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 ブログの普及やポッドキャストの登場により、RSSフィードの活用に注目が集まっている。マイクロソフトが2006年後半にリリースする予定のInternet Explore 7.0にはRSSリーダー機能が搭載される予定だ。また、サイボウズのFeedpathのように、タグ機能などと組み合わせたRSSリーダーも数多く登場している。

 RSSリーダーはPCでの利用を前提としているものが多いが、いくつか携帯電話向けのRSSリーダーも登場しはじめた。外出中でもニュースやブログの更新情報を確認したいというユーザーのニーズに応えたものだ。

 その携帯電話向けRSSリーダーを開発する1社が、Javaを使った携帯電話用アプリケーションや、バックヤードシステムの開発を手がけるエル・カミノ・リアルだ。シリコンバレーを横断する道の名前から社名をとったというエル・カミノ・リアルは、スペイン語で「真実の道」「王の道」という意味を持つ。

 同社が開発した携帯電話用RSSリーダー「ECR RSSリーダー」は2005年10月にリリースされ、現在のユーザー数は約750名となっている。新しいアプリに敏感なイノベーター層からのフィードバックをもとに改良を重ね、少しずつ支持を広げる戦略を採っている。

 同社は2005年8月にエイベックス ネットワークから1億7510万円の出資を受けており、今後はエイベックスのコンテンツを活用したポッドキャストやビデオキャストも展開したい考えだという。同社代表取締役社長の木寺祥友氏にECR RSSリーダーを開発した経緯や今後の戦略について話を聞いた。

--ECR RSSリーダーを開発したきっかけは。

 「携帯電話でメールを使わなくなるようなサービスを作ろう」と考えたのがそもそもの始まりです。携帯電話で現在最もよく使われている機能はメールですが、その状況を変えるようなものを作りたいと考えたのです。そこでまず、4年ほど前に社内や自分の友人など、親しい人たちだけでコミュニケーションできる携帯電話向けのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)ソフトの開発を始めました。日記を書いたり、その人の日記に対してコメントをつけたりするときに絵文字が使えるのが特徴で、実はこのシステムに関して10個ほど特許を持っています。

 2004年の夏ごろから自分の友人たちだけでテスト用として使っているのですが、やはりそのうち使わなくなる人も出てくるんです。その話を米国の知人にしたところ、「インターネット上にはいろんな情報があるから、それを見られるようにしたらいい」と言われました。2004年8月のことです。その時に初めて、RSSという仕組みを知りました。

 同時にRSSリーダーのアプリケーションサイズがちょうど携帯電話に搭載できるくらいの大きさであることを知り、携帯電話でRSSフィードが読めるアプリを作ることにしたんです。

--開発は順調だったのでしょうか。

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ECR RSSリーダーの操作画面。登録したRSSフィードはフォルダに分けられる。更新があったフィードは左側にアイコンが表示される

 RSSリーダーのアプリを作ること自体は簡単でした。ところが運営するのがむずかしい。携帯電話の場合、PCと違ってインターネットにつなぎっぱなしにすることはできないので、常に更新情報を取得するわけにはいきません。けれど、RSSリーダーの場合はサイトやブログの更新があったかどうかが分からないと意味がありませんし、更新情報はすぐ見たいですよね。

 そこでECR RSSリーダーでは、専用サーバーを設置して常にサイトやブログをクロールし、更新状況をチェックするとともにデータをキャッシュしています。端末のアプリ上では更新の有無を表示して、その内容が見たいユーザーにはサーバにデータを取りに来てもらう仕組みです。

 サーバでは、データを圧縮して表示速度を上げているほか、画像を携帯電話の画面で見やすいように、すべて240ピクセル四方の独自形式に変換します。また、RSSフィードのデータをすべて保存していますので、本体のサーバで消えてしまった日記なども表示可能です。

 ただ、更新があったからといって単純にその情報をユーザーに知らせればいいというものでもありません。RSSフィード上の広告が変わっただけでも更新ですし、ブログによってはコメントが付いただけでも更新と見なされてしまう。しかしそれはブログの読者にとっては更新とは呼べません。ですから常にサーバでキャッシュしたデータと突き合わせて、ユーザーに意味のある更新があった場合だけ通知するようにしています。

--ユーザーが自分の読みたいRSSフィードをカテゴリ別に登録できるようにしていますね。

 たとえば株価のような場合は、ちょっとした更新も重要になりますし、ブログとニュースでは更新頻度なども違う。そこで、RSSと一言でいってもカテゴリ別に分ける必要があると考えたんです。

 ただし自社ですべてをやるのは大変なので、Apple Computerの音楽再生ソフトであるiTunesのように、ユーザーが自分で情報を登録するようにすればいいのではないかと思いつきました。こちらではディレクトリだけ用意して、あとはユーザーが自分の入れたいところにRSSフィードを登録できるようにしています。

--現在はRSSの情報を表示するだけですが、サイトの情報をすべて見られるようにフルブラウザを手がける予定はないのでしょうか。

 最初はフルブラウザも考えたのですが、ユーザーがどんな情報を見たいかが事前には分からないので、どうしてもサイトのグラフィックをリアルタイムに(携帯電話向けに)変換する必要がある。そうなると大規模なサーバや回線が必要になるので、儲けが出にくいんです。

 RSSフィードの場合は事前にデータを読み込んでおいて、ユーザーのリクエストがあったときに表示すればいい。私が考えたのは「クリスマスのケンタッキーフライドチキンモデル」なんです。あらかじめ予約を受けておいて、いくつかの決まった時間帯に分かれて取りに来てもらう。そうするとトラフィックが混みませんよね。

 ECR RSSリーダーの場合、まずユーザーにRSSフィードを登録してもらいます。サーバは登録されたRSSフィードのデータを取りに行って保存しておき、ユーザーにはデータを見たいときに見に来てもらう。ユーザーからすると「見たいときにいつでも情報が見られる」というように思えるけれども、実はこちらであらかじめ用意してある。だからデータの表示も速いんです。

 フルブラウザはこれからどんどん携帯電話端末に搭載されていくでしょう。ですからわれわれは自社でフルブラウザを開発するよりも、既存のフルブラウザと連携する形を取っていきます。

--RSSフィードでPCサイトの情報が見られるようになると、公式サイトの優位性が下がりますね。

 RSSリーダーとフルブラウザが登場して、さらに番号ポータビリティが始まると公式サイトモデルはかなり崩れるでしょう。だからこそ、既存のコンテンツプロバイダは携帯電話以外の事業者と組んでビジネスをしようとしている。

 逆にいえば、今まで公式サイトになれなかったものでもチャンスが出てくる。また、RSSフィードさえきちんと提供すれば、携帯電話専用のサイトを作る必要もない。携帯電話コンテンツ市場にはもっといろいろな企業が参入してくるでしょうね。

 RSSは携帯電話にこそ向いているんです。なぜなら、更新情報というのは携帯電話にこそ必要だからです。PCでも重要ですが、常に手元にあるものに更新情報が届くほうがいい。極端なことをいえば、頭の中に何かを埋め込んで、更新情報があるたびにそこに通知が行くくらいでもいい(笑)

 シリコンバレーに行ったとき、当社のモデルがTechnolatiとどう違うんだと訊かれました。TechnolatiはPingサーバに集められた更新情報を利用する。これは西洋人の考え方で、東洋人は人の家に自分から上がりこんで確認するんです。「自社のサーバにPingを打ってください」というのではなくて、自分から“押しかけて”情報を取ってくるんです。

--現在はNTTドコモのFOMA 900iシリーズ以上でしか利用できませんが、対応端末を拡大していく計画は。

 当社の戦略としては、FOMA 900iシリーズ以上でパケット定額制を利用している人をターゲットとしています。この層は数は少ないですが、尖っていて影響力がある人たちです。一度気に入るとずっと使ってくれますし、周りの人に「このアプリはいいよ」と勧めてくれる。クチコミを促進させるために、自分の登録したRSSフィードを赤外線を使って送信できる機能も搭載しています。

 パケット定額制を利用しないと通信費がかかりすぎるのでmovaには対応させていませんが、FOMAの700i系に対応するバージョンや、PCからも利用できるウェブ版は考えています。auやボーダフォンについては、公式コンテンツとして認めてもらう必要がありますので、交渉をしているところです。また、ウィルコムに対応して欲しいという要望も多く寄せられています。

 番号ポータビリティの導入までに全キャリアに対応することを目指しています。そうなれば、ユーザーが通信事業者を代えても同じ環境が使えますから。

--海外展開も考えていますか。

 フォントさえ対応できれば海外でもすぐに展開できます。当社が海外に進出する可能性もありますし、海外企業に技術をライセンスすることも考えられます。 ただ、海外の携帯電話ではデータ通信の定額制を導入している事業者が少ないので、そこが課題ですね。

--音声や動画のポッドキャストへの対応はいかがでしょう。

 技術的には可能で、もうデモンストレーションできるところまで来ています。楽曲だけでなく、映像も再生可能です。特にドコモのiモーションであればすぐにでも対応できます。ただ、音声や映像データをすべて自社のサーバに保存して、自社の形式に変換して配信するとなると、膨大なサーバやネットワークのインフラが必要になるので、これでは無料でサービスを提供するのが厳しくなります。

--これまでエル・カミノ・リアルはBtoBの事業モデルでしたが、今後はBtoCモデルに転換するのでしょうか。

 これまでは携帯電話用アプリやバックヤードシステムの設計・開発をしてきました。しかし、自分たちには技術があり、もっと日本のソフトウェア業界を盛り上げるためにもコンシューマー向けを手がけることに意味があると考えました。

 私は海外に通用するものでなければと作りたくないと思っています。これまでのソフトウェア産業は、海外のビジネスモデルを日本に持ち込むケースが多かった。でも、私は逆に、シリコンバレーの人間をうならせたいと思ったんです。

 世界のソフトウェア業界のトップ企業は、ほとんどが米国の企業です。それ以外の国で上位に入れるのはカナダのCorelとドイツのSAPくらいでしょう。でも、トップ企業群に日本企業がいない業界なんてソフトウェア業界くらいだと思いますよ。自動車にしろ家電にしろ食品にしろ、日本企業はトップ集団にいるのに、ソフトウェアだけがいないんです。

 私はソフトウェア業界でも「やっぱり日本製はバグが少なくていいよね」と言わせたいんです。そして、日本からそれだけの企業を出すにはやはり携帯電話業界にチャンスがあると思っています。

--2005年8月にはエイベックスへの第三者割当増資をしています。

 今回エイベックスから出資を受けた理由も、ビジネスモデルをBtoBからBtoCに転換するからです。やはりシリコンバレーの企業をうならすためには、BtoBでは難しい。むしろわれわれの技術をユーザーに使ってもらって、どんどん盛り上げていく必要がある。

--エイベックスとは共同で事業を展開する計画もあるのでしょうか。

 もちろんあります。私はポッドキャスト自体がはやるという考えには懐疑的なんですが、権利のある音楽については魅力があると思っています。ポッドキャストでただ誰かが喋っているだけのものではなく、音楽が試聴できたりすれば魅力的ですよね。

--ECR RSSリーダーを有料化していく計画は。

 有料化はしたくないですね。それよりもより多くの人に使ってもらいたいと思っています。広告収入が基本で、ほかには企業向けのRSSリーダーを提供することも考えています。認証が必要なその企業専用の変換サーバを当社が設置、管理するというものです。セキュリティを高めて、企業でも安心して使ってもらうようにする。証券会社の株価情報の配信などに可能性があると思っています。

 私はGoogleのように、時間をかけてでもユーザーが本当に良いと思うものをつくっていきたいんです。増資をした狙いもそこにあります。Googleも当初は非常にユーザー数が少なくて、資金にも苦労をしていた。けれどもそこで妥協しなかったからこそ、いまのGoogleがあるんです。シリコンバレーでも同じですが、最初の助走期間が長いほどうまくいくと思っています。