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 携帯電話やPC向け、電車やバスの乗換案内サービスを提供する駅前探険倶楽部。1997年に東芝の社内事業としてスタートし、2003年に分社化した同社は、2007年10月に投資ファンドと共同でマネージメングバイアウト(MBO:経営者による事業買収)し、東芝グループからの独立を果たした。ゆくゆくはIPOを目指すという代表取締役社長の中村太郎氏に、今後のサービス展開について聞いた。

――駅前探険倶楽部(駅探)というと乗り換え案内のパイオニア的存在ですが、ここにきてMBOした理由を聞かせてください。

 駅探はもともと、1997年に「GENIO」というPHS機能を内蔵したPDAを東芝がリリースしたときに、世界初のウェブ版乗り換え案内サービスとして誕生しました。残念ながら端末がそれほど普及しなかったため、しばらくはPC向けに運営していたんです。

 その後、1999年に、NTTドコモのiモード公式コンテンツとして採用されました。2000年にはサービスを有料化しましたが会員数は伸び、ASPサービスの依頼も増えてきて採算がとれるようになったため、2003年に分社、独立しました。

 その後、2005年以降、東芝本体がデジタル機器や半導体、原子力に経営資源を集中するという方針を固めました。我々としても連結子会社という位置づけでは他社との資本提携などダイナミックな動きができないという悩みもあり、もう少し自由にサービスを運営、開発していきたいということで、資本構成を変えさせていただいたわけです。

――パートナーとなる投資ファンドのポラリス•プリンシパル•ファイナンスとは、これまで何か付き合いがあったのでしょうか。

 いえ、当社の拡大方針に賛同していただいて、結果を出しさえすれば支援いただけるということだったので、協力をお願いしました。他の事業会社と組む選択肢もあったのですが、自由度を保ちたいという当社の考えと一致しなかったので、ポラリスと一緒にやっていくことにしたんです。

――現状の売上高と収益構造は。

 収入源は、大きく分けてモバイルサイトの有料課金、広告、ASPサービスの3つです。売上高は2007年3月期で20億円強ですね。内訳は、半分以上が有料課金、4分の1強がASPサービスによる収入、残りが広告販売などです。

 広告はユーザーの行動履歴や検索結果をもとに、地域に連動した広告が掲載されるようになっています。もう少し売上高に占める広告の比率が上がればいいとは思っていますが、広告収入が課金収入をいますぐ上回ることはないでしょう。ただし、課金のビジネスモデルがいつまで続くかわかりませんからね。ハードの多様化にどう対応していくかも含めて、より成長率を高めていかなくてはいけないと思っています。

――他社と比較した時の、駅探の強みはどこにあると考えていますか。

 ひとつは、情報の速さと深さです。この点はASPサービスを提供している企業には、高く評価していただいています。10年間で培った経験や鉄道会社との長い付き合いが当社の大きな資産になっています。

 独自開発のエンジンも強みです。たとえば、ある人材派遣会社に提供しているエンジンでは、求人を任意の区間内、もしくは「自宅からN分以内に通勤可能」といった条件で探せます。このエンジンを応用すれば、「ある駅から徒歩N分以内に住んでいる人」といった条件で地域広告を配信することも可能です。こういった強みをどう生かすかが今後の課題です。

――無料サイトが増えたことで、有料モバイルサイトの運営は以前より難しくなっているという話を聞きます。

 駅探の会員数はサービス開始以来、減っていません。ただ、正直伸び率は鈍化しています。しかし他社との連携など、やり方を工夫すればまだまだ伸ばせるはずです。ASP提供先からユーザーを誘導することも視野に入れ、利用シーンを細かく分析しながら、当社のサイトを構築し直すことも考えています。

 当社のサービスを利用しているユーザーの目的は多岐に渡ります。単なる乗換案内ではなく、いかにユーザーの生活に合ったサービスを展開できるかが大切なんです。

――端末の高機能化に伴って、サービス開発費の上昇が負担になりませんか。

 それに合わせてユーザー数が増えれば、いいのではないでしょうか。そもそも路線情報は手帳の中にも入っているくらいですから、あって邪魔になるものではないんですよね。

 ただし、たとえ機能が上がったり細かくなったりしても、それを感じさせないようにすることが重要じゃないかと思います。サービスの背後で動いているシステムは高機能なんだけども、表面はユーザーに優しいものを提示していくべきだし、そうしないとユーザーは離れていってしまいますよね。

 当社が9月にスタートした「乗換•おまかせアドバイス」は、細かい条件設定をしなくても乗り換えの有無や乗り換え区間の歩く速度など細かな案内まで例示します。こういったものをいかに提供できるかが重要になるでしょう。

――海外展開は考えていますか。

 どうしようか思案中です。海外では公共交通機関の正確性が日本ほど求められないのではないかと思います。ここまで時間にきっちりしているのは日本人ぐらいかもしれないですね。

――では、首都圏以外のバス検索は。

 ユーザーの反応をみながらですね。乗り換え案内の場合、首都圏在住のユーザーが多いので、どうしてもそこに焦点を当てざるを得ません。政令都市ぐらいまでは同じように展開できるでしょうけれど、それ以外の場所でどうなるのかというのは未知数です。海外と同じような状況ですね。

 我々のサービスは、ユーザーの生活行動パターンに大きく依存しています。だからこそ面白いんですが、バリューポジションを明確にしないとサービスになりません。

――今後の目標は。

 IPOについては、ファンドに入っていただいたこともあり、もちろん将来的に目指しています。そのためにはまず業界でトップに立ち、「乗り換え案内やルート探索ならば駅探」と言われるようにしたいなと。

 競合としてはNAVITIME、ジョルダン、ヴァル研究所などが挙げられますが、まずは情報機器を使って移動することが便利だという意識を広めないと、市場が拡大しません。今はまだ市場の開拓期なんです。ユーザーが気付いていない潜在的な利用シーンはまだまだあるはずですから、ライバル企業と競い合いながら、市場を拡大していきたいと思います。いかに、新しい経験をユーザーに提供できるかを考えていきたいですね。