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2008年6月 30日 01時26分

ベンチャー企業の資金調達 現場の生の声

上原仁 マイネット・ジャパン 代表取締役 上原仁

isologueの磯崎哲也さん(ミクシィの監査役などを勤める、初代アルファブロガー)と池田信夫さん(ツッコミどころ多くてよく燃える経済学者ブロガー)のやりとりがおもしろかったのでログ。起業を意識している人向けです。

「ベンチャー企業の資金調達」というテーマで私個人はモロ当事者なお話なのですが、結論としてはおそらく住んでいる世界が近いからか磯崎さんのおっしゃる考え方がしっくりきました。いろんな面で。

isologue - by 磯崎哲也事務所: 「ベンチャー企業」のための資金調達入門

「収益の見通しがいい加減だと貸してくれない」のも当然。VCに株式で投資してもらうにしても、「マーケットがこれくらいのサイズで、当社の製品はこのくらいシェアを取れる」といった詳細な事業計画を作ってプレゼンしないと、日本はもちろんシリコンバレーでも投資してもらえるわけがない。

当然中の当然です。神話のように語られる「夢を語ったら翌朝1億円振り込まれてた」みたいな話は寓話ですよ寓話(8年前はほんとにあったのかも知れませんが)。ビジョンと数字とチームとプレゼンとトラックレコードの5つのディメンジョンくらいでは見てもらっていないとむしろそんなお金怖くてお預かりできません。ただし体感上のことで言うと、「事業計画のプレゼン」なるものは大企業で官僚的な上司が納得する説明資料を作ってプレゼンをやり続けている人なら、まず大丈夫と思います。そう大差ありません。

なにせ日本ではstartupする人の数も少ないし、創業時から全世界市場を視野に入れている米国のベンチャー企業と、言語の壁で日本マーケットのみをターゲットにしていることが多い日本企業との違いなど、そういう投資対象の供給がないことのほうが原因だと思います。

この手の指摘はいつもざっくり胸に刺さりますね。でも、頭に描いてるベンチマークがGoogleでもミクシィでもなく松下やトヨタな場合には、StartUp当初のリスクの高低と現在価値とは直結しなくなると思うので、その辺りも踏まえてもらえるとうれしいものです。とは言え創業者の英語力は価額に反映していいくらい将来に渡り重要とも思いますね。

「投資」を受けている企業は(VC本体投資とファンドが完全に重複しているとして少なめに見積もっても)8000社程度もあるわけで、それらの会社に1社平均1億円ものお金が流れているわけです。
池田さんが、「それなりの企業に育ったのは、楽天ぐらい」とおっしゃるにもかかわらず、8000社もの企業にお金を供給するというのは、「いい加減さ」としては十分じゃないでしょうか。

これがどこのバックデータに基づくものかは存じませんが、体感値としても合っていますね。投資を受ける会社1社当りに1億円で、「いい加減さ」としては十分、と。ほんとそう思いますよ。ある場所で見知らぬ若僧が「適当なこと語ってVCから5,000万ほど分捕るのが一番おいしいんだよ」とか言ってるのを見たことがあります。ぶん殴ってやろうかと思いましたが、その価値もない面してたのでやめときました。なにぶん「いい加減さ」の悪い方の例です。

「選ばれたごく一部のエリートにのみ起業のチャンスがある」のがアメリカだとすると、有名でない大学卒だったり大学出ていなかったり、生まれて初めて事業をやる場合ですら投資をしてくれるVCさんがたくさんいるのが日本で、これほど万人にあまねく起業のチャンスがある国はないんじゃないかとも思います。
もっと「起業に賭けてみよう」というイケてる人がたくさん現れる社会になることを切実に望みます。

同意ですね。最近ネットベンチャー界隈にも東大出身者やMBA取得者が増えている事実はありますが、今の国内ベンチャー領域には「学歴偏重はよくない」という社会の風潮をそのまま反映しているところが結構あると思います。またシリアルアントレプレナーも増えてきてはいるものの希少種ですので、起業暦を問われることもそうありません。日本の、特にネット界隈は起業のチャンスがシリコンバレーよりも大きい/垣根が低いと思います。

ただし、財務戦略を過って、リスクがある事業なのに借入で資金調達したり、個人保証したりしたら、個人破産とか一家離散が待ってるかも知れませんので、ちゃんと財務がわかる人に相談したほうがいいと思いますよ。

財務に詳しい方が常勤でなくとも一人はそばにいてくれるといい、というのは私も実感しています。自分なりに企業ファイナンスの勉強も少しはしたつもりでいましたが実情はまた別。教科書に書いていること半分、書いていないこと半分、という印象。ちょうさんがいてくれなかったら今頃どうなっていたことか、と思います。特に「なぜIPO前に借金漬けになる社長たちが多いのか」を理解するのには時間がかかりました。

起業は今や日本でも、多くの人が考えるほどリスクのあるものではなくなってます。

自分が「死んでもいい」と思えるような理念・ビジョン・事業プランを持てたのであれば、殉職以外に起業のリスクはほんとに小さくなっていると思います。財務や生活の不安だけを理由に踏み出せない方がいるなら、そこは意外に気にしないでいいところかも知れません。一歩、踏み出してみては?

あ、ただしたった今はとても市況よくないです。VCさんが'00頃に組んだファンドが軒並み償還時期を迎えて、今は回収の方にパワーがかかっている時期のようです(一般論です。直接どこかのVCに聞いた言葉ではありません)。もちろんそれだけが理由じゃないと思いますが。

でも日本国内の直接金融の広がりが後戻りすることは不可能ですし、VCというもの自体が日本でも全うな金融の一ジャンルとして成立しつつありますので「波」はまた戻ってきます。今からプラン組んで準備して、'09年春夏辺りを目掛けてみるといいかも知れませんね。そんな野心を持っている方がいたらぜひご連絡ください。ランチでも行きましょう。

※このエントリはVENTURE VIEWブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および VENTURE VIEW編集部の見解・意向を示すものではありません。

上原仁

上原仁

マイネット・ジャパン 代表取締役

1974年滋賀県生まれ。神戸大学経営学部卒業後、1998年NTT入社。光サービスの企画等の後、2001年にNTTのインターネット映像配信事業の立ち上げに参画。2004年NTTレゾナントに転じ、ポータルサイトgooのサービス統括。gooではマーケティング、新事業戦略を担当。Web 2.0関連の執筆・講演多数。2006年7月マイネット・ジャパンを創業し、日本初のソーシャルニュースサイト『newsing(ニューシング)』や無料携帯サイト作成ツール(CMS)の『katy(ケイティ)』を運営。著書に『アルファブロガー』(翔泳社)、『口コミ2.0−正直マーケティングのすすめ』(明日香出版社)。