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 本インタビューの前編では、高等専門学校(高専)が実学重視で、学生間のつながりが強い特徴が述べられた。しかし、その一方で、日本には技術者を軽視する風潮があるという。この現状に独立行政法人情報通信研究機構(NICT)はどのような支援策を展開していくのか。また、そもそもの技術者軽視の風潮をどのように変えていけばいいのか──。

 引き続きNICTの担当者である木村順吾氏、福井高専教務主事の太田泰雄氏、福井高専を卒業してjig.jpを起業した福野泰介氏に語ってもらった。

高専がクローズアップされると地域が活性化する?

--技術者が軽視されている社会風潮の話が出ましたが、たとえば、Googleを凌駕するような日本発の検索エンジンが出れば社会の技術者に対する印象も変わるんでしょうか。

福野氏:それくらいの大スターが出てくれば変わるかもしれませんね。でも、そうではなく、中くらいでもそれなりのポジションを持ってビジネスができている人が増えてくることが一番大切だと思います。

 技術を持っていればつぶしが利くんですよ。学歴は関係なく、企業へ行って「あなたの会社のためにこんなことができますよ」というのができれば、お金になるんです。昔から手に職を持ちましょうといいながら、なぜ技術に目がいかないのかが、 私にとっては不思議なところでしたね。

--「手に職を持つ技術者」ということでは、高専の存在意義は大きいです。なぜ、これだけ世間的にITが注目されているのに高専の存在が話題にあがらなかったのでしょうか。

画像の説明 独立行政法人情報通信研究機構情報通信振興部門長の木村順吾氏

木村氏:ITの世界は技術も大切ですが、資金調達や販路開拓をしたり、業務提携をしたりといった「出会い」も重要です。高専はこの出会いの機会が少なかったと思います。そこを補えれば、実力はあるから爆発的に成長していけると期待しています。

太田氏:高専はこれまでも社会で目立たない存在でした。国立大学の卒業生100万に対して、高専は1万人です。100万人の中に埋没してしまうんです。少子化の中、先に小さくなるのも高専でしょう。これからも決して世の中で目立つ存在ではないんです。

 そして、何より、ベンチャーはやはりアドベンチャーなんです。失敗する例も多いので、保護者たちが望む将来像ではないのでしょう。だから、外から手を貸していただかないと難しいんです。

画像の説明 jig.jp代表取締役社長兼最高経営責任者の福野泰介氏

福野氏:私は高校でなく高専に行くという決断を評価できると思っています。一般的な流れに逆らう気質があるから面白い人材が集まるんです。独創性はベンチャーにとって重要なことですから、100分の1の人口だとしても、中身の濃い人たちが集まっていると思います。

--地域の活性化としての期待もあるのではないですか。

木村氏:大学との比較になってしまいますが、大学が関東、首都圏や京阪神に集中しているのに比べて高専は産業を背景にしたところに立地されています。地方の活性化としてはキーとなる可能性が十分にあるのではないでしょうか。

福野氏:地元なので、一般の人の協力を仰ぐこともやりやすいという利点もあります。自分が育った環境で、技術を作って、一般社会に向けてレビューし、フィードバックを行う。技術開発から改善までのサイクルができるわけです。

太田氏:高専では、企業で働いたことのある人を何割か以上は必ず採用しているんです。企業を知っている先生がいるのは非常に良い環境です。

木村氏教育者の層が厚いんですね。高校だと大学の教育学部で教員試験に通って、就業の経験がない。ノウハウがないので、教科書による授業しかできないんですよ。

--確かに、身近な携帯電話サービスを開発した福野さんなら、生徒達も分かりやすく学べそうですね。

福野氏:ケータイに特化していうと、若い人はケータイとの繋がりが深いんです。しかし、IT業界でモバイルだといいながらも、その技術者の層は薄いように思えます。その理由は、現役の技術者は20代後半で、「子供のオモチャみたいのを何に使うのか」という意識があるんです。ですから、技術を追っかけない人が多い。だから育たないのかもしれませんね。

 しかし、我々は高専でケータイをバリバリ使う人に、自分でも作れると教えて、作らせて、自ら使うものから学ばせることができます。次世代ケータイ技術者はどんどん福井から生まれていく、というのを企んでいます(笑)。

プログラムのアイデアは「頑張る人」から募る

--本プログラムは今後、どんな活動をしていくのかを教えて下さい。

木村氏:報道発表から、実際に受け付けるのは新年度の4月以降になります。実践に当たっては、我々NICTではよくわからないところがあるので、各高専のみなさんのアイデアを尊重したいと思っています。

 プログラムに「頑張る高専学生」と命名したのは、「頑張る」というところに期待を込めているんです。今、日本は頑張らない風潮が強い。若い人は、「頑張っても仕方がない」と思っている人が多いですよね。教育する側でも、頑張る子だけを奨励すると、頑張らない子をつくると考えてしまう。そうした悪平等主義がはびこってしまうんです。

 これからは、頑張る人を褒め称えたい。ですから、頑張る人達の積極的で独創的なアイデアを出していただきたいんです。

--具体的にはどのようにして高専のアイデアを尊重するのですか。

画像の説明 福井工業高等専門学校教授(応用物理学)で副校長の太田泰雄(理学博士)氏

木村氏:アイデアを伺って相談しながら進めていく予定です。我々は東京にしかいないので現場のことはわからない。組織で地方の支部があるので、そちらと高専と連絡会を開いて意見交換をしていきたいです。

--というと、全国で共通したプログラムにはしないということですね。

木村氏:全国統一はないです。地方のカラーがでるものがいいと考えていますから。我々ができるメニューを提供して、選んでもらうのが良いと思います。メニューから取捨選択してくれればいいです。実施は6月以降にはなるのですが、できるだけ速く実施するために4月から受け付けていきます。

--高専を支援していこうという企業は多いんでしょうか? また、プログラムがうまく動くか、問題点はありませんか?

木村氏:日本は好景気になってきて技術者を獲得するのが難しくなってきています。ぜひ参加したいと手を挙げるベンチャーは多いと思うので、その点は心配はしていません。すでにネットワークからVB、VCや有識者に登録していただいています。また、プログラムが実施されれば、新たに登録してくれる人も増えてくるでしょう。

--未熟な若者がマネーゲームを企てる支援をしてしまうような危険性はあり得ませんか。

福野氏:いえ、その対極にあると思います。技術先行で伝統産業の職人を育てて、自らの製品を直販することを教えるという感じかな。起業するのは、職人の気風を高めることができると思うんです。何もないものを、さもあるように見せるのがベンチャーではないですからね。

 このプログラムをきっかけに、正しいベンチャー像が広がればいいと思います。「ベンチャー企業、いいんじゃない?」と親からも言ってもらえる環境ができればいいですね。これはずっと先の話になれそうですけど。

--将来的には高専の社会的評価を高めるというビジョンはあるんですか?

太田氏:私は高専機構の人間ではないのですが、NICTには高専を支援していただいてありがたいと思っているんです。学生のそばにアントレサポートセンターを作り、支援いただくことで、学生達は自分の研究、学習の目的を知ることができます。それで研究が進めば一番いいと思っています。

福野氏:私が勝手に考える将来像は、みんな大学が高専なればいいんじゃないかと(笑)。高専の技術者のパフォーマンスは認知されています。これを技術だけに留めるのはもったいないです。法学でも経済学でも、中学を卒業するときに道が決まっているのなら、5年間みっちり勉強して、パフォーマンスをあげてもらう方がいいのではないかと思うんです。高専を出て、すぐに現場の第一線で働く人間を作ったほうがいいでしょう。

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