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 2003年10月14日、有限会社としてスタートを切り、2004年1月1日に「旅行のクチコミサイト フォートラベル」を開設したフォートラベル。現在では、日本最大の旅行コミュニティーとして多くの利用者から高い支持を得ている。

 設立から2年が経過したころには、フォートラベルは人事面、経営面など組織的にも大きくなり、会社としての転換期を迎えた。創業者の津田全泰氏は、2006年10月に組織の見直しを図るため、同じ大学出身者で経営面に明るい野田臣吾氏をCEOに迎え、組織改革に取り組んだ。

 転換期を迎えるベンチャー企業の組織運営には何が必要か──。フォートラベルが行ってきた経緯に1つの答えを見出すべく、代表取締役会長兼CCO(最高コンテンツ責任者)の津田氏、代表取締役社長兼CEOの野田氏に、“新生フォートラベル”の狙いと今後を聞いた。

社員数が3倍になった組織の悩みを解決

--フォートラベルは国内でいち早くWeb2.0的な取り組みをしましたが、急激な成長を遂げ、サービス面、組織面で変わった点はありますか。

津田氏:フォートラベルのサービスは、私がイメージして自分でプログラミングをするという方法で行ってきました。2006年の前半までは、創業時からのスタッフ7人で頑張ってきましたが、規模が大きくなると仕事を回していくのが困難になってきます。そこで、昨年の後半に組織の見直しをして、今年からはスタッフを27人に増やして、以前の3倍の体制でやっていくことにしたんです。

--組織が大きくなることで、それぞれの役割や分担にも変化が生じますよね。

津田氏:7人で運営していた時は、「サービス=会社」でした。つまり、会社組織としての経営面は、あまり考えなくても回っていたんです。しかし、これからは組織にも当然、気を配らなければならないし、人事制度もしっかりと作る必要が出てきました。私は組織作りが苦手だと思っていたし、サービスに集中できる環境を維持したかった。自分で経営を見ていては、“編集長的”な役割ができなくなってしまいますからね。

 今後、3年、5年、10年先を考えたとき、フォートラベル以外にも新たな事業をやっていくわけです。組織をしっかり固めなければ、実現させるのは難しくなるでしょう。2006年の前半は、私が会社を作る側になるか、それとも適任者を招くか、非常に悩んでいました。

--そして、野田さんを招くことになったわけですね。野田さんとはどのような経緯で知り合ったんですか。

津田氏:実は、野田は私と同じ慶應義塾大学の卒業生なんです。卒業後に接点がなくなっていたのですが、たまたま外でコーヒーを飲んでいるときに再会しました。外資系の企業で働く野田は金融に明るく、組織運営についても強いので、それからはランチに行ったり飲みに行ったりしながら、いろいろな相談に乗ってもらいました。雑談を交えながら何度か会って話をしていくうちに、野田なら適任だと思って「社長をやってくれないか」と打診してみたわけです。

--野田さんは津田さんから話を聞く前に、フォートラベルを知っていましたか。

野田氏:しっかりサイトの中まで見たのは、津田からコンセプト的な話を雑談として聞いてからです。改めて見ると、すごいサービスだと感心しました。

 実はこのころ、私も津田に今後の金融サービスとインフラについて相談していたんです。システム的に非常に遅れている業界だと感じていましたから。大学時代、ゼミでネット関連の最先端なことを勉強していたこともあって、せっかく学んだことを生かせないというジレンマもありました。

--金融業界を出てフォートラベルを選んだ理由は何だったんですか。起業したり、ほかのネット企業に行くという選択肢もあったと思うのですが。

野田氏:フォートラベルの説明を受けているうちに、津田の洗練された考えが分かり出したんです。このビジネスだったら、自分のためにもなる。ほかのネット企業は考えませんでしたね。金融業界にとどまるか、フォートラベルかの二者選択です。

 私が旅行好きというのも心を動かされた理由のひとつでした。好きな分野だから、サービスのすごさも分かりやすかったんだと思います。

2代表者体制で方向性が明確になった

--野田さんはその後、社長に就任してどんなことを手がけられたんですか。

野田氏:私は創業時の状態を知らないので、これまでの経緯を聞き、想像しながら3カ月間、会社を見ることに注力しました。

 そのときに感じたのは、創業者のパワーの強さです。どこの会社でもそうですが、特にネットサービスの会社は自分達の手を実際に動かして作っているので、誰よりもサービスに詳しく、想像力が豊かです。これは津田だけでなく、創業時のスタッフ全員に当てはまります。

 7人なら背中を見せればついてこれたことでも、20〜30人の規模の組織になれば、もっと明確な説明が必要になります。頭の中で描く構想を伝えるために、紙ベースに落とす、というのが最初のミッションでした。

--津田さんは野田さんを招いてからどのような変化があったと思いますか。

津田氏:野田にコーチングを受けて、頭の中に描いたものをドキュメントにするようになりました。社員と共有する役割を野田がやってくれるので、これまで以上に「サービスを作れる組織」を作りたいという気持ちが大きくなりました。

 フォートラベルは、「旅行記」を中心としたクチコミサイトだと思われている感が強いのですが、本来は旅行者にとって利便性の高い全般的なサービスを提供していきたいというコンセプトが軸にあります。

 旅行者だけでなく、旅行関連商品を供給するサプライヤー側にもニーズを満たすサービスを蓄積し、旅行者とサプライヤー、航空会社や旅行代理店、すべてを結びつけるプラットフォームを作りたい。これが会社設立当時からの目標でした。

 規模が大きくなってこれを忘れていた時期もあったのですが、野田のコーチングで何がやりたいのかを明確にし、引き出してもらうことができました。

 現在はユーザーが作るコンテンツ、いわゆるCGCが99%を占めています。ソリューションを満たすためには、現地の地図、通貨、現地の店舗情報など、客観的な情報をフォートラベルが提供していく必要があります。また、旅行商品の情報や現地のレストランのメニューなどは、サプライヤーから提供してもらうことが可能です。

 主観情報、客観情報、商品情報──このすべてを網羅し、旅行のデータベースを作っていくのが今後の目標です。

最先端技術は静観しながら様子を見る

--すべてを一極に集中させるのはWeb2.0的ではないように思うのですが。

津田氏:なぜ情報を集めるのかというと、検索技術があまり発達していないからなんです。旅行関連情報を網羅した見せ方は、現時点のグーグルを持ってしても無理です。将来、検索技術が発達したら、中に取り込んで集める必要はなくなるかもしれません。ただ、あと5年、10年はお話した方法で進める方が適切だと思います。

野田氏:データベースに依存するのではなく、ニーズを満たすことが重要です。ニーズを満たせるなら手段は問わないというわけです。最先端の技術を積極的に使っていないので、当社のサービスは地味に映りますよね(笑)。ただ、世の中の技術に飛びつかないことは大事だと思います。静観していられる余裕を持ち、取り扱える技術になったところで取り入れていけばいいんです。

津田氏:たとえば、Web2.0では「情報発信の仕組みはwiki」などの発想にこだわってしまいそうですが、利便性の面でwikiでは集めにくい情報というのもあります。重要なのは、はじめに技術ありきではなく、「技術が旅行と組み合わさったら、どう役に立つのか」という発想なんです。ニーズがあってこそのサービスで、技術ありきではないんです。

--今後の目標は。

野田氏:売り上げの規模だけ上げていこうとすれば、いくらでも方法はあります。しかし、それでは我々の良さが失われてしまう恐れがあります。津田が大事にしてきた低コストオペレーションで、かつユーザーに便利なものを提供していくには、今後も売り上げ規模より高い利益率を保っていくことが重要なんです。

--7人から27人になって組織の規模が大きくなったわけですが、2007年に新たな事業展開はありますか。

野田氏:収益の面ではトラフィックを伸ばし、サービスの認知度を上げるために大きくサービスにも手を入れていきます。これらがうまく結びつけば、そこに連動している広告は伸びるでしょう。特に、アフィリエイト広告は強化していきます。

 それ以外は効果の高いものからやっていきますが、ニーズが高くて収益の高い部分から手がけることになります。

 また、発展の余地がある予約サービスの部分など、花開きそうな芽はいくつもあります。ひとつひとつは地味ですが、総合力で勝負していきます。旅行代理店が提示する価格比較だけではない連動は、なかなか他社にできないことですから、そこにフォーカスして差別化していきます。

津田氏:私としては、今まで便利なサービスを作ってきましたが、サポートが不足していたと実感しています。今後は、新しいスタッフと一緒に穴が開いているところをきっちりとメンテナンスしていきます。サイトについても、できるところから少しずつ変えていきます。

 もちろん、旅行好きな自身の利用者視点を見失うことなく、「旅行のクチコミCGM」から「旅行の総合ソリューションサービス」へと大きく舵を切っていきます。最終的にはフォートラベルがなければ業界が成り立たないというところまで持っていきたいですね。

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