunkのビジネスには何10億ドルもの市場がいくつも(マネジメント、コンプライアンス、ビジネスインテリジェンス、セキュリティ、キャパシティプランニング、開発など)あるが、Splunkがどの市場を最初にターゲットにするかが唯一の疑問だと説明した。
投資家たちとこのような会話を交わしたのは2年半前のことだ。それ以降、Splunkは期待どおりのソフトウェアを作り上げた。データセンター向けの大規模で高速な検索エンジンテクノロジだ。しかし、Splunkのソフトウェアをダウンロードしたユーザーが10万を超え、購入した法人顧客(21st Century Insurance、BEA、British Telecom、Catholic Healthcare West、シカゴ・マーカンタイル取引所、Comcast、Dow Jones、FedEx、Fiserv、GE Consumer Finance、LinkedIn、Mantech、Mozilla.org、米連邦航空宇宙局(NASA)、Shopzilla、Telstra、米国エネルギー省、米国司法省、米国国務省、Vodafone、Yahoo!など)が350を超えたという事実にもかかわらず、私はいまだに投資家から突きつけられた質問に答えられないでいる。
Splunkはアプリケーションは開発していない。ただソフトウェアを売っているわけでもない。Splunkが生み出したのは、驚くほど適用範囲の広いソフトウェア対応プラットフォームである。大規模なエンタープライズシステムの可用性維持という点で、Splunkは必要不可欠だろうか。答えは「イエス」である。データセンターのセキュリティを守る戦いにSplunkは貢献するだろうか。これも答えは「イエス」である。Splunkは独自の方法でデータコンプライアンスのプロセスを簡略化するだろうか。これも「イエス」。Splunkはどのソリューションよりもデータの調査分析に役立つだろうか。そしてこれも「イエス」。率直に言えば、このような質問で明らかになるのは氷山の一角に過ぎない。データセンター全体のデータひとつひとつをリアルタイムで照会できるようになれば、このプラットフォームの適用範囲を限定するものはエンドユーザーのクリエイティビティでしかないからだ。クリエイティブなエンドユーザーによって価値がプラットフォームに還元され、これまで考え付かなかったアプリケーションが生み出されるのだ。
ところで、Splunkにはどんな市場があるのか。いまだに確かなことはわからない。しかし、これだけは言える。それはとてつもなく巨大な市場だ。そしてベンチャービジネスにとっては十分すぎるほど大きな市場なのである。
世界では、今この瞬間にもユニークなアイデアを持った起業家たちが成功を信じて会社を興している。ベンチャーキャピタル「August Capital」のパートナーであるDavid Hornik氏やSix ApartのAndrew Anker氏をはじめ、複数のベンチャーキャピタリストが、VentureBlogを通じて、ベンチャーキャピタルの本場であるシリコンバレーはサンドヒルロードから米国のベンチャー事情や注目すべきウェブサイト、起業のヒントを伝える。
David Hornik氏は、ベンチャーキャピタル「August Capital」のパートナーで、2000年に同社へ加わって以来、ベンチャーキャピタリストとしてIT系企業を中心に投資し、Six Apartの社外取締役も兼ねている。August Capitalに加わる以前には、複数の法律事務所で知的財産や企業法律顧問などの弁護士として、Yahooなど複数のベンチャー企業の設立や資金調達、運営に関する法律実務のキャリアを有している。Six ApartのAndrew Anker氏をはじめ、複数のベンチャーキャピタリストらと米国のベンチャー事情をレポートするサイト「VentureBlog」を運営する。
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