2007年5月17日 19時51分
文:小林 ミノル、鳴海淳義(編集部)
4月2日、クロスメディア事業に力を入れるリクルートが、東京工業大学の奥村学研究室と共同で、ユーザー発信型コンテンツを利用したメディアやマーケティングを手がける新会社、ブログウォッチャーを設立した。資本金は5000万円。株主構成はリクルートが99%、奥村学氏が1%となっている。代表取締役には、リクルートの羽野仁彦氏が就任した。
京都大学で学生ベンチャーを立ち上げた経験を持つ羽野社長は、2003年、リクルートマーケティング局にSEO担当として入社。検索エンジンに関心を抱き、業務の傍ら研究を続けていた。そこから生まれたのが、ローカル情報検索エンジン「ドコイク?」(05年)やFlash地図サイト「スゴイ地図」(06年)だ。
「2004年に社内のビジネスモデルコンテストで、検索エンジンを使ったメディアを立ち上げる企画をプレゼンしたところ、運良く採用されたんです。そのときにブログ検索の案もすでに出ていたんですが、地域情報の検索ならリクルートが持つ強みと掛け合わせられるんじゃないかということで、ドコイク?やスゴイ地図をまず開発することになりました」(羽野氏)
その一方で、リクルートは、2006年7月に、R&D投資を目的とするリクルートインキュベーションパートナーズを設立していた。そこで持ち上がったのが、テキストマイニング技術の事業化だ。アソシエイトとして参加していた羽野氏は、独自のブログ検索技術を研究していた奥村研究室との提携を提案する。
ブログウォッチャー 代表取締役社長の羽野仁彦氏「奥村先生と初めてコンタクトをとったのは3年前です。ブログウォッチャーの発表があった翌日に電話でアポを取って会いに行ったんです。それ以後、私が検索技術の研究論文を発表するときにアドバイスをもらうなど、コンスタントにやりとりするようになりました。ブログウォッチャーの事業化は、ドコイク?やスゴイ地図を開発しながら、去年の10月から準備を進めていました。会社設立をこの時期にしたのは、日本におけるブログ需要が大幅な伸びをみせていることと、6月中旬を目処に発表する「ブログウォッチャー4.0」の実用性が飛躍的にアップしたことが大きいですね」(羽野氏)
「インキュベーションパートナーは技術提携も含めてベンチャー企業と協力していくことを目的とした会社です。テキストマイニングにビジネスの可能性がありそうだということで、羽野にリサーチをしてもらったところ、企業ではないものの、奥村研究室さんの名前が上がったんです。既存のクライアントさんとの関係がいろいろあるので、リクルートから独立させたかったという理由や、羽野に意思決定を集約させて、スピード感を持たせたかったということも別会社化した理由のひとつです」(ブログウオッチャー取締役の堤達生氏)
ブログウォッチャーは、調べたい単語を入力すると、単語が使用されているブログを検索するだけでなく、登録されているブログ上で、その単語がどのように評価されてているかを判断できる。しかも、自動的に単語を学習しながら、プラスとマイナスの評価を判別する機能を備えている点が特徴だ。たとえば「妖艶」「神聖」、あるいは「マイウー」「ギザカワユス」といった、ポジティブな意味なのかネガティブな意味なのか分類が難しい単語を、ブログ上の文章表現からデータを蓄積して学習し、プラスの評価として組み込むのである。
「ブログ上の表現は、口語体や造語が多く、従来の辞書的なデータ集積方法だと、どのような評価か判別できないものが多かったんです。しかし、RSSを駆使してデータを収集するブログウォッチャーなら、そういった単語も自動的に学習することで分類できます」(羽野氏)
新会社では奥村学研究室のテキストマイニング技術とリクルートの編集ノウハウを活用し、ユーザーの声で作られた雑誌感覚のサイトを提供していく。これはつまり、検索されて初めて価値が生まれるプル型メディアではなく、あくまで検索が発生する以前のプッシュ型メディアを目指すということだ。
「ブログ検索のブログウォッチャーは、第三者の体験談を知るために検索するというユーザーをターゲットにしています。ただし、我々が手がけたいのは、メディアであって、ブログの検索サイトではないんです。『“kizasi.jp”や“Technorati”みたいなものですか?』とよく質問されるのですが、より実体験メディアとしてのパワーを持たせられないかと考えているところです」(羽野氏)
今後、羽野氏は、ブログウォッチャーに専任するため、ドコイク?、スゴイ地図からは離れる予定だ。しかし、両サービスで培ったネット上での編集ノウハウやユーザーインターフェイスへのこだわりを、ブログウォッチャーにも随所に取り入れていきたいと語る。

「実はもはや、検索技術自体には、あまり発展の余地はありません。しかし、細かなデータ収集を行うテキストマイニングには、まだまだ改良発展の可能性があります。日本人のブログ人口は600万人まで増加しています。そのうちの1%でも6万人ですよね。ここまで規模が大きくなると、もはやテキストマイニングが間に入らない限り、編集作業は難しい。
産業革命に近いドラスティックな変化のなかで、編集者の役割も変わっていくはずです。編集者がなくなるわけではないと思いますが、私としては、人力で行われてきた編集作業をテキストマイニングの技術を使って機械化していきたいんです」(羽野氏)
ブログウォッチャーの社員は現在4人。サービス開発全般を指揮する羽野氏と、エンジニアが3人。そして堤氏が、外部から資本や営業、アライアンスを担当している。スタッフはメディアとしてのブランディングや広告収入の拡大など、今後の展開に応じて、臨機応変に拡充していく予定という。
「ブログのテーマとして書かれやすいのは、耐久財よりも消費材なんです。住宅などよりも、オーディオや車や衣服といった、いままでリクルートがあまりタッチした事がない商品を扱うクライアントさんに、ブログウォッチャーを介してアプローチできないかと考えています」(羽野氏)
「CGMを名乗っているメディアで、広告出稿に絶えうるメディアって、ほとんどないんです。しかし、クライアントさんからのニーズは、ひしひしと肌で感じているので、広告を出したいけれど出す場所がないという、彼らの不安を解消できるメディアをつくることができれば、きっとマネタイズできると考えています。CGMとして、ユーザーの作ったコンテンツをバランスをとって活かせるかどうか、非常に微妙なさじ加減なのですが、そこにいま、チャレンジしているところですね。それって、誰でも言えるし、考えられることなんですが、実際に成功させるのはすごくハードなんです」(堤氏)
「じゃらん」「Hotpepper」「R25」「ゼクシィ」など、マーケティングを元に細かくセグメント化したメディアを立ち上げ、ピンポイントでターゲットとなる消費者にリーチさせて広告を獲得するというビジネスモデルは、リクルートのお家芸である。この伝統を、いかにCGMビジネスに応用させることができるかが、ブログウォッチャー成功の鍵になってくるはずだ。新サイトは6月15日の公開を目標に開発が進められている。
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