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2006年12月26日 12時42分

「モバイルをメディアにする」--ビットレイティングスが3億円の増資で狙う先

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:秋葉けんた(マイカ)

 ビットレイティングスが12月、エヌ・アイ・エフSMBC ベンチャーズ、りそなキャピタル、みずほキャピタル、HIKARI プライベート・エクイティの4社から総額3億円を調達した。同社としては過去最大規模の増資になるという。

 ビットレイティングスはモバイルポータルサイトの「F★ROUTE」などを運営するモバイルサービス事業者だ。F★ROUTEは月間120万人のユニークユーザー数を誇る。また、同社の検索サービスはNTTドコモが提供するiメニューの検索サービスとも連携している。

 創業者で代表取締役社長の佐藤崇氏は、フォンドットコムジャパン(現:オープンウェーブ)で企業のモバイルサイト制作支援をするなかでユーザーが一般サイトにアクセスする手段がないことに気付き、ポータルサイトや検索サービスの将来性を感じてビットレイティングスを設立した。

 「モバイルは新しいメディアになる」と語る佐藤氏と、取締役COOの尾下順治氏に、今回の増資の狙いと今後の展開について話を聞いた。

――今回、かなりの額の増資をされましたね。

佐藤:ご存知の通り、現在のモバイル業界は競争環境が激化しています。この中で生き残っていくためには、当社のサービスの中でも検索機能を強化していくことが重要だと判断し、必要な増資をしました。調達した資金は主に検索の技術開発に使います。

佐藤崇氏 代表取締役社長の佐藤崇氏

 キャリア3社が公式メニューに検索機能を追加したことで、モバイル業界で検索は最も注目されています。感覚として、私はこれから半年が大きな勝負だと思っています。グーグルやヤフーなどもモバイル検索機能の強化をしてくるでしょうから、この流れについていかなければなりません。

尾下:4社から総額3億円を調達しました。それほど期待されている分野なんだと実感しています。現在、当社の4分の1の人材を検索分野につぎ込み、会社としても全力で走っていく覚悟を決めています。

――今後の事業の柱は検索になるのでしょうか。

尾下:そうですね。検索を核とした集客構造を持つことが重要だと考えています。ただ、ランキングサイトの「F★ROUTEランキング」なども運営していますし、すべてが検索で解決するとは思っていません。モバイルは、そういう世界ではないのです。

 それでも、検索がユーザーを引きつける重要な導線になり得ることは確かです。検索のような集客のための事業と、高い収益性を目的とした事業を明確に分け、その両輪をうまく回していくことが重要だと考えています。

佐藤:検索を活用し、いい形で収益化できる構造にしていきたいですね。ユーザーにストレスを与えない範囲でという条件付きですが、検索連動型広告など、多少なりともわれわれの収益になるような構造を考えていかないといけないとは思っています。

――ビットレイティングスでは着うたなどのコンテンツ販売サイトや、ECサイトも運営しています。検索サービスはこれら自社のほかのサービスにユーザーを誘導するための手段ということでしょうか。

尾下:我々が目指す姿はアグリゲーターです。モバイルサイトは今も日々増加しています。良質なサイトも当然増えてきています。そういった多くのサイトの中から、どこに行けばそのユーザーにとって価値があるかを整理して案内するというポジションを取りたいと思っています。そのためにも、検索サービスは必須です。

――検索サービスを始めたきっかけは何だったのですか。

尾下:当社のモバイル検索ポータルサイト「F★ROUTE」 は2003年7月に開始し、10月にはauの公式メニューになりました。実はその当時は、「検索させないポータルサイト」というテーマでサイトを作っていました(笑)。しかし、一般サイトが増えるにつれ検索機能が必須となり、新しくディレクトリ型の検索サービスを開始しました。

 そのころはサイトのコーディングから運営までも含めて、社員5人くらいでやっていました。クリック保証の広告が全盛期で単価も高く、社員が少ないのでコストもかからない。当時かなりの利益率を上げていました。しかし、その後クリック保証型広告の単価は下落の一途をたどり、売り上げも減少していきました。収益源を広告だけに頼るビジネスは今後メディアとして厳しくなっていくと考えて、収益手段の多角化を検討するようになりました。そこで、2004年9月に新たに着うたなどの公式サイトのコンテンツ事業を開始したのです。

佐藤:当時わたしは、ローコストで業務を回していく中で、次の展開をどうしようかと思い悩んでいました。小さな規模でモバイルサイトを運営している会社も多いとは思いますが、私は「ぜひとも携帯電話を新しいメディアとして確立させたい。ビットレイティングスはそのための会社にしていきたい」という想いが強く、2004年ごろに思い切って拡大路線へとかじを切りました。

 そのころから、「人が増えたらやりたいね」と社内で言っていたのが、検索エンジンだったんです。いま社員が40人に増えたことで、検索エンジンの開発にやっと着手できるようになりました。2006年6月には米Vivisimoの技術を使い、世界初となるクラスタリングロボット検索サービスも開始しています。

――モバイル業界に検索サービスの競争が起きることで、これまでに比べてどんな点が変わるのでしょうか。

尾下:PCサイトとモバイルサイトの垣根を取り払うトリガーとなるのが検索だと思います。これまで携帯電話では、公式サイト、もしくは一般サイトへのアクセスで完結していた部分があります。しかし、検索によって一般サイト、公式サイト、PCサイトの3種類を同一画面上で比べられるようになれば、その垣根もなくなっていくでしょう。GoogleモバイルやYahoo! モバイルはPCサイトを携帯電話で見やすいようにレンダリングしています。携帯電話からPCサイトが簡単に閲覧できるようになったことで、市況も大きく変化しています。

佐藤:ビットレイティングスでは、2006年10月にWikipediaの検索結果を携帯電話で表示できるサービスを提供しました。これによって、今までPCで使っていたサービスをそのまま携帯電話で利用できるようになりました。これが非常に好評で、多くの方にご利用いただいています。これからは、いかにPCの世界観を早く携帯電話に持ってくるかが重要になってくるでしょう。

尾下順治氏 取締役COOの尾下順治氏

尾下:今後、ロングテールといっては大げさですが、ニッチなマーケットが立ち上がってきやすい環境になるのではないでしょうか。今まではキャリアによる公式メニューから、誰もが欲しがるような情報にたどり着くのは容易でしたが、逆にニッチな情報にたどり着くのは至難の業でした。それが検索によって大変簡単になり、必要な情報にダイレクトにアクセスできるようになります。これはユーザーにとっても大きなメリットとなります。

佐藤:例えば着メロサイトを考えた場合、現在は10万曲をそろえたサイトよりも、1万曲のラインアップを持つサイトを10個立ち上げた方が収益はいいのです。これは、ユーザーが欲しい情報にたどり着くための手段が不足しているから起きる現象です。検索は、こういったコンテンツビジネスを再構築するきっかけとなりうる技術です。

――さきほど広告だけでは収益が安定しないという話が出ていました。今のモバイル広告市場をどう見ますか。

尾下:現在、モバイル広告業界は数少ない広告主を奪い合っている状況でしょう。モバイルをメディアとして育てていくためには、代理店などと協力して新しい広告主を開拓していくことが重要です。

 また、モバイル広告市場では検索連動型広告が大きな割合を占めるようになると思います。ブランディングのための広告はPCの世界が中心になるでしょう。携帯電話の液晶サイズなどがさらに大型化し、表現力が向上すれば、ブランディング広告もあり得るとは思いますが……。

佐藤:携帯電話は、PCと違って他人と共有しないデバイスなので、パーソナライズが有効でしょう。ユーザーの行動に基づくターゲティング広告などは大きな可能性があります。モバイルはまだまだ発展途上ではありますが、潜在力は大きい。その可能性を信じ、市場をみんなで盛り上げていくことが重要だと思います。

――モバイルサービスの開発時にはどういったことに気を付けていますか。

佐藤:モバイルサービスはインタラクティブ性が重要です。サイトを見ているというより、サービスを使っているという感覚を重視しています。そのため、例えば、情報の並び方やユーザーの視線の動きに気を配っています。途中に使い勝手の悪い画面が入るとそこからユーザーは先に進まなくなるので、インターフェースには細心の注意を払っています。こういったノウハウは、検索サービスにも生かされています。

尾下:モバイル業界はこれまでユーザーをいかに囲い込むかというビジネスをしていましたが、それも変わっていくのかなと思います。当社がアグリゲーターとして成功事例を作っていき、新しい発想でビジネスを拡大していこうと考えています。

――今後の展開は。

尾下:実は、あれもやりたい、これもやりたいというのがたくさんあります。コミュニティも非常にやりたいし、実際にコミュニティで成功している事業者をうらやましいと思っていた時期もあります。しかし、やりたいことがたくさんありすぎると、なかなか整理できなくなります。現在は検索事業に経営資源を集中投下すると決めています。検索を核に置き、子どもから大人まで誰でも使えるポータルサイトを目指しています。

――上場は視野に入れていますか。

尾下:将来的には、ほかの検索サービスと正面から戦わなければならない時期が来ると思います。そういったフェーズに入っているのであれば、上場はあり得ない話ではありません。ただし、今の規模では上場はしませんね。おそらく2008年から2009年ごろに、そういったフェーズに入っているのではないかと予想しています。

佐藤:モバイル業界は非常に厳しい競争の中にあります。本当の意味でマーケティング力のあるプレーヤーだけが残ることになるでしょう。そういった意味で、検索は新しいユーザー導線となりうるツールです。個々の機能を徹底的に強化することで、新しい市場展開も見えてくるはずです。