そろそろ本気で考えよう!「できるIT系社員」の作り方
安達裕哉(トーマツイノベーション)
これまで、企業の人材育成の勘所は下の3点であることを順に解説いたしました。
(1)会社の考え方に共感してもらえる人材を育成
(2)熱意(やる気)を持った人材を育成
(3)能力の高い人材を育成
さて、前回は(3)能力の高い人材を育成、に対して、経営者の視点からの原則を解説させていただきましたが、今回は少し視点を変え、部下の育成に責任を持っている現場の上司となったときの具体的な行動と考え方についてご紹介いたします。
部下を育成しなければならないとき、上司はどのように考え、行動すべきなのでしょうか。結論からいうと、現場で実践しなければならないことは「部下が自分で育つための手助け」です。
いくら上司が頑張ったとしても、最終的に人の成長は自分自身に責任があります。上司ができるのは、すこし手助けをして、部下の成長の障害を取り除いてあげたり、部下に大きな目標を見せてあげたりすることです。
具体的には、下の4項目がやるべきことになります。
(a)「体制の整備」
(b)「段階的な目標設定とフィードバック」
(c)「答えをすぐに言わない」
(d)「部下に質問する」
それでは、順番に見ていきます。
まずは「体制の整備」が必要です。ここで言う体制とは、部下が自分で育つための環境のことを指します。
OJTや教育研修による自己啓発などを受けられるようにしてあげることもこれに含まれますが、もっとも大事なことは「さまざまな人に出会えるようにしてあげる」ことです。
皆様も、人生の中で大きな影響を受けた人がいるのではないでしょうか。さまざまな人との出会いは、人が育つための大きなきっかけとなります。
人が育つための次の鍵は「目標設定とフィードバック」です。特に「目標設定」は上司の最も重要な仕事の一つです。
適切な目標は人が育つための大きな手助けとなりますが、不適切な目標は逆に人のやる気を奪います。上司は、その人の人生を考えるつもりで、真剣にこれに取り組む必要があります。
適切な目標設定とフィードバックをするためのポイントは次の3つです。
・その人の強みを伸ばす目標にする
・常に新しいことに取り組ませる
・小さな成功から大きな成功へ
「その人の強みを伸ばす目標にする」については前回の記事でご紹介したとおりです。能力開発は強みに基づいて行わなければなりません。
「何事かを成し得るのは弱みによってではない、強みによってである」
上記のピーター・ドラッカー氏の言葉通りです。
「常に新しいことに取り組ませる」もまた大事です。単調な仕事の繰り返しは、仕事を退屈なものにします。また、常によりよく仕事をしようという意欲を失わせてしまいます。
上司は、与えた仕事を部下が完璧にこなせるようになった時ほど、注意する必要があります。既にその仕事は部下の成長にとって必要な仕事ではない、と考えなければなりません。
最後に、上司は「小さな成功から大きな成功へ」というストーリーを作り、フィードバックを行います。なぜ、このようなストーリーが必要なのでしょうか。理由はこうです。
最初から次々と大きな成果をあげられる人はほとんどいません。真の成果は長期的な活動の結果です。短期的に成果を出し続ける、という状態は単に博打に勝っているだけです。
ですが、目に見える成果がすぐに出ないと、部下はあせります。そのために、サクセスストーリーを演出し、途中途中でフィードバックを与え、少しでも成果に貢献していることを伝えることが必要です。
上司は、部下の質問に対して答えをすぐに言ってはいけません。部下が、上司に依存してしまいます。
「名選手は名監督ならず」という言葉がありますが、多くは上司が優秀すぎるが故に、すべての問題解決を引き受けてしまうからなのです。
下の会話を見てください。
部下に考えさせることにより、人が育つための土壌が出来上がります。
ただし、これを実践に移すためには、一つ障害があります。それは、「部下に考えさせると、とても時間がかかる」ということです。そのために、「上司は、部下に考えさせるための時間を意図的に確保しなければいけません」。優秀な上司は常に忙しいものです。しかし、「忙しい」と言って部下のための時間を確保しないことは、上司の怠慢であり、職務放棄です。
時間を確保するためのポイントは、次の2項目しかありません。
・仕事を捨てる
・仕事を標準化し、部下に与える
簡単に言えば、「成果に貢献しない仕事」「自分でなくてもできる仕事」「自分の強みではない仕事」は全部手帳の予定から消してください。
そして、「自分しかできない仕事」を徐々に「部下ができる仕事」に変えるため、標準化を行います。「自分しかできない仕事」を分析によって、「部下ができる仕事」に変えることは上司の大事な仕事です。
「人に教えるときに一番学ぶ」と言う言葉がありますが、部下に質問し、部下に自分の意見を説明させることが部下の「育つ」環境を作ります。
とにかく、部下に質問し、話をたくさん聴きましょう。これは、部下と上司の双方にとって下の図のようなメリットがあります。
ただし、この時注意点があります。非常に当たり前に思えるかもしれませんが、それは「部下を尊重し、本当にその人の意見を聴きたい、部下から学びたいと思って聴く」と言うことです。
全世界で1000万部以上売れたベストセラーである「七つの習慣」の著者、スティーブン・R・コヴィーはその著作の中で以下のように述べています。
「話をしているとき、ほとんどの人は理解しようとして聴いているのではなく、答えようとして聴いているのだ。話しているか、話す準備をしているか、2つに1つである」
いくら質問されても、結局上司の思い通りの結果に誘導されるだけであれば、質問は逆効果です。
上司が部下を尊重し、真摯な姿勢で意見を聴くことが、部下の成長につながるのです。
筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーションに入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。
コメント ( 1 )
も関心したけど、
そのつくり方の方法まで提示しているとは!
あなたは相当仕事できる人ですね。
文章全体に本質を突き詰めようとする姿勢と
思慮深さを感じます。