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 ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「mixi」と求人情報サイト「Find Job !」を運営するイー・マーキュリーは、2006年2月1日から社名をミクシィに変更した。1999年6月に有限会社イー・マーキュリーを設立して以来(Find Job !の運営は1997年11月に開始)5年で、後発のサービス名を社名にした背景や思惑には何があるのだろう。また、今後どんな展開を見せてくれるのか。ミクシィの代表取締役である笠原健治氏に聞いた。

--2月1日に社名をミクシィに変更した背景は何でしょうか。

 mixiを開始するときに、多くの人が日常的に利用するコミュニケーションインフラを目指しました。当時から、事業構造的にmixiが事業の中心になる可能性が高く、社名をミクシィにする可能性はあるのではないかという話も出ていたのです。

 区切りとしては、ユーザー数が250万人を超えて、ページビュー(PV)も1日あたり1億PVを超えてきた(現在およそ1億3000万PV)ことがあります。また「mixi」という言葉が認識されるようになったこともあります。日常で外食などをしていても、横の人がmixiの話をしているなんてこともありますし、、自分の紹介のされ方も「mixiの笠原さん」と言われることが多くなりました。さらに、エンジニアの人材募集に関しても、「イー・マーキュリー」よりも「mixi」で募集した方が通りがいいのです。こうしたことも含めると、イー・マーキュリーでいることの機会損失が、これからもっと増えてくるのではないかと考えたのです。

 ただし、旧社名のイー・マーキュリーに対する愛着が強いので、自分の中では非常に迷ったり、悩んだりしました。

--ちなみに、社名の由来は何でしょう。

 イー・マーキュリーは、ローマ神話の商業の守護神「マーキュリー」にネットの意味の「イー」を付けました。ネットを介して企業向けにいいサービスを提供していこうという意味です。求人情報サイト「Find Job !」は完全に企業向けサービスです。一方で、mixiは「mix」が交流を表し、「i」は人を指して、人と人が交流するという意味合いです。単語のイメージや発音なども気にして両方とも自分で名づけました。

--社名変更の反響はいかがでしたか。

社内では、意外とすんなり。古くからいる人は寂しがっている人もいるが、基本的には肯定的に受け止められてます。もっとも未練がましくしているのは僕なんです。いまだけだと思いますが、寂しさがあります。その一方で、mixiがここまで大きくなってきたことは非常にうれしいです。しかし、これからはmixiで障害や不具合など、何かあった場合には会社全体のダメージになるので、一段と気を引き締めていかなければなりませんね。

--イー・マーキュリーを設立した当初は、mixiのサービスを考えていましたか。また、mixiがこれほど成長すると予想していましたか。

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 設立当初は、コミュニティーサービスを考えていませんでした。企業向けのサービスを展開していたのですが、結局そうしたサービスでも最終的にはどれだけ消費者向けにリーチできるかが重要だったので、企業向けだけでは成長スピードは十分ではないと思っていたのです。

 そこで、もともと消費者向けに何か提供できないだろうかと考えてはいたのですが、米国のFriendster(世界初の最も高い人気を誇るSNSの1つとして一世風靡したが、身売り話がでるほどにビジネスは衰退)に触れたとき、こうしたサービスを展開すれば非常に多くの人が毎日コミュニケーションするために活用してもらえるサービスになり得ると感じました。

 これをやってみない手はないなと感じて、やる以上はできるだけ多くの人、インターネットユーザーの何割かの人にmixiのIDを持ってもらって、そこで、毎日身近な人とのコミュニケーションとか、自分にとって興味や関心のある物事などの情報収集などを手がけられるサービスにしようと考えました。

--これまでは、業績的にはFind Job !がリードして展開してきましたが、社名も変更して今後はmixiを前面に押し出していくわけですが、そうなるとこうした収益のバランスはどうなるのでしょう。

 まず、サービスの売り上げ構成としては、Find Job !とmixiの2つで100%。ウェブ作成やコンサルティングのようなものは一切やっていません。前期の売り上げ比率でいくと、圧倒的にFind Job !の比率が高いです。これに対してmixiは、2005年1月ぐらいから収益が増えてきて、mixi単体で単月黒字化したのが2005年3月です。そこから、ずっと黒字を続けてます。

 もう少し説明しますと、Find Job !は求人情報を掲載するにあたっての掲載料(広告)収入がほとんどです。たしかにmixiの成長率は高いのですが、これが柱になっていくとはいいませんが、大きな比重になってくるのははっきりしています。

 今回の社名変更は、収益上のバランスというよりは、事業構造上の意味合いのほうが強いのです。mixiは広く一般の人に使ってもらうサービスだが、Find Job !は求人、求職という分野なので、けっして老若男女問わず、だれもが使うサービスではありません。mixiの中で、人材や職を求める人はFind Job !を使ってもらうという流れができればいいなと考えています。

--mixiの収益構造はどうなっていますか。

 広告収入と有料のプレミアムサービス、おすすめレビューでのAmazonアソシエイトがあります。割合としては広告が過半数で、次にプレミアムがあり、アソシエイトの収入は非常に小さいです。広告はバナーをはじめ、メール、記事広告などがあります。またコミュニティのカテゴリーごとにテキスト広告を出すこともできます。

 ただし、広告はあまりにもターゲティングしすぎるとボリュームが減っていくので、どこまで細分化、複雑化するかは検討していくつもりです。現状は、ローテーションバナーが主軸ですが、近々、男女、年齢、住所でターゲティングできる広告を作っていこうとは考えています。それも、最初は男女だけでターゲティングしていくなどやってみて、その効果などを見極めたいです。

--業績の話に触れましたが、社名変更は株式の新規公開(IPO)を意識してのことではありませんか。今年のIPOの目玉はドリコムとミクシィだという噂もありますが。

 株式の公開・上場は準備しています。ただし、時期に関してはまだまったく何も決まっていません。

--小さいサービスも含めるとSNSで競合するサービスがたくさん出てきていますが、SNS市場、ビジネスの将来はどう見ていますか。

 多くの人が毎日活用するサービスというのが作れれば、収益的には特に心配するようなことはありません。あとで、いくらでもついてくると考えてます。広告や有料サービスのほか、ECなどもあるでしょう。結局は、Yahoo!にしてもGoogleにしてもたくさんの人が毎日使っているサービスであるからこそ、十分な収益が得られていると思います。そこはあまり心配していません。

 また、Friendsterの話もそうですが、SNS自体がオークションやインスタントメッセンジャーと同じで、たくさん人が使うほどに価値が上がるサービスなのです。もしくは、より多くの人が使っているところに、人がさらに集まってくるともいえるでしょう。そのため、いくつものサービスが共存していくというよりは、あるカテゴリーごとに1つ、2つに収れんされていくサービスだとは思います。そうした部分がFriendsterはうまくいかなかったのではないでしょうか。

--そうした考えのもとで、それでは競合のグリーをどう見ていますか。

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 ええと、んー、基本的には非常に答えづらいのですが……。同じフィールドの中で評価はしづらいのですが、ネガティブな印象はまったく持っていません。あれだけ、短期間でサービスを構築し、機能改善も早く、スタッフの数も急速に増えていて、コンテンツも結構おさえていますし。ただし、もともとのコンセプトは違っているように思います。グリーは、友人の名簿代わり、友人の管理システムを志向していたのではないかと推測しています。Friendsterもなんとなくそういうイメージがあります。

 これに対してmixiは、いかに毎日使いつづけてもらえるサービスにするかというコンセプトが最初にあって、そのためにはコミュニケーションできる機能が必要だろうと、さらにそれを実行するには日記や足あと、コミュニティ、最終ログイン、ログイン時間などの機能も必要になると考えてきて、いまの形になりました。日々、管理ではなくてコミュニケーションできるサービスを目指しているわけです。グリーとは、はじまりがたぶん違うでしょう。特に、2004年の1年間においてはその違いがはっきりしていたのではないでしょうか。

--Web2.0についてはどう捉えていますか。APIを公開する考えはありますか。

 Web2.0の話自体は、これまでの流れをまとめたということで、非常におもしろいと思っています。もう少し、自分の中で消化したいとは考えていますが、そのうえで実際にどうするかは、ユーザーのニーズがあるかどうかで判断したいです。Web2.0はこうだから、こうするべきだと、形から入ることはないでしょう。

 APIの公開も含めて、サービスを考える際にはかならず3つのポイントを念頭においています。1つはコミュニケーションが非常にしやすくなること、2つ目は自分が興味のあるものや情報を収集しやすくなること、3つ目は人脈図のように人間関係がどんどんできあがっていくこと、この3つをうまく活かしたサービスを基本にしています。

 APIを公開する気持ちはありますが、それによってどんなサービスや価値が生まれるかをきちんと精査してからですね。

--2月8日に開始した新サービス「mixiニュース」もこの3つのポイントをおさえているわけですね。

 その通りです。ニュースを見て、そのまま記事を引用する形でユーザーが関連した日記を書けるという新サービスです。そのニュースに関して書かれた日記の一覧が見られるほか、そのニュースに関連するコミュニティも作れます。もう1つ日記を書くのと同じで、コミュニティにそのニュース記事を引用してトピックを立てるということも、もちろん考えています。あるニュースをきっかけに、あるコミュニティに入るなど、コミュニケーションが活発化していくことでしょう。

--mixiニュースのきっかけは何でしょうか。

 まず、ニュースは誰でも関心があります。mixiの日記を見てもニュースに関連した話題が非常に多いのです。社名変更したことも、Yahoo!ニュースを引用して日記を書いている人が多かったです。日常的に欠かせないものだと思うので、なんとかmixi内に取り込みたい、表現したいと考えてきました。

 表現する方法はいくつかあると思っていて、今回のように各社から提供を受けて配信する方法もあれば、Googleニュースのようにクロールする方法、はてなブックマークのようにブックマークする方法、ユーザーにニュースを投稿してもらう方法、2ちゃんねるのニュース速報のような方法などいろいろあります。

 それらを総合的に検討した結果、一番ニーズに合いそうで、わかりやすいのが、他者からニュースの提供を受けることだと判断しました。まずはこれを基本に、今後はもっと提供を受ける企業を増やしていきます。そして、ユーザーのフィードバックを受けて機能を強化、改善していきます。おそらく、ニュースなどをブックマークするような展開はすぐにやるべきだと考えていて、その次にはRSSリーダーのような機能も実装していきたいです。

--当面はmixiとFind Job !の2軸で展開していきますか。

 Find Job !はある種革新的だと思っています。大手の場合、2週間で数十万円、もしくは100万円以上かかる情報掲載料が数万円でできます。それでいて、きっちり効果も上げているサービスなのです。それは、ネットを100%活用しているからだと考えています。2007年ぐらいには、mixiという基盤にうまくFind Job !が融合できないかと考えています。mixiでは、いまはバナー広告でFind Job !へ誘導しているだけですが、mixiとしてもキャリア、求人、求職という分野をどうしていけばいいのか判断しなければならない時期が来るでしょう。

--mixiのさらなる新展開はどうでしょう。ビジネス向けの展開はしませんか。

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 mixiから見ると、求人や求職という分野よりもECのほうが興味があるでしょう。ECを使ってユーザーが盛り上がる、もしくはmixiを使うことで価値が向上する分野だと捉えているので、それも近いうちに取り入れていこうと考えてます。

 また、ビジネス向けとしては、イントラネットで利用したいという企業向けの話は非常によく依頼を受けます。mixiのポテンシャルは非常に高いと思いますが、やろうとしていてできていないこともまだ多いです。単純にネットワークの負荷が高いこともあるので、ASPで提供することなどは今後検討する話になるでしょう。データ量が毎日増え続けているので、それを調整するというおいかけっこになっているのが現状です。

--ニュースに加えてECの展開まで考えているとすれば、どんどんYahoo!などのポータルサービスに近づいていく気がしますが。

 米国ではブログとソーシャルネットワーキングを組み合わせた「Yahoo!360°」などがあって、日本でやるかどうかは知りませんが、脅威は脅威です。しかし、Yahoo!などのポータルとはベースが違うと思っています。ポータルは情報をある意味人力で収集して分類し、そこにどんどん便利なサービスを追加していったという形だと思います。

 それに対して、mixiは人と人とのコミュニケーションだったり、つながりだったり、という部分をコンセプトに始まっているサービスです。意外と、いつまで経っても似てこないかもしれないですね。なんとなく似た機能は出てくると思いますが。我々はコミュニケーションを活発にするにはどうすればいいのか、といったことを核にして発想しています。

 我々が目指したいのは単に収益をあげていくだけではなくて、どれだけ新しい価値を創造できるかという部分です。単純に売り上げを足し算していくよりは、自分たちでゼロからサービスを立ち上げて、それを大きくしていくところに興味があります。そういう価値を創造できてこそ、自分たちのベンチャー企業としての存在意義があるでしょう。そこを極めていきたい。新しい価値を提供して、社会の変革、ビジネスの変革を起こしていきたいのです。