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2008年3月27日 15時53分

社員の熱意は、対話による長所の発見から生まれる

安達裕哉(トーマツイノベーション)

 企業の人材育成の勘所として、

・会社の考え方に共感してもらえる人材を育成

・熱意(やる気)を持った人材を育成

・能力の高い人材を育成

――の3点を挙げてこれらを解説していく本企画。前回は「会社の考え方に共感してもらえる人材を育成」について書きましたが、今回は「熱意(やる気)を持った人材を育成」に対しての具体的施策をご紹介していきましょう。

「熱意を持って仕事する人」とはどのような人か

 まず一つ、定義しなければならないことがあります。それは、「熱意を持って仕事をする人とはどのような人か」ということです。

 「熱意」という言葉を辞書で引くと、「熱心な気持ち」とあります。「熱心」とは「一つの物事に深く打ち込むこと、情熱を持って一心に物事をすること」となっています。

 企業においては、おおむね下のような仕事ぶりを見せる人に使われるのではないでしょうか。

「自分から進んで仕事をする」

「困難なことがあってもあきらめずにやりきる」

「常に改善する努力を続ける」

「難しい仕事・大きな仕事にチャレンジする」

 以上をまとめますと、熱意に関しては諸説ありますが、結局のところ下の2点をクリアする人材が「熱意を持った人材」と言えます。

・要求された責任をきっちりと果たす人材

・現状よりもより大きな責任を引き受けたいと思い、それを果たす人材

 企業は、本人が望む、望まないにかかわらず、そこで働く人へ責任を要求します。その責任の果たし方が、熱意の表れだと言えるでしょう。

お金だけでは十分ではない

 さて、上の結論に従うと、つぎは「人に責任感を持たせ、より大きな責任を果たしてもらう」には何をなすべきなのかを考えなくてはいけません。

 最初に考えるのは、金銭的な動機付けです。「給料を上げれば、熱意も増すだろう」と考えることは間違いではないのですが、それだけでは足りません。

 GE(ゼネラル・エレクトリック)や、P&Gなどのコンサルタントを務めたことでも有名なピーター・ドラッカー氏はこのように述べています。

 「責任は金で買うことができない。もちろん金銭的な報酬や動機付けは重要である。だが、それらのものは消極的な意味を持つにすぎない」

 ドラッカー氏は、下のように「お金は不足していれば熱意をそぎますが、それが十分だからといって熱意を持ってもらえるわけではない」ことを主張しています。

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 過去の名経営者と呼ばれた方々も、表現の違いはあれ、同様の事を述べていますので、下にご紹介しておきましょう。

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 以上のことから、金銭的な報酬については、業界、年齢、地域などの統計的な値を参考にし、多すぎず、少なすぎずを心がければ問題はないでしょう。

 それでは、お金以外にできることはあるのでしょうか。前述のドラッカー氏は「仕事で責任を持たせるためには、4つの条件がある」と述べています。

(1)人を正しい配置にする

(2)仕事に高い基準を設定する

(3)自己管理に必要な情報を与える

(4)経営トップと同じ目線になってもらう

 それでは、順を追って解説をしていきます。

 

4つの条件とは

 (1)人を正しい配置にするとは、どのようなことでしょうか。一言で言えば、「その人の得意な仕事、強みのある仕事」をしてもらうということです。

 どのような人でも必ず得意な仕事があります。経営トップや上司はその強みを見つけて、正しく人を配置しなければいけません。

 組織で仕事をする最大のメリットは、各人がお互いの長所を持って、短所を補えることにあります。そうでなければ、会社である必要もないのです。

 下の図を見てください。江戸時代の思想家である、荻生徂徠(おぎゅう・そらい)が長所進展について「人はその長所のみとらば可なり。短所を知るを要せず」と述べており、それについて元経団連会長の土光氏がコメントしています。

 江戸時代から、人材マネジメントの本質は変化していないのでしょう。

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山本五十六も言っている

 (2)仕事に高い基準を設定する、は単に「高い目標を社員に与える」だけだと誤解されやすいのですが、そうではありません。

 やるべきことは「社員が高い目標を持ちたくなるように、経営トップ・上司が率先して高い目標を自分に課す(「率先垂範」という言葉が、適切です)」こと、「社員が目標を自分でうまく決められるように経営トップが社員を助ける」の2点です。

 「社員が高い目標を持たない」ことは経営トップとその上司に責任がある場合も多いのです。

 (3)自己管理に必要な情報を与える、とは何でしょうか。それは「社員たち自身がどれほどのことを成し遂げたのか、教えて、評価する」ということです。これはとても手間のかかることですが、人事評価のときだけではなく、常にその働きぶりを社員自身でチェックできるように、情報を提供しなければいけません。

 (2)(3)については、海軍の優れた指揮官であったことで有名な山本五十六がこのようなことを言っています。

 「やってみせ、いって聞かせて、させて見せ、ほめてやらねば、人は動かじ」

 使い古された言葉ではありますが、人材マネジメントの本質をあらわした一言であると言えるでしょう。

よく聴き、参画してもらう

 最後に(4)経営トップと同じ目線になる、ですが、これは少し難しいことですので、少々解説をいたします。ここでまた、ドラッカー氏の言葉を引用いたします。

 「働く人は(中略)企業全体の成功と存続に責任を持つ経営管理者のように企業を見るときにのみ、最高の仕事を目指して自らの責任を果たすことができる。そのような視点は参画を通じてのみ獲得できる」

 ここでの重要なキーワードは「参画」です。人は何か重要な決定に参画したとき、経営トップと同じ目線になることができる、とドラッカー氏は述べています。

 「人事制度の改革」「業務マニュアルの作成」などに始まり、「社員旅行の計画」「職場の掃除」「食堂の運営」など、本業とは関係のない部分まで、社員は会社の決定に参加したがっています。

 会社では、社員に決定に参加する場を与えているでしょうか?そのような場があまりにも不足している場合、社員は「部外者」として責任を引き受けようとはしません。

 そのためには、まず社員の言うことを「聴く」ことが非常に重要です。なにも、会議に参加させたり、リーダーに任命したりなどする必要はありません。経営者や上司が社員から意見を聴くことを重視するだけでよいのです。

 松下電器の創業者である松下幸之助は、「聴き魔」として有名な経営者でした。そのような経営者の下では、一人ひとりが会社への参画意識と誇りをもてたことでしょう。

 下の図は、松下幸之助の「聴き方」です。まずはとにかく社員に聴き、その後自分の意見を述べて、決定を行うプロセスをその場で共有しています。

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 一人ひとりの力量に応じた、意思決定への参画の場を与えることで、社員は高い目線を持ち、会社への貢献を心に誓うのです。

トーマツイノベーションシニアマネージャー
安達裕哉(あだち・ゆうや)

筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーションに入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。