文:David Hornik
翻訳校正:株式会社アークコミュニケーションズ、谷口茜
2007年06月14日 08時00分
2007年、Walt Mossberg氏とKara Swisher氏がホスト役を務める「D:All Things Digital」カンファレンスが第5回(D5)を迎えた。私はこれまでの5回すべてに出席し、今後の5回にも当然出席するつもりだ。カンファレンスを立ち上げるのは大きな賭けだと言われている。最高の講演者と最高の聴衆のどちらを先に集めるかという「鶏と卵」の問題があるためだ。一方を得るにはもう一方が必要で、一方がなければもう一方も得られない。Mossberg氏とSwisher氏は、その人柄と名声で初回につきもののそんな心配を吹き飛ばしてしまった。あっさりと史上最強の講演者をそろえたので、素晴らしい聴衆もすぐに集まった。しかし、これはこれで問題だった。最強メンバーが集まるのが当たり前になってしまったのだ。
第1回「D」の講演者はとにかく豪華だった(以下肩書きは当時のもの)。Bill Gates氏(Microsoft会長)、Steve Jobs氏(Apple Computer最高経営責任者(CEO))、Barry Diller氏(USA Interactive and Vivendi UNIVERSAL Entertainment会長兼CEO)、Larry Page氏とSergey Brin氏(Google創業者)、Meg Whitman氏(eBay CEO)、Terry Semel氏(Yahoo!会長兼CEO)、Mark Cuban氏(HDNet創業者、元Broadcast.com CEO)。夢のような顔ぶれだ。D2は、Gates氏、Jobs氏、Larry Ellison氏(Oracle CEO)、Carly Fiorina氏(Hewlett-Packard会長兼CEO)、孫正義氏(ソフトバンク社長)、Henning Kagermann氏(SAP CEO)。D3は、Gates氏、Jobs氏、Mel Karmazin氏(SIRIUS Sattelite Radio CEO)、Scott McNealy氏(Sun Microsystems CEO)、Ed Zander氏(Motorla CEO)、Diller氏(IAC/InterActiveCorp会長兼CEO)、Jerry Yang氏とDave Filo氏(Yahoo!共同創業者)。D4は、Gates氏、Al Gore氏(Current TV会長、元米副大統領)、Howard Stringer氏(ソニー会長兼CEO)、Semel氏、Vinod Khosla氏(Khosla Ventures CEO)、Robert Iger氏(Disney社長兼CEO)。Jobs氏はこの回のみ欠席。毎回これでは、記念すべきD5をどうやって特別なものにするつもりなのだろう。その答えは「D」のホームページに大々的に発表された。「D5でBill Gates氏とSteve Jobs氏が歴史的競演」、と。
正直に言おう。Gates氏とJobs氏がステージでやり合うのは楽しみだが、2人の対戦を「歴史的競演」と呼ぶのは少しやりすぎだと私は感じていた。予告は控えめにし、本番で驚かせるのがショーの鉄則である。2人のおしゃべりを「歴史的」と称するのは控えめな予告とは思えないし、「歴史的」と宣伝しておいて本番で驚かせるのはかなり難しいのではないか。しかし、私は間違っていた。
Bill Gates氏とSteve Jobs氏の「歴史的」競演は単に歴史的なだけでなく、実に感動的なものだった。私は、スマートでシニカルなジャブで牽制し合う表面的なディスカッションになると予想していた。ところが実際は、歴史の主人公たちが自らの物語を語ってくれたのだ。会場に座って、Gates氏とJobs氏が、最高のPCを世の中に送りだそうとした彼らの30年の道のりを語るのを聞くうちに、この2人ほど私の生活の質に大きな影響を与えた人間は他にいないのだという感慨がこみ上げてきた(私が今MacBookのMicrosoft Wordでこの記事を書いているのがその証拠だ)。
会場の熱気と興奮を言葉だけで再現するのは難しい。ビデオでさえも難しいだろう。それでも、Mossberg氏とSwisher氏によるニュースとオピニオンの素晴らしい新サイトAllThingsD.comで、ぜひこのディスカッションのビデオを見ていただきたい。そこには、成熟した思慮深い2人の主役が登場する。Bill Gates氏は知的なリーダーで圧倒的な魅力がある。Steve Jobs氏はいつものように見事なパフォーマーぶりだが、この日は少し控えめだった。長年連れ添った夫婦のように2人の息はぴったりだ。そして、彼らが振り返るPC業界の歴史にはロマンティックな時もそうでない時もあった。Jobs氏がビートルズの歌詞を引用して締めくくると、私たちは総立ちになった。それはラブレターの一節のようだった。「君と僕には思い出がある。目の前に伸びる道よりも長い思い出が」
素晴らしいカンファレンスとはとりもなおさず素晴らしいドラマである。Jobs氏とGates氏は、数え切れないほど多くの点で私たちの生活をすっかり変えてしまった。そのことを謙虚にたどったこの2人の顔合わせほど素晴らしいドラマは見たことがない。人生に二度と無いこのイベントを指揮したMossberg氏とSwisher氏に敬意を表したい。ところで、D6にはいつ申し込めるのだろうか。
世界では、今この瞬間にもユニークなアイデアを持った起業家たちが成功を信じて会社を興している。ベンチャーキャピタル「August Capital」のパートナーであるDavid Hornik氏やSix ApartのAndrew Anker氏をはじめ、複数のベンチャーキャピタリストが、VentureBlogを通じて、ベンチャーキャピタルの本場であるシリコンバレーはサンドヒルロードから米国のベンチャー事情や注目すべきウェブサイト、起業のヒントを伝える。
David Hornik氏は、ベンチャーキャピタル「August Capital」のパートナーで、2000年に同社へ加わって以来、ベンチャーキャピタリストとしてIT系企業を中心に投資し、Six Apartの社外取締役も兼ねている。August Capitalに加わる以前には、複数の法律事務所で知的財産や企業法律顧問などの弁護士として、Yahooなど複数のベンチャー企業の設立や資金調達、運営に関する法律実務のキャリアを有している。Six ApartのAndrew Anker氏をはじめ、複数のベンチャーキャピタリストらと米国のベンチャー事情をレポートするサイト「VentureBlog」を運営する。
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