2007年7月12日 08時00分
文:David Hornik
翻訳校正:株式会社アークコミュニケーションズ、谷口茜、國分真人
「結局は人」。これは私が繰り返し唱えている持論だ。私は心底これが正しいと信じている。もちろん、よいアイデアは大切だ。大きな市場を追い求めることも大切だ。どちらも同じように大切だが、偉大な起業家の必要性に比べると影が薄くなる。
私はこれまで、偉大な起業家の資質についてもいろいろと書いてきた。創業者の中には信じられないほど優れた起業家がいる。純粋な熱意と覚悟を持ち、何もないところからビジネスを築き上げるという挑戦に生きがいを感じ、損失を嫌う。次々と起業する「連続起業魔」の創業者もいる。彼らは確信がなくても先に進む。同じことを前にもやったことがあるからだ。難しい新規事業を何とか立ち上げて、投資家に膨大な利益をもたらす。また、各分野の驚くべきエキスパートである創業者もいる。特定の分野で面白いビジネスを始める方法がわかっているのは彼らしかいない。この分類のいずれかに当てはまる起業家なら、支援してもよいだろう。
数年前、私はNomis Solutionsという会社への出資に関して打診を受けた。Nomis Solutionsの着想は、最新の価格最適化手法を金融サービス分野に応用しようというものだった。銀行や保険会社は、リスクの測定と最適化に関してはかなりの実績を上げているが、価格の測定と最適化についてはもともとあまり得意ではない。結果として、業界全体では莫大な金額をもうけ損なっていたのである。Nomis Solutionsの創業者たちが考えていたのは、金融機関が利益ベースの価格設定に取り組めるよう支援するソフトウェアソリューションを構築することだった。この価格設定とは、商品(自動車ローン、モーゲージ、住宅担保、個人融資など)単位に最大の利益率を実現するものである。
それはよいアイデアだろうか?もちろん。ソフトウェアで利益率が10〜20%上がるのであれば、それはよいアイデアだ。市場は大きいか?巨大な市場だ。金融機関はもともとソフトウェアを売り込むにはとても厳しい相手だ。ただし、入り込む道が見つかればとてつもなく大きな顧客になる。そこで私は、人を見て投資判断をすることにした。私が出資したとき、Nomis Solutionsには4人の素晴らしい起業家がいた。別に他の優れた創業者3人を無視するわけではないが、もう1人の創業者であるRobert Phillips博士について詳しく話したい。
Robert Phillips氏は、偉大な起業家の資質を最良のかたちで具現化している人物である。彼は起業を成功させ、損失を拒む(始終彼に会っていた頃、私は確信した。彼は魅力的な起業家であり、彼への支援は惜しまないが、決して雑学ゲーム向きの人材ではない)。Phillips氏はまた、これまで投資家に膨大な利益をもたらした「連続起業魔」でもある。Talus Solutionの創業者兼最高経営責任者(CEO)として、当時としては世界最大規模の価格最適化企業を立ち上げ、Manugisticsに何億ドルという金額で売却した。また、彼は価格最適化の教祖でもある。この分野に彼以上のエキスパートはいない。もし、飛行機で隣に座った男が自分よりずっと安い値段で航空券を買っていたことを知って腹が立ったら、Phillips氏を責めてもいいだろう。彼はかなり前に、航空業界に収益最適化ソリューションを導入したのだ。実際、彼は価格最適化の教科書を書き、スタンフォード大学とコロンビア大学のビジネススクールでそれを教えている。
出資相手となる起業家として、Phillips氏ほどの人物は見つからないだろう。したがって、Phillips氏と共同創業者たちがNomis Solutionsという素晴らしい会社を設立したのも驚くことではない。顧客にはFord Motor Credit、HBoS、GE Consumer Finance、Washington Mutualなどの金融業界の大手がずらりと名を連ねている。そして、その成果も見事としか言いようがない。Nomis Solutionsのソフトウェアをインストールすることで、銀行は事業の利益率を10〜20%も向上させることができるのだ。数10億ドル規模のローンポートフォリオであれば、すぐに相当な額に達する。結果的に、Nomis Solutionsはきわめて厳しい市場に実にうまく入り込むことができた。
私はPhillips氏の共同創業者の素晴らしい業績を無視するつもりはない。会社が市場のリーダーになるうえで優秀な従業員が大きな力となったことを過小評価するつもりも毛頭ない。それでも、Phillips氏が収益最適化の分野で世界の第一人者であることに変わりはない。価格最適化については、私は彼の勝ちに賭ける。つまり「結局は人」ということだ。
世界では、今この瞬間にもユニークなアイデアを持った起業家たちが成功を信じて会社を興している。ベンチャーキャピタル「August Capital」のパートナーであるDavid Hornik氏やSix ApartのAndrew Anker氏をはじめ、複数のベンチャーキャピタリストが、VentureBlogを通じて、ベンチャーキャピタルの本場であるシリコンバレーはサンドヒルロードから米国のベンチャー事情や注目すべきウェブサイト、起業のヒントを伝える。
David Hornik氏は、ベンチャーキャピタル「August Capital」のパートナーで、2000年に同社へ加わって以来、ベンチャーキャピタリストとしてIT系企業を中心に投資し、Six Apartの社外取締役も兼ねている。August Capitalに加わる以前には、複数の法律事務所で知的財産や企業法律顧問などの弁護士として、Yahooなど複数のベンチャー企業の設立や資金調達、運営に関する法律実務のキャリアを有している。Six ApartのAndrew Anker氏をはじめ、複数のベンチャーキャピタリストらと米国のベンチャー事情をレポートするサイト「VentureBlog」を運営する。
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