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2008年3月17日 00時25分

全社員に会社の方向性を共感してもらうには

安達裕哉(トーマツイノベーション)

 前回、社員の方向性(考え方)を合わせるための人材育成の勘所は下の3点であると言いました。

(1) 会社の考え方に共感してもらえる人材を育成

(2) 熱意(やる気)を持った人材を育成

(3) 能力の高い人材を育成

 さて、今回は上記(1)の「会社の考え方に共感してもらえる人材を育成」に対しての具体的施策をご紹介していきましょう。

大義名分のある会社の基本理念

 最初に結論から言ってしまうと、多くの社員に会社の考え方に共感してもらうためにやるべきことは大きく3つあります。

(a) 会社の基本理念を作り、なんども繰り返し考え方を伝える

(b) 社員から信用される会社になる

(c) どうしても考え方に共感できない一部の人には会社を辞めてもらう

 それではこの3ステップがなぜ重要なのかを詳しく見ていきましょう。

 まず1つ目です。最も基本的なこととして、会社の考え方に共感してもらうためには、社員がその考え方を知り、理解する必要があります。下の例を見てください。ジョンソン・エンド・ジョンソンは非常に明確な基本理念を作ることで、全社員に浸透を図り、実践を促しています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの基本理念 ※クリックすると拡大します

 ただし、基本理念を作る際に気をつけなければならないことがあります。京セラやKDDIの創業者である稲盛和夫氏はこのようなことをいっています。

 「人間が全身全霊で打ち込むには大儀を必要とします。『大儀』とは個人の利益でなく、世のため人のためという『公』の利益のことです。当時の京セラには資金も技術もありませんでした。しかし、大義名分のある目的、すなわち経営理念を掲げたおかげで全従業員の心がひとつにまとまったのです」

 私利私欲のための理念では、多くの社員に共感してもらうことはできません。「大儀」が感じられる理念を作成しなければいけません。

 さらに、人は大変忘れやすい生き物ですから、繰り返しそれを伝える必要があります。下に挙げた多くの経営者が語るように、ここで重要なのはコミュニケーションの質ではなく、回数です。考え方の伝達にどれだけの時間を割いているか、これが社員への浸透度を決定します。

会社の考え方を伝えるには、会話を重ねることが重要 ※クリックすると拡大します

 2つ目として、「社員から信用される会社になる」とありますが、会社が社員を大切に扱い、社員が会社を愛してこそ、本当に社員が会社の考え方に共感します。人間関係に置き換えてみれば、当たり前のことです。信用していない人の意見に共感できるでしょうか。同意はしても、共感はできないのではないでしょうか。

 社員から信用される会社になるためには、第一に「社員を裏切らないこと」、第二に「社員に働き甲斐を感じてもらうこと」が重要です。

社員から信用される会社になるためには ※クリックすると拡大します

 社員が「裏切られた」と感じるのは下のようなときです。

社員はどんな時に会社に裏切られたと感じるか? ※クリックすると拡大します

 裏切られたと感じた社員は、会社の理念に共感するどころか、「どうせ口だけだろう」と、疑いのまなざしを向けることでしょう。

 あなたの会社は社員から信用されているでしょうか?次ページ文頭にある十か条でチェックしてみてください。

社員を裏切らない会社の10カ条 ※クリックすると拡大します

 さらに、「働き甲斐を感じる会社」とはどのような会社でしょうか。これについては前回も登場した、ピーター・ドラッカー氏が述べていることがあります。

 「動機付け、特に知識労働者の動機付けは(中略)仕事そのものから満足を得なければならない。挑戦の機会が与えられなければならない。組織の使命を知り、それを最高のものとし、献身できなければならない。より良い仕事のための訓練を受けられなければならない。成果を理解できなければならない」

 ここで重要なことは、社員に働き甲斐を与えるために会社がすべきことは、

・面白い仕事を用意する

・挑戦できる場を与える

・組織の使命の重要性を知らせる

・教育・訓練を受けさせる

・社員の出した成果を確認・理解させる

――の5つを実行せよと述べている点です。

 社員に働き甲斐を与えるための施策を忠実に実行できれば、多くの社員が会社に対して恩を感じ、結果として会社を信頼することでしょう。

仕事はできるが考えの合わない社員、あなたならどうします?

 しかし、ここまで会社が社員に対して誠実に対応したとしても、会社の理念に共感しない社員はやはり存在します。3つ目として、どうしても理念に共感できない人には会社を辞めてもらう、ということがあります。

 世界屈指の大企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)を率いた元GE会長のジャック・ウェルチ氏は「会社の理念」について1つの指針となる考え方を提唱しています。

 それは人材を「考え方が合う・合わない」「成果を出す・出せない」で4つのタイプに分けることです。

【人材の4タイプ】

タイプA「考え方が合う・成果を出す」

タイプB「考え方が合う・成果を出せない」

タイプC「考え方が合わない・成果を出す」

タイプD「考え方が合わない・成果を出せない」

 タイプA〜Dに分けたとき、みなさんは各タイプの人材についてどうするべきと考えますか?

 ジャック・ウェルチ氏は下のように考えているそうです。

人材の4分野 ※クリックすると拡大します

 ここで特徴的なのは、Cの考え方が合わないが、成果を出す人材に「やめてもらう」と言い切っている点です。

 図を見れば「考え方の共有」をジャック・ウェルチ氏が最重要視していることがよくわかりますが、A〜Dの中で最も悩ましいのがCの「考え方が合わない・成果を出す」タイプです。彼/彼女らが会社を去れば、成果(例えば売り上げ)を失うことになります。

 しかしながら、ジャック・ウェルチ氏によると、Cのタイプの幹部・管理職は部下のやる気を引き出すのではなく、部下に強圧的なやり方で成果を上げている人が多いと言っています。

 また、経営トップが「会社の理念」の重要性をいくら社員に伝えても、考え方を尊重しない幹部・管理職が大手を振っているようであれば、経営トップを二枚舌の持ち主としか社員は見ません。

 経営トップが「会社の理念」を重視し、本気を見せるためには、こうした幹部・管理職を擁護することなく毅然とした態度で臨まなければならないのです。たとえ短期的に成果が失われたとしても、長期的に見れば「会社の理念」を共有した人たちが頑張ろうとより努力し、大きな成果を生み出すはずです。

トーマツイノベーションシニアマネージャー
安達裕哉(あだち・ゆうや)

筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーションに入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。